「顧客満足を追求するなら、KPI達成で喜ぶな」──バリューチェーンの最適化で顧客の売上108倍UP?ソルブレイン櫻庭氏が提唱するグロースマーケティングとは

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インタビュイー
櫻庭 誠司

2008年に仙台で株式会社ソルブレインを創業。当初はマーケティングの一部分に特化したサービスを提供していたが、時代の変化とともに価値提供の形を柔軟に変えながら一貫して企業のマーケティングの課題解決を手がけてきた。2014年よりグロースマーケティング事業を立ち上げ、企業の持続的な成長の実現に取り組む。

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昨今、スタートアップ界隈ではSaaS型の事業モデルが主流になりつつある。毎月継続的に収益が発生するこのモデルは、ベンチャー企業において至要たる「事業基盤の安定性」の向上に繋がるわけだが、ここにまったく逆のスタイルで急成長するベンチャーがある。

何が“逆”かと言うと、その事業モデルだ。今回紹介する企業は、自社の安定性よりも顧客の利益最大化を重視した、成果報酬型の事業モデルを展開しているのだ。

ここで、成果報酬と聞くと不信感を抱く人がいるかもしれない。「どうせ、最低限の広告予算や人件費を確保した上で、結果に応じた報酬も発生するという、ノーリスクで責任も取らない事業モデルだろう」と。

しかしこの企業はそうではない。広告予算やコンテンツ制作予算など、顧客の事業グロースに必要な全ての費用を自社負担し、背水の陣で利益創出にコミットしているのだ。

「そんなことが実現可能なのか?」

「どうも怪しい、何か顧客にリスクを負わせる裏があるのでは?」

と、読者は感じているかもしれない。今はまだ、それで良い。

しかし、取材を実施したFastGrowだからこそ言えることは、「極めて真っ当。顧客側のリスクはゼロで、顧客の事業を伸ばした分だけ報酬を受け取る本質的な事業モデルだ」ということ。

そんな、にわかには信じがたい事業を展開するのは、仙台を拠点に日本全国の企業のマーケティング課題を解決する株式会社ソルブレイン。代表の櫻庭氏が「価値提供の本質とは何か?」を追求し続けた末に編み出した「グロースマーケティング」を武器に、急成長を遂げているベンチャー企業だ。

櫻庭氏においては、先の『やめ3』にてブレずに本質を追求し続ける人物像に迫ったばかり。そこで今回は、同氏のマインドや価値観が色濃く反映されたソルブレインの事業モデルについて紐解いていきたい。

ゆえに、読者にはぜひ本記事と『やめ3』をセットで読み進めていくことをオススメする。さすれば、

「なるほど。櫻庭氏のこの経営者マインドがあれば、トレンドの移り変わりが早い世の中であろうと、ソルブレインの今後の成長にも確信が持てる」──。

と、我々FastGrowが抱いた印象と同じ感覚を味わえることだろう。

  • TEXT BY TEPPEI EITO
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
  • EDIT BY TAKUYA OHAMA
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支援開始2年で売上108倍UP!?
ある食肉卸の成功事例

「結局は、顧客の利益に繋がっているのかどうか」

「もともと無目的に、なんとなく繋がる・飲み会に参加するのは得意ではありません」

「プロとは、価値を出す人のことでしょう」

決してひけらかしたり、大口を叩いたりはしない。淡々と、冷静に──。そんな表現が似合うソルブレイン代表・櫻庭氏。アメリカでは既に確立している新時代のマーケティング概念「グロースマーケティング」を、誰に教わることなく自ら編み出し、世に提供している起業家だ。

早速このグロースマーケティングなる概念を紐解いていきたいのだが、まずはそれによって生み出される価値の大きさを理解できる、ある事例を紹介しよう。

櫻庭2014年から取引を始めさせていただいた食肉卸の顧客が良い事例だと思います。こちらの顧客は当初BtoBのみの事業展開でしたが、新たなBtoC事業の立ち上げから、その後の収益化/グロースまで一気通貫で支援させていただきたいと提案し、プロジェクトがスタートしました。代表のミッションやこれまでの事業実績をお伺いし、「この顧客となら、ソルブレインで支援させていただくことで共に大きな成果を出せる」と感じたのです。

