連載サイバーエージェントのDNAを受け継ぐ10名の起業家たち

スタートアップ業界に君臨する“サイバーエージェント・マフィア"──最強の企業を生み出す10名の起業家たち(後編)

巨大企業PayPal出身の大物起業家たちが、シリコンバレーを席巻している。彼らは“PayPalマフィア”と呼ばれ、スタートアップ界隈の注目を集めてきた。

以前、FastGrowでは、日本のスタートアップ業界で活躍するリクルート出身の起業家を、PayPalマフィアならぬ“リクルートマフィア”として紹介した。第2弾となる今回、焦点を当てるのは日本を代表するIT企業「サイバーエージェント」だ。

入社数年目の若手や新卒でも見込みのある社員に裁量のある役割を任せ、急成長の機会を提供することでも知られる同社。重圧をはねのけて経験を積み重ねることで、個としても社としても圧倒的な成長を遂げ、業界を牽引してきた。

本記事では、「21世紀を代表する会社をつくる」というサイバーエージェントのDNAを受け継ぎ、スタートアップ業界に新たな風を巻き起こす10名の起業家を取り上げている。前編は、1999年以降に創業した企業を扱った。 後編では、2016年以降に創業した企業を扱っていきたい。

  • TEXT BY MIKI OKAMOTO
  • EDIT BY KAZUYUKI KOYAMA
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西條 晋一(XTech ・XTech Ventures 代表取締役)

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1996年、早稲田大学法卒業後、伊藤忠商事株式会社に入社。その後、2000年にサイバーエージェントに入社し、サイバーエージェントFX、ジークレストなど複数社の代表取締役を歴任した。

米国法人CyberAgent America,Inc.の設立と売却を最後にサイバーエージェントを退社。数々の企業の社外取締役をつとめた後、2018年にXTech、XTech Venturesを自ら立ち上げた。

サイバーエージェント在籍中は、10社もの子会社社長を歴任。同時期に複数の会社経営ができたのは、右腕となる人材を発掘し、育成することに力を入れていたからだという。右腕人材に決断の機会を与え、次々に権限移譲をしていくことで、多領域にまたがる挑戦を可能にした。

XTech株式会社

XTech株式会社

AIやIoTなどの新技術を既存産業とかけあわせ、新規事業の創出を目指す。新規事業の立ち上げ経験を持つ人材を集めた「スタートアップスタジオ」も設立。エンジニアリングやデザイン、マーケティング等の様々なノウハウを持つ集団を組織し、スタートアップの連続的なに成長を目指す。

XTech Ventures株式会社

XTech Ventures株式会社

30代、40代のミドル層の起業を支援するベンチャーキャピタル。ミドル層の経験や人脈の豊富さに着目し、経営支援やIPO支援を行う。

出典:伊藤忠商事からサイバーエージェントへ。入社半年で子会社社長に就任、元サイバーエージェント西條晋一氏によるXTech Venturesが1号ファンドを組成、「ミドル層の起業をサポート」

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白川智樹(株式会社アプリコット・ベンチャーズ 代表取締役)

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2008年、サイバーエージェントに新卒入社。広告部門やゲーム関連子会社を経て、2013年より株式会社サイバーエージェント・ベンチャーズ(現サイバーエージェント・キャピタル)に参画。2018年、株式会社アプリコット・ベンチャーズを設立。

サイバーエージェント・ベンチャーズに在籍時、創業期のスタートアップ20社以上の支援経験を積む。そこで、大企業出身者はスタートアップに関する知識を得る機会が少なく、起業を決心しづらいことを実感。その経験から、大企業から起業する人材の支援を行うアプリコット・ベンチャーズの設立に至った。

株式会社アプリコット・ベンチャーズ

株式会社アプリコット・ベンチャーズ

大手企業から独立するシード期の起業家への支援を行う。同社が運営するコワーキング・オフィス「GUILD SHIBUYA」では、起業家のコミュニティ形成にも注力。過去の投資先は、無人コンビニの製造・販売・運営を行う株式会社600や、食マーケティング総合企業のfavyなど。

出典: 大企業出身者よ、「土地勘」を武器に業界を変革せよ!アプリコット・ベンチャーズが投資を決める理由

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佐藤真希子(株式会社iSGS インベストメントワークス 取締役/代表パートナー)

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2000年、株式会社サイバーエージェントに新卒第一期生として入社。2002年に、ベストプレイヤー賞(MVP)を受賞し、同社営業部門で初めての女性マネージャーとなる。2006年、株式会社サイバーエージェント・ベンチャーズに出向。シード・アーリーステージのベンチャー企業を対象とした投資事業に従事。その経験を活かし、2016年、株式会社iSGSインベストメントワークスを設立。取締役/代表パートナーに就任。

サイバーエージェント・ベンチャーズ在籍時に出産をした佐藤氏。3人の子育てと仕事を両立してきた。上司や同僚の理解もあり働きやすい職場ではあったものの、時短勤務のため評価がされづらく、もどかしさも感じていたという。そこで、日本のベンチャーキャピタルで初の女性パートナーとして、独立系ファンドの立ち上げを決意。株式会社iSGSインベストメントワークスの設立に至った。

