“経営のスタンス”は、この書籍に学べ。
SmartHR宮田、TASTE LOCAL篠塚ら現役起業家・経営者20名が選んだ5冊
「事業は人なり」経営の神様とも称される松下幸之助の言葉だ。事業を創るのも、会社を大きくするのも、そこには「人」がいる。そんな「人」に焦点を当て、次代を担う若きイノベーターたちをピックアップ。成長のエッセンスをお届けする。
XTech西條氏やnewnあやたん氏など、総勢14名の現役起業家・経営者がおすすめする書籍を紹介した前回の記事は、SNSでも大きな反響をいただいた。そして今回も、事業や組織・プロジェクトを率いる「リーダー」のロールモデルとなるような、まさに一流のベンチャーパーソンたちが薦める書籍をピックアップ。
本稿、そして本シリーズでは、「何度でも読み返したい」書籍、さらにタイトルにあるように読者の「血肉」となるようなものを厳選している。紹介したものが、皆さまの「事業家としてのバイブル」となれば幸いだ。
あなたはどんな「経営者」になりたいか?
リーダー・経営者と言えど、「スタンス」は人により異なる。時代によって求められるリーダー像も変化していくが、重要なのは自分にあったスタイルを築くことだ。そして今回は、自分なりのスタイルを見つけるヒントになるような、リーダーのロールモデルを書籍を通して紹介していく。
本編に入る前に、大きな反響をいただいた前回の記事へのアンサーとして、SNSで発信してくれた方々の書籍を見ていこう。ありがたいことに多くの方に読んでいただき、紹介した書籍を読み始めている方も多く見受けられ幸いだ。
早速「経営の教科書」を読んでおります
— 金井芽衣@ゲキサポ! (@meiem326) September 12, 2020
14名の事業家は、この本から経営を学んだ。リーダーの血肉となる、XTech西條、newnあやたんら現役起業家・経営者おすすめ書籍リスト | FastGrow https://t.co/piLFqwMR09
まずは、前回の記事にも登場したXTech西條氏が薦める本書。
Paypalマフィアの代表格、リンクトイン創業者のリード・ホフマンがスタンフォード大学で行った特別講座をもとに執筆されている。
スピードと成長を最優先するスタートアップで発生する様々な困難、それらをいかに切り抜けるか。メルカリ山田 進太郎氏は「スタートアップの方には、経営陣でも社員でも、かなりおすすめ」と自身のブログで語り、さらにはマネーフォワード辻 庸介氏など多くの現役起業家を魅了した必読の1冊だ。
「ブリッツスケーリング」久々にノート取りながら読むほど、勉強になりました。ペイパル創業メンバーで、リンクトインの共同創業者、Facebook、ジンガのエンジェル投資家でもあるリードホフマン著、序文がビルゲイツ、というだけでもすごいのですが、内容が秀逸。 pic.twitter.com/JxA7xrBqjs
— 辻庸介/Yosuke Tsuji@マネーフォワードCEO (@Yosuke0630) February 25, 2020
続いて、部下との接し方や組織づくり、そして社長としての在り方に悩んでいる場合は、こちらがおすすめだ。新卒採用支援サービス「Goodfind」や、今あなたが読んでいる「FastGrow」を運営するスローガン代表伊藤 豊氏の推し本。
「社長の覚悟」(柴田励司さん)にここ3年ぐらい自分が悩んでいた経営に関する考え方の答えがすべて書いてありました。#私の推し本 https://t.co/HiTWQbAxQQ
— 伊藤 豊 | YUTAKA ITO (@yutaslogan) September 11, 2020
今回も気になる書籍があればぜひチェックしてみてほしい。また、読者の皆さまには何度も読み返している「経営」に関する書籍はあるだろうか? #私の推し本 のハッシュタグをつけてTwitterで教えてもらえると幸いだ。
社長失格
──シニフィアン朝倉氏、Fond福山氏、アルけんすう氏、堀江 貴文氏推薦
あのビル・ゲイツが面会を求めてきた男。本書はインターネット黎明期、オンザエッヂ堀江 貴文氏やサイバーエージェント藤田 晋氏と並び、時代を創り上げた「ハイパーネット」社長の板倉 雄一郎氏が自ら筆を執った書籍だ。過去の失敗から学べることは多いが、スタートアップの急成長から一転、倒産までの生々しい実体験を綴った本書ほど身に染みる学びを得られる書籍は多くないだろう。