そこからリサーチ、プロダクト開発、事業モデルの構築、ECサイト制作、販売、プロモーションと一手に引き受け、事業立ち上げを行っていきました。端的に結果をお伝えすると、2年で売上108倍UP。2014年の事業立ち上げから2020年までのCAGR(売上成長率)は、87.9%を実現しています。

顧客の新規事業を戦略から実行まで全て引き受け、僅か2年で売上108倍を叩き出すソルブレイン。驚異的な数字だが、なぜそのような成果を生み出すことができるのだろうか。

櫻庭その理由は、点ではなく面で顧客の事業を最適化させるからです。具体的に言うと、顧客の“バリューチェーン全体”をデータで可視化し、ボトルネックを見極め、改善を行うといった一連の取り組みを“持続的に”行うからです。

これと対局に位置する取り組みが、SEOやリスティング広告といった局所的なプロモーション施策です。バリューチェーンの中の一部分を切り取り、その中でKPIを最大化させるといった取り組みを指します。

グロースマーケティングによって出し得るインパクトについては理解できたが、まだまだ実態がよくわからない。一体どんな概念で、どんな仕組みなのだろうか。次章でその事業モデルを解剖していく。

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顧客のバリューチェーンを最適化し、利益の最大化を狙う

部分的な課題解決ではなく、バリューチェーン全体を見た上で顧客利益を最大化させるグロースマーケティング。

その特性から、グロースマーケティングでは、顧客側の協力も必要になる。それも、マーケティング担当者とだけやり取りをするようなものではなく、経営陣も含めた組織一丸となった連携が必要になるのだ。

ソルブレインがなぜバリューチェーン全体を扱うグロースマーケティングにこだわるかというと、そうしなければ顧客の本質的な目的である利益最大化に繋がらないと考えているからだという。

櫻庭局所的な施策では、KPIの達成が顧客支援の成果だと勘違いしてしまうおそれがあります。そしてそれは支援する側だけでなく、支援される側の顧客までもが陥ってしまう場合もあるんです。

しかし、局所的な施策におけるKPI達成は、売上や利益の拡大という本質的な目的のための通過点に過ぎません。私たちは、顧客にとって本当に価値のある最終目的にコミットして支援するために、グロースマーケティングに取り組んでいるんです。

核心をつく櫻庭氏の主張に、取材陣はただただ頷くばかり。では具体的に、ソルブレインはどのようなプロセスで顧客に価値提供をしているのだろうか。

櫻庭氏曰く、グロースマーケティングの一丁目一番地は、リサーチだ。仕入れ、生産、販売といった各バリューチェーンの状態をデータとして抽出し、可視化する。数年前まではこうした作業はコンサルティングファームをはじめとした大手企業の専売特許であったが、DXが進んだ昨今では、自社独自のノウハウや莫大な予算がなくても可能になってきている。

こうして可視化された情報から、バリューチェーンにおけるボトルネックを見つけ出す。集客に問題があるのか、あるいは品質なのか、オペレーションなのか……。

ここで重要になるのが、「ボトルネックが移り変わる」という点だ。例えば、分析の結果、集客がボトルネックだとわかりそこを解決すると、次はオペレーションが追いつかなくなりボトルネックになってしまう。局所的な施策でよく起こる問題だろう。

先述した通り、グロースマーケティングではバリューチェーン全体をきめ細やかに、顧客に伴走しながら連日連夜にわたり把握していく。そのため、「このボトルネックを解決すると、次はこのポイントがボトルネックになるな」という仮説を立て、次なる課題に向けて先回りすることができるのだ。

それが理解できれば、グロースマーケティングが顧客の本質的な成長に寄与できている理由を理解することができる。そして、冒頭に記したように、ソルブレインはこの一連の価値提供を成果報酬型で提供しているというから、驚きだ。

櫻庭どんな仕事でも言えることですが、顧客に価値提供ができなければプロじゃないと思っているんです。自分たちはプロフェッショナルとして成果を出す自信と覚悟があるので、だったら成果報酬型にすべきだと考えたんです。

これは、顧客の利益拡大という目的が達成されなければ、ソルブレインも共倒れするモデル。我々が退路を断って挑めば顧客も応じてくれますし、その上で結果をしっかり出してこそ、プロフェッショナルじゃないですか?