株式会社iSGS インベストメントワークス

株式会社iSGS インベストメントワークス

ビジョンは「GO BEYOND GOAL.」。上場や売却をゴールにおかず、その先を目指すという思いが込められている。投資実績は、飲食店の予約サービスを運営する「トレタ」、日本最大級のクラウドファンディング・プラットフォームサービスを運営する「CAMPFIRE」など。

出典:起業家にとって最強の応援団に/iSGSインベストメントワークス 佐藤真希子さん

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田島 聡一(株式会社ジェネシア・ベンチャーズ 代表取締役)

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大学卒業後、三井住友銀行に勤務。個人向けローンや中小・ 大企業融資などを行う。2005年、サイバーエージェントに入社。2010年、サイバーエージェント・ベンチャーズ(現サイバーエージェント・キャピタル)代表取締役に就任。2016年、株式会社ジェネシア・ベンチャーズを創業。

銀行員時代は手堅い投資を行うため、過去の実績を見て投資判断を行っていたという田島氏。しかし、徐々に未来の可能性に向けて投資をしたいという思いを強く持つようになる。転職先を探していた際に、金融×IT事業を仕掛けるサイバーエージェントの子会社シーエー・キャピタルの西條晋一氏と出会い、同社への参画を決意した。

ジェネシア・ベンチャーズ

ジェネシア・ベンチャーズ

社名であるジェネシア・ベンチャーズは、起源や創生という意味を持つ「Genesis」 に「Asia」 を掛け合わせたもの。その名の通り、アジアの創生を担うベンチャーキャピタルを目指す。2018年11月末時点で、海外を含む47社に投資を実施。投資先は、Job Rainbowやタイミーなど。2018年12月には2号ファンドも組成し、東南アジアへ投資エリアを拡大させていく。

出典:「投資家インタビュー Vol.12 田島聡一氏」、ジェネシア・ベンチャーズがシード・アーリーに特化した80億円規模の2号ファンド組成へ

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鈴木 裕斗(株式会社overflow 代表取締役CEO)

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2009年、サイバーエージェントに新卒入社。広告営業を経て、Amebaプラットフォームの管轄責任者に就任する。2014年にiemo株式会社に入社、代表取締役となる。その後、同社が株式会社DeNAの子会社化。2017年、株式会社overflowを創業。

大規模プラットフォームAmebaやiemoの運営経験を買われ、現在は株式会社エキサイトの社外取締役も務める鈴木氏。株式会社エキサイトの代表取締役は、同じくサイバーエージェント出身の西條晋一氏だ。西條氏によれば、鈴木氏の社外取締役招聘は「インターネットサービスの変化の速さに後れをとっていた同社に、社外からの新しい風を取り入れるため」だという。

OVERFLOW

OVERFLOW

「世の中の非効率を解決し、ひとの時間をふやす仕組みをつくる」をミッションに掲げ、家族や自分と向き合う余裕をつくる事業を提供している。主な事業は、クレジットカード、保険、投資や各種税金についての総合情報サービス「Fincy」と、暗号通貨市場に関わるニュースを配信する「COINNEXT」。

出典: エキサイトの代表取締役社長にXTech西條晋一氏が就任——社外取締役にユナイテッド会長の早川与規氏、overflow代表の鈴木裕斗氏を招聘

後編でとりあげた起業家を見ると、サイバーエージェント・ベンチャーズ出身の起業家が目立つことがわかる。多くの起業家に伴走し、企業の成長に寄与してきたという自負が、彼らを起業という自らの挑戦に踏み出させているに違いない。

「圧倒的な挑戦」を掲げるサイバーエージェントのDNAを受け継ぐ彼らは、この先どのような世界を創っていくのだろうか。期待は高まるばかりだ。

こちらの記事は2019年03月26日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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1991年生まれ。児童養護施設での学習支援ボランティアを通して、貧困・格差問題に興味を持ち、東京大学大学院で教育社会学を専攻。発達障害等のお子さまをサポートする学習教室LITALICOジュニアで指導員・教室長を経て、現在はフリーライターとして活動。

編集者。大学卒業後、建築設計事務所、デザインコンサル会社の編集ディレクター / PMを経て、weavingを創業。デザイン領域の情報発信支援・メディア運営・コンサルティング・コンテンツ制作を通し、デザインとビジネスの距離を近づける編集に従事する。デザインビジネスマガジン「designing」編集長。inquire所属。

デスクチェック

長谷川 賢人

1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。 「ライフハッカー[日本版]」副編集長、「北欧、暮らしの道具店」を経て、2016年よりフリーランスに転向。 ライター/エディターとして、執筆、編集、企画、メディア運営、モデレーター、音声配信など活動中。

連載サイバーエージェントのDNAを受け継ぐ10名の起業家たち

2記事 | 最終更新 2019.03.26

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