当然、本書は失敗したことを後悔するものでも、いわゆる告白本でもない。「資本政策だけは後戻りできない」という言葉を聞いたことがある方も多いと思うが、本書にはそんなファイナンスにおける失敗や、困難に直面したときの組織の醜さ、そして崩壊していく過程など、非常に具体的な学びが詰まっている。
本書で描かれているのは、綺麗事など一切ない、まさに当事者が直面する「現実的な問題」だ。ミクシィで社長を務め、現在シニフィアンを経営する朝倉 祐介氏も本書を薦める。
起業というと、とかくイノベーションだ、アントレプレナーシップだといった側面に目が向きがちですが、実際に私が少人数のスタートアップを率いていたときは、イノベーションうんぬんということよりも、社内の問題や投資家、取引先との関係性など、ほとんどメロドラマのような人間の愛憎劇とどう向き合うかで悩むことが多かった
シリコンバレーで活躍する日本人起業家のFond福山 太郎氏や、アルけんすう氏、さらに当時を知る堀江 貴文氏もおすすめする本書は、すべての起業家必読だ。
ちなみに日本における「失敗本」の代表作が本書だとすれば、シリコンバレーにもその物語がないわけはない。代表的なのが「シリコンバレー・アドベンチャー」だ。読み物としても面白いので、合わせて読むことをおすすめする。
あなたが本書を読む理由
- 「失敗」から学べ。インターネット黎明期、急成長と急降下を経験し倒産したハイパーネットのストーリー
- 「苦しい時、組織はこうなってしまうのか」そんな生々しい組織崩壊を追体験できる数少ない書籍
- ピンチのときこそ、リーダーとしての「在り方」が問われる。あなたならどうする?
修羅場は与えられるものでなく、みずからつくるもの
──元Loco Partners篠塚氏、サイバー曽山氏、インテグラル佐山氏推薦
時代の波に揉まれながら、スタートアップの栄枯盛衰を経験したハーパーネット。そんな痺れるストーリーに触れたあとは、短くて読みやすいが切れ味鋭い本書をおすすめする。現役の起業家・経営者はもちろんのこと、これから上を目指していくリーダーたちに特に読んでほしい内容だ。
本書のトピックは、リクルート流人材育成。現在も同社社長兼CEOを務める峰岸 真澄氏へのインタビューを電子書籍化したものとなっている。インタビュー自体は3年前のものだが、色褪せることはまったくない。
たったの25ページと短いが、本書を薦めるLoco Partners創業者の篠塚 孝哉氏も「至言だらけ」と絶賛。サイバーエージェント曽山 哲人氏や、インテグラル佐山 展生氏など、こちらも多くの現役経営者がおすすめしている。
突出した経営人材になるためには、困難を選べるかにかかっている。つまり、修羅場をみずから作れるか。
— Takaya Shinozuka (@shinojapan) February 25, 2020
至言だらけの本。https://t.co/5Ln5NT1QSJ pic.twitter.com/FOTNacUIoD
経営者として人材育成やカルチャーづくりに取り組んでいる方だけでなく、起業家・経営者、リーダーを目指していく若手ベンチャーパーソンにとっても「仕事との向き合い方」の示唆が得られる良書となっている。
あなたが本書を読む理由
- リクルート創業者江副氏から脈々と受け継がれてきた同社のDNA。さらに進化した「至言」が25ページに詰まっている
- 突出した成果を残すにはどうすれば良いのか。あなたは困難を選べるか、修羅場をつくれるか
- これからリーダーを目指すのであれば、読んでおきたい1冊
Hot Pepperミラクル・ストーリー
──CARTA宇佐美氏、akippa金谷氏、スペマ重松氏、ecbo工藤氏推薦
リクルートに関する書籍は数多く出版されている。その中でも、もっともリーダーにおすすめしたい書籍の一つが本書だ。ポップな表紙とタイトルからは想像もつかないほど、「事業づくり」と「リーダーシップ」に関する学びが多い。
著者は、無料クーポンマガジン「ホットペッパー」を4年で売上300億円、営業利益100億円の事業に育て上げた平尾 勇司氏。
「お前には直感的に儲かる商売をつくる力がある」という当時の専務取締役からの言葉通り、本書は事業開発のノウハウもふんだんに盛り込まれている。だが、それだけではない。本書に記されているのは、強い組織といいチームのつくり方、つまりリーダーとしての在り方そのものだ。
CARTA HOLDINGS(旧VOYAGE GROUP)代表取締役会長の宇佐美 進典氏や、駐車場シェアリングサービスakippa金谷 元気氏も本書を愛読。昨年マザーズへ上場したスペースマーケット重松 大輔氏は「名著」と評し、ecboの工藤 慎一氏はツイートから何度も読み込んでいることが伺える。
