【FastGrow厳選5社】急成長するBtoC領域のスタートアップ5選:2024年ベスト盤

「次の10年を担う成長産業で働きたい」。そんな、野心的な想いを持った読者が多いことだろう。 しかし、その“成長産業"をどう見極めるか。これこそが、キャリアを左右する重要なポイントとなる。

今回は、そんな読者に向けて、「BtoC領域」で急成長を遂げるスタートアップ5社を紹介しよう(なおここで言う「BtoC領域」とは、一般消費者・個人ユーザーから金銭を受け取る「BtoCビジネス」というモデルを指しているのではなく、一般消費者が日常的に利用し得るサービスを展開しているという定義でまとめている)。

シェアリングエコノミーやDXといったワードに関する企業が並ぶようにも見えるが、決して単なる一過性のブームに乗っているだけではない。社会課題に真っ向から挑み、テクノロジーの力で新たな価値を創造し続ける。 そんな企業たちだ。

旅行のDX化に挑む令和トラベル、新たな移動のインフラを創るLUUP、 働き方改革の最前線に立つタイミー、交通を通じて地域経済の活性化を担うnewmo、そして宿泊体験を再定義するNOT A HOTEL。これら5社には共通点がある。それは、既存市場に革新をもたらし、新たな市場を創造していること。 そして、その成長が単なる自社の売上 / 利益といった数字の上昇ではなく、社会に真の変革をもたらしていること。

「それを言うならこのスタートアップも載るべきだろう」「いや、あの企業こそ今最もホットなのでは?」。 そんな声が聞こえてきそうだが、そうした議論を生むことこそ我々の狙いでもある。

ではいこう。2024年、最も注目すべきBtoCスタートアップたちの世界へ──。

  • TEXT BY SHUTO INOUE
  • EDIT BY TAKUYA OHAMA
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PKSHAとの提携でテックドリブンな旅行体験を加速させる、令和トラベル

提供:株式会社令和トラベル

2024年9月、シリーズAラウンドで約48億円の大型調達を発表した令和トラベル。累計調達額70億円という数字が、投資家たちの期待の高さを如実に物語る。

しかし、なぜ今、旅行業界なのか?コロナ禍で大ダメージを被った業界──、そう思う読者も多いはず。しかし、そこにこそブルーオーシャンが広がっていた。外出需要の回復と共に加速する旅行業界のDX。その大きな波に乗り、新たな体験価値を創出する。これが令和トラベルの描く未来図だ。

提供:株式会社令和トラベル

同社の主力プロダクト『NEWT(ニュート)』は、まさにそれを具現化したものだ。海外旅行予約アプリでありながら、AppStoreでのユーザーレーティングが4.6を超えるという、驚異的な数字を叩き出す。さらに、FY2024 1QからFY2025 1Qで308%成長という、まさに“ジェット機”並の躍進を遂げている。

この急成長の原動力は何か? それは、最先端技術の活用による顧客体験の革新にあった。「テクノロジーで旅をアップデートする」。そう語るのは、同社CHRO(最高人事責任者)の田村氏だ。

田村我々は単なる旅行会社ではなく、テクノロジーカンパニーです。生成AIや機械学習を駆使し、一人ひとりに最適な旅を提案する。それが我々の目指す「旅のパーソナライズ」です。

この言葉通り、同社は2024年9月に発表したPKSHA Technologyとの資本業務提携を梃子に、“AIトラベルコンシェルジュ”の開発に着手。これは従来の人間によるコンシェルジュサービスをAI化し、24時間365日、即座に最適な旅行プランを提案するシステムだ。さらにはダイナミックプライシングの導入で、需要と供給のミスマッチを解消する野心的な取り組みも進行中。

しかし、令和トラベルの強みはテクノロジーだけでなく、組織文化にもあった。「我々には『ミッショントライアングル』*という哲学がありまして」──、と田村氏は続ける。

*同社の組織の価値判断基準を示す概念で、「ミッション」「ビジョン」「バリュー」「戦略」「戦術」を一体化したもの。このトライアングルは、組織全体が一貫した方向性を持ち、目標達成に向けて効果的に動くための基盤となっている。

「ミッショントライアングル図」(引用:令和トラベルCHRO 田村氏のnoteより)

田村これにより、令和トラベルには単なる利益追求ではなく、「あたらしい旅行を、デザインする。」というミッションに強く共感する人材が集い、仲間となっています。

また、私自身、CHROとして人事制度にも力を入れています。例えば、半年に1回、全社員に50%OFFの海外ツアークーポンが支給される「トラベルデザイン」制度。これは一般的な福利厚生に留まらず、社員に対し顧客目線を徹底的に内在化し、サービス改善につなげてもらうための仕掛けです。(令和トラベルの組織づくりに関する詳細は田村氏のnoteをチェックしてほしい)

そんな令和トラベルのミッションに共感するメンバー構成は様々だ。読者がイメージしやすい旅行のプロフェッショナルが在籍しているのはもちろんだが、他にも広告代理店やテック企業経験者など、同社に属する面々は必ずしも「旅行業」に従事してきた者ばかりではない。こうした多様性により、旅行体験の革新が日々模索されているのである。

そして今後の展望も大胆。今後サービスのグローバル展開を加速すべく、現状のハワイに加え、韓国、シンガポールなどへの海外拠点の開設も検討。また、国内旅行事業への参入やフライト予約機能の追加など、テクノロジーを活用しながら業界トップを見据えたチャレンジを画策している。