その発言の節々には強い覚悟が見て取れる。口先だけで「テッペンを目指す」「勝負に出る」と昂るのではなく、行動で示すその姿に、プロフェッショナルとしての強い信念を感じずにはいられない。

そんな櫻庭氏の覚悟を象徴するように、グロースマーケティング事業を開始してから現在まで、ほぼ解約の事例がないという。

「我々からご提案して断られることはほぼないですね」と櫻庭氏は述べる。それもそのはず。なにせ、顧客からすればデメリットがないのだから。

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創業初期は1日16時間労働。
熾烈を極めたグロースマーケティング誕生までの道のり

ソルブレインは創業当初からこのグロースマーケティングを実施していたわけではない。SEO対策やWeb制作など、櫻庭氏の言う“局所的な施策”を事業として行っていた。

創業初期は実績も少なかったため、とにかく働いた。連日、夜遅くまでの稼働はもちろんのこと、時には明け方に至るまで、顧客からの無理な要求にも応えてきた。気づけば、その労働時間は月500時間を越えていた。

正直、「なぜそこまで…?」と思うかもしれない。詳しくは先の取材記事『やめ3』に譲るが、元ミュージシャンである櫻庭氏は、楽器練習に1日16時間かけていた時期がある。まさに、“月500時間労働”ならぬ、“月500時間練習”。なぜなら、「プロであるならばそれくらいのストイックさを持て」と当時の所属レーベルの代表に諭されていたからだ。

しかし、その結果として残ったものは、無惨にも相次ぐ契約の打ち切りだったという。

櫻庭どれだけ懇切丁寧に時間をかけて顧客の要求を満たそうとも、顧客の事業成長に結びつかなければ価値を出したとは言えません。今振り返ると、顧客との契約が長続きしなかったのは当たり前なんですよね。

例えば、SEOやリスティングで集客を支援しても、顧客側に対応しきるオペレーションが整備されていなければ、顧客の売上や利益の向上には繋がりません。この経験から、利益最大化という目的のために設定されたひとつのKPI、ここでいう集客目標だけを達成しても、継続的な利益創出には貢献できないことを学びましたね。

これはあくまで私の中での定義にはなりますが、自分たちがやっていたのはマーケティングではなく、プロモーションだったんですよ。利益拡大という顧客が持つ本当の目的を達成するためには、局所的な“点の課題解決”ではなく、バリューチェーン全体を対象とした“面の課題解決”が必要不可欠だったんです。

顧客の要求に応えるだけでは、顧客の本質的な課題解決は達成されない。そう感じた櫻庭氏は、稼働に対して費用をもらう受託型のプロモーション事業をやめ、出した成果に応じて費用をもらう提案型のグロースマーケティング事業を始めることにしたのだ。

櫻庭氏を取材していて感じるのは、本質を捉える強い目的意識だ。常に最終目的だけを見つめ、猛進しているように見える。今のソルブレインのカルチャーにもなっているこの考えかたは、上述した櫻庭氏のミュージシャン時代の経験が影響していた。

櫻庭音楽に限らず、芸術には正解がありません。だからこそ、目標を設定していないとすぐに迷子になってしまうんです。

他のミュージシャン仲間とつるんで一時的な快楽や連帯感を得ても、目標にはなんら繋がりません。当時はそうした経験があったので、そこから常に、目標を見失わないようにという意識が芽生えたんだと思います。

だからこそ、現在手がけているグロースマーケティング事業では、最終的なゴールを「顧客の売上、利益の向上」に設定しています。「問い合わせ件数」や「SEOの順位」などは顧客の本当の目標ではないですからね。