ホットペッパーミラクルストーリーを読み込む。10回は読んだ。全部吸収する。 pic.twitter.com/1iSJbJq01l
— Shinichi Kudo / ecbo CEO (@conansite) September 9, 2018
ちなみに従業員100人超えた規模の経営者の人におススメな本は、先ほどの本に加えて「インテル戦略転換」「ウィニング 勝利の経営」「ローマ人の物語」「マキャベリ語録」「Hot Pepperミラクル・ストーリー」「鋼の錬金術師」。
— shinsuke usami / CARTA HOLDINGS (@usapon) April 21, 2014
あなたが本書を読む理由
- 4年で売上300億円、営業利益100億円。急成長事業を創り上げた「事業ノウハウ」から「組織づくり」まで網羅
- CARTA宇佐美氏、スペマ重松氏をはじめ、多くの現役起業家・経営者が愛読する1冊
顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説
──SmartHR宮田氏、BASEえふしん氏、yup阪井氏推薦
事業立ち上げのヒストリーとともに経営・リーダーシップを学ぶという観点で、米ザッポスの成功物語を描いた本書もおすすめしたい。「ザッポスはカスタマーサポートがすごい」という評判を耳にしたことがある方は多いだろう。しかし、その経営実態は日本ではあまり知られていない。”Amazonがどうしても欲しかった企業”として話題になり、12億ドルの評価額で買収されたのが伊達ではないことは本書を読めばわかるだろう。
同社CEOのトニー・シェイ、実はシリアルアントレプレナーであるという事実をご存知だろうか。ハーバード大学を卒業後、新卒入社したオラクル在籍時に共同創業した会社を、マイクロソフトに2億6500万ドルで売却している。当時24歳。もともとはザッポスに投資家として参画していたという。
そんなトニー・シェイ氏による本書は、企業文化、カルチャー、組織マネジメントといったトピックで悩んでいる方にぜひ読んでもらいたい。きっと参考になるはずだ。
SmartHR宮田 昇始氏や、BASEえふしん氏なども本書をおすすめしており、FinTechスタートアップのyup阪井 優氏も参考にしているようだ。
ザッポス伝説ほんといい本。電子書籍を無料でゲットしたのに紙の書籍でも買おうと思う。必ず買う。ちなみにまだ半分くらい。
— Shoji Miyata (@miyasho88) December 21, 2010
幸せとは、自分で自分をコントロールしていると感じられるか、自分が進歩していると感じられるか、つながり(関係の数と深さ)、ビジョンと意味(自分自身よりも大きなものの一部となること)、の4つのことで決まります。
— 阪井 優|yup (@redxyz_) August 8, 2020
『顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説』391ページ
あなたが本書を読む理由
- 創業10年で売上1,000億円。Amazonがどうしても欲しかった「奇跡の顧客サービス」はいかにして生まれたのか
- 唯一無二の企業カルチャーを創り上げたトニー・シェイ氏に、リーダーシップを学ぶ
- Amazonによる買収から約10年。今なお世界で評価され続けるザッポスの秘話が満載
確率思考 不確かな未来から利益を生みだす
──DCM原氏、マーク・アンドリーセン氏推薦
最後は少し趣向を変えて、「意思決定」をより良いものにするためにおすすめの書籍を紹介しよう。なんと本書は、”ポーカープレイヤー”が執筆しているというユニークな1冊。起業家・経営者、そしてリーダーに欠かせない意思決定術を、「心理戦の達人」に学ぼう。
本書は、決してイロモノ枠で紹介しているわけではない。ポーカーの世界的大会であるワールドシリーズ・オブ・ポーカー(WSOP)をはじめ、いくつもの世界大会で優勝した経験を持つ著者が、世界最高峰の「思考の技術」を解き明かしている本なのである。また著者は現在、意思決定のサポートを行うコンサルタントとして活躍している。
「不確実性」、スタートアップとして戦っていくのであれば、避けては通れない。freee、Sansan、キャディなど、いくつもの急成長スタートアップへ投資実行しているDCM Venturesの原 健一郎氏も、「意思決定を職業にする全ての人に読んでほしい」と語る。