こうした挑戦にあたり、他のスタートアップでは得られない魅力ややりがいは何かと尋ねると、「令和トラベルの事業ドメインは『成長産業』でありながら、『ハッピー産業』でもあることですね」と田村氏は言う。

田村旅行とは、人生の貴重な思い出や転機をつくる重要な機会です。海外経験で人生観が変わり、次の挑戦への大きなきっかけになる。こうした、人生をぐんと前に突き動かすような体験を提供することが、我々の考える「ハッピー × 成長」産業の持つ本質的な力であり魅力です。これを、テクノロジーの力でより多くの人に届けたい。それが令和トラベルにとっての使命であり、成長の源泉でもあるんです。

「ハッピー産業」と「成長産業」。この、他産業にはないユニークな掛け合わせで変革を狙う令和トラベルの挑戦を、FastGrowとしても応援していきたい。

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電動キックボード『LUUP』が切り拓く、「街じゅうの駅前化」

「街じゅうを『駅前化』するインフラをつくる」──。

この大胆なミッションを掲げ、電動キックボード市場に新風を巻き起こしているのがLuupだ。2023年4月、同社は総額約45億円の大型調達を実現。累計調達額は約91億円に達し、業界の雄としての地位を不動のものにした。

そして2024年10月、さらなる飛躍の布石を打つ。 元日本航空社長の大西賢氏や元警視総監の樋口建史氏など、錚々たる顔ぶれを社外取締役・監査役に迎え入れたのだ。

なぜ今、電動キックボードなのか?

2023年7月、電動キックボードの利用に関する改正道路交通法が施行された。 運転免許不要、16歳以上利用可能、ヘルメット着用は努力義務──。

この法改正を追い風に、Luupは急成長のアクセルを踏み込む。

「新事業特例制度下での電動キックボード走行実績のうち、Luupが9割以上のシェアを占めている」

(「迫る『改正道路交通法』の施行、電動キックボードのLuupが約38億円の資金調達──安全対策などを強化」)

この言葉からは、圧倒的な自信が漂う。

しかし、電動キックボードと言えば、海外での先行事例を思い浮かべる読者も多いだろう。 LimeやBirdなど、米国発のサービスが各国で展開されている。

後発の『LUUP』に、どんな勝算があるのか?

同記事で岡井氏は、Luupのビジネスモデルの独自性を次のように説明している。

「海外プレーヤーは“乗り捨て"を軸にしたサービスを展開しています。そのため、とにかく提供台数を増やすことを指標にし、各社がしのぎを削っている。このモデルは終わりがなく、ひたすら競争し続けなければならない。」

(「迫る『改正道路交通法』の施行、電動キックボードのLuupが約38億円の資金調達──安全対策などを強化」)

対してLuupは、不動産オーナーと提携し、建物の一部をポートとして活用する「ステーション型」を採用。 「サービスの立ち上がりは大変なのですが、一定以上のポート数を設置できれば、ネットワーク効果が働きやすいモデルになっています」と岡井氏は語る。

この戦略が功を奏し、『LUUP』のポート数は約10,000カ所に達し、国内シェアサイクル業界でトップの座を獲得。 外勢が苦戦する中、日本発のユニコーン誕生の予感すら漂う。 しかし、急成長の陰で、安全性の確保が最重要課題として浮上している。

Luupはこの課題に真摯に向き合い、新たな経営体制の下でさらなる安全対策の強化に乗り出した。既に実施している対策は多岐にわたる。利用前の安全講習や交通ルールテストは、ユーザーの意識向上に一役買っている。さらに、アプリ内での継続的な注意喚起により、安全な利用を促進している。

また、ハード面での進化も目覚ましい。最新の車体に搭載された最高速度表示灯は、その好例だ。20km/hで走行中は緑色に点灯し、低速モードに切り替わると点滅する。この視覚的フィードバックにより、利用者自身はもちろん、周囲の歩行者や車両にとっても、走行状態が一目瞭然となった。

Luupの挑戦は、単なるモビリティサービスの枠を超えている。「街じゅうの駅前化」は、都市のあり方そのものを変える可能性を秘めているのだ。

実際、『LUUP』のサービス拡大は、不動産価値にも影響を与え始めている。

駅から離れた物件でも、『LUUP』のポートがあれば価値が上がる可能性が出てきたのだ。

業界予測では、2024年から2032年にかけて年平均16.1%の成長が見込まれているという。 この波に乗り、Luupはさらなる成長を目指している。

今、日本の街を変える革命が始まろうとしている。 その震源地こそが、『LUUP』なのだ。

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スキマバイト革命で労働市場を制する、急成長の秘策

2024年7月26日、スキマバイトアプリ『タイミー』を運営するタイミー東証グロース市場に上場を果たした。 初値ベースの時価総額は約1,760億円。この数字が示すのは、新たな労働市場創出の可能性だ。

同社の急成長を支える戦略の核心は何か。それは、テクノロジーを駆使した「摩擦のない労働市場」の創造にある。

BtoCというよりもBtoBtoEのようなかたちをとるビジネスモデルは、以前からリクルートが「リボンモデル」として展開してきたモデルと似ており、この点では単純明快だ。働きたい人と人手が欲しい企業をマッチングし、面接なしで最短1時間から働ける。さらに、その日のうちに給与が振り込まれる。

この「単純さ」をこの時代に合わせて先鋭化させた点こそが、革新性の本質だ。

人材不足に喘ぐ企業と、柔軟な働き方を求める個人。この二つの社会課題を、テクノロジーの力で結びつけた結果、わずか6