「集客さえうまくいけば、事業が伸びるのに…」。明確な根拠なくそう考える経営者は、世の中にきっと多く存在するはずだ。だからこそ、顧客は「これが事業成長のドライバーだ」と盲目的に捉え、局所的なソリューションを求めてくるのだろう。しかし、そうしたプロモーション施策では継続的な顧客の利益拡大には繋がらないと、櫻庭氏は身をもって痛感したのだ。

その痛みの上に、利益最大化というブレない目標と、成果報酬型という大胆な事業モデルが合わさり、今日のグロースマーケティングが誕生したのだ。

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グロースマーケティングを定義する5つのポイント

櫻庭氏が辿ったグロースマーケティング誕生までの道のりを押さえたところで、ここではその概念をより正確に理解していこう。

多くのビジネスパーソンが見落としがちなマーケティングの考え方と、利益創出に向けた正しいグロースマーケティングの考え方を5つのポイントにわけて整理してみる。

  1. KPI重視か利益重視か
  2. 部分最適か全体最適か
  3. 施策ありきの広告出稿か戦略ありきの広告出稿か
  4. 部署単位の利害で決めるか、事業としての収益で決めるか
  5. 勘や経験に頼るかデータを頼るか

まず1つ目は、それがKPI重視か利益重視かという点だ。

バリューチェーンの一部の中で局所的なKPI達成をゴールと捉えているマーケティング会社は少なくない。それだけでなく、そう考えてしまっている顧客も多いのが現実だ。しかし上に挙げた通り、それでは利益創出に繋がらない。あくまで、こだわるべきは利益なのだ。

2つ目は、部分最適か全体最適かという点。

SEOやリスティングなどのプロモーション施策を専門領域とするマーケティング会社を否定するわけではない。その強みを売りに顧客価値の創出に取り組んでいるなら価値はあるだろう。しかし、それは顧客が抱える課題がその施策だけで解消される場合に限定される。顧客が自身の課題を正確に把握していない中で、局所的な最適解を提示しても利益創出には繋がらないのだ。

3つ目は、施策ありきの広告出稿か戦略ありきの広告出稿かという点。

昨今では、様々なマーケティング手法が現れては消え、現れては消えを繰り返している。特にデジタルマーケティングに明るくない企業経営者にとって、こうした横文字の新しい施策の是非を見抜くのは至難だろう。

櫻庭施策の華々しさに惹かれて「SNSを使って集客したい」「動画広告が流行りだからYouTubeに広告を出稿したい」と、むやみに手を出したところで、奇跡的な場合を除けば利益最大化は望めません。

これは動画広告がだめだという話ではない。繰り返すが、バリューチェーン全体を俯瞰し、ボトルネックの解消がその広告出稿により実現できる場合に限り、その施策に取り組むべきだろう。戦略なき広告出稿は、顧客の利益を逼迫する害悪とすらなりうる。

4つ目は、部署単位の利害で決めるか、事業としての収益で決めるかという点だ。

企業が利益を最大化させるには、事業部全体でのチームプレイが必要不可欠。しかし、現実には社内連携がまともに取れておらず、場合によっては部署間で対立が発生しているケースも少なくない。

櫻庭よくあるのは、営業チームと生産チームの対立です。「商品が売れないのは品質が悪いからだ」「いや、営業時の説明に問題がある」と、相互に原因を押し付けあうといった状況。見かねたマーケティングチームが、「広告出稿で売上を伸ばすので、あとはもう任せてください」と表面的な解決に走ってしまうケースです。

現場ではよく、こうした本質的な課題解決に繋がらないその場しのぎの解決策が生まれてしまうんです。そうならないためには、冷静な状況理解、つまりデータが必要になってきます。

どんな企業であれ事業の目的は利益創出にあるので、「自社の利益を最大化させるには、いつ、何を、どのように取り組むべきか?」という逆算設計でコトに取り組む必要がある。

5つ目は、勘や経験に頼るかデータを頼るかという点。

長く会社経営や事業推進を行っていると、そこにはプロとしての勘や経験による判断がでてくるもの。いわゆる、ビジネスセンスといったところか。しかし、持続的な利益創出を目指すなら、これからはデータ重視で意志決定を行いたい。なぜなら、数値化されたデータは事象を正しく映し出し、そのデータを基に誰もが今後の打ち手を考えることができるからだ。