意思決定を職業にする全ての人に読んでほしいです。
— Kenichiro Hara| DCM Ventures (原健一郎) (@kenichiro_hara) October 2, 2019
Thinking in Betsには、実践的に意思決定の質を上げる方法が書いてあります。
これを読んで、投資メモの書き方、チームでの議論の仕方、投資の振り返りの仕方等変えてみました。
意思決定をよくするグループ、社内だけでなく、社外にも欲しい。
また、本書を薦める投資家はDCM原氏だけではない。アメリカを代表するVC、アンドリーセン・ホロウィッツの共同創業者、マーク・アンドリーセン氏も本書をおすすめする人物の一人だ。
Thinking in Bets by @AnnieDuke -- Compact guide to probabilistic domains like poker, or venture capital. Best articulation of "resulting", drawing bad conclusions from confusing process and outcome. Recommend for people operating in the real world. https://t.co/sleCLYXDtF
— Marc Andreessen (@pmarca) July 5, 2018
あなたが本書を読む理由
- 意思決定はリーダーの重要な役割の一つ。世界レベルのポーカープレイヤーから、思考と判断の技術を盗む
- DCM Ventures原氏、マーク・アンドリーセン氏など著名ベンチャー・キャピタリストがおすすめする1冊
いかがだっただろうか?イノベーション・エコシステム発展のため、そしてベンチャーパーソンである皆さまに少しでも多く新しい学びをお届けするため、今後も「ベンチャーのプロフェッショナルから学ぶ」ことにフォーカスした情報を発信していく予定だ。
そして皆さんが何度も読み返す「経営」に関する書籍を #私の推し本 のハッシュタグをつけてツイートしてください!次回のFastGrow記事で取り上げるかも?取材のご依頼をさせていただくことも!
こちらの記事は2020年09月18日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
次の記事
連載事業を創る者たち 一流のベンチャーパーソンは何から学んだのか
11記事 | 最終更新 2022.05.19おすすめの関連記事
「ハイリスクを避けて変革を語るな」──フリークアウト本田とUUUM鈴木に訊く、世をざわつかせるTOP 0.1%の事業家の心得
- 株式会社フリークアウト・ホールディングス 代表取締役社長 Global CEO
「国策」と「スタートアップ」は密な関係──ユナイテッド・PoliPoliが示す、ソーシャルビジネス成功に必須の“知られざるグロース術”
- ユナイテッド株式会社 代表取締役社長 兼 執行役員
組織の“多様性”を結束力に変える3つの秘策──Nstock・Asobica・FinTのCEOが実証する、新時代のスタートアップ経営論
- 株式会社Asobica 代表取締役 CEO
隠れテック企業「出前館」。第2の柱は32歳執行役員から──LINEヤフーとの新機軸「クイックコマース」に続く、第3の新規事業は誰の手に?
- 株式会社出前館 執行役員 戦略事業開発本部 本部長
「令和の西郷 隆盛」、宇宙を拓く──Space BD代表・永崎氏が語る、“一生青春”の経営哲学
- Space BD 株式会社 代表取締役社長
経営者は「思想のカルト化」に注意せよ──企業規模を問わず参考にしたい、坂井風太とCloudbaseによる“組織崩壊の予防策”
- 株式会社Momentor 代表
令和のスタートアップは、“Day1意識”と“半歩先”を同時追求せよ──組織・事業の成長を両立させるX Mile COO渡邉とファインディ CEO山田による経営論対談
- X Mile株式会社 Co-Founder COO
「オープンイノベーションに絶望したあなたへ」──協業に泣いた起業家が、起業家を救う?UNIDGEに学ぶ、大企業との共創の秘訣
- 株式会社ユニッジ Co-CEO 協業事業開発 / 社内新規事業専門家 連続社内起業家