これら5つの条件がそろったとき、グロースマーケティングは最大の効果を発揮し、顧客の利益最大化に大きく貢献することができるのだ。

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顧客価値にこだわる、ソルブレインのカルチャーと今後の展望

グロースマーケティングの全貌を知るにつれ、「本質的な価値とは、利益の創出に他ならない」と述べる櫻庭氏のスタンスがわかってきただろう。

ここからは同氏が率いるソルブレインという組織について見ていき、どのようなカルチャーが存在しているのかを探っていきたい。

まずはじめに社内の雰囲気について尋ねてみると、彼はそれを「甲子園の強豪校」と表現した。

櫻庭ソルブレインは、どちらかと言うと落ち着いた雰囲気で、プロとして淡々と仕事をしています。そもそも企業とは仲良しサークルチームではありませんから、必要以上に仲良し感は出していません。

私自身もともと意味なくつるむのは得意ではないので、それこそ起業家のコミュニティやイベントへの参加も無目的に行うのは好きではないんです。もちろん目的ありきの参加・交流はアリだと思いますけどね。そんな価値観が会社のカルチャーにも現れているのかもしれません。

うちのメンバーには真面目で実直な人が多く、答えがない中、自分自身で仮説を立てて課題を解決していくのが好きな人が多いですね。私が重視している目的意識も社内によく浸透していて、「目的って何だっけ?」「それって最適解なの?」という声をよく耳にします。

そんなソルブレインでは今、事業拡大にあたって採用に力を入れているんですが、そうしたカルチャーを理解できる方に来ていただきたいと考えています。特に、ビジネスの本質的な課題解決にチャレンジしたいとお考えの方とぜひお話ししたいですね。

これまでは櫻庭氏がプレイヤーとして現場で稼働しながら成長を続けてきたソルブレイン。今後は、櫻庭氏が担ってきた領域の権限委譲や仕組み化を進めながら、事業の成長をさらに加速させていくという。

そのためにも、新設ポジションの採用やポテンシャル採用など、アグレッシブに採用活動を行いながら、盤石な組織を築いていく方針だ。

また、これまでは本社が仙台でリモートワークも世の中に普及していなかったため、既存メンバーは現地在住がほとんどだった。しかし、2020年には都内に支社を開設。次いでリモートワークも取り入れたため、早い話、全国どこからでも応募・就業ができる環境が整ったのだ。

こうしたワークスタイルを取り入れる企業は年々増えている。と同時にそれは、「情報が集まる都内の方が事業を行うには有利」、「地方のベンチャー企業では人が集まらず不利」といった従来の固定観念を無効化すると言えるだろう。

いよいよブレイク寸前のソルブレイン。果たして同社は今後、どんなステージを駆け上がっていくのだろうか。

櫻庭より顧客利益の最大化を実現すべく、2つの方向性を考えています。

1つは、領域の拡大です。これまでに支援してきた業界だけでなく、あらゆる業界に対してグロースマーケティングを展開していきたいと考えています。

2つ目は、既存の顧客のさらなる利益創出です。弊社の事業モデル上、それがソルブレインの利益拡大にも繋がりますからね。ここは愚直に続けていきたいと思っています。

こうしたことをよりスピーディに効率的に進めていくためには、IPOも必要だと考えています。もちろんそれは目的ではなく、手段としてですけどね。

取材の最後、「なぜ、そこまでストイックに挑戦し続けるのか?」と問うと、櫻庭氏は少しの間を置き、こう答えた。

「むき出しの言葉で言うなら、好きだから、ですかね。ミュージシャンやスポーツ選手だってそうじゃないですか?夢中になれるから、とことん突き詰めたいんです」──。

自社の利益のみを考えた経営ではなく、IPOを目的としているわけでもない。顧客に提供する価値だけを見つめるソルブレインの姿勢を表す、印象的な一言であった。

こちらの記事は2022年11月29日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

栄藤 徹平

写真

藤田 慎一郎

編集

大浜 拓也

株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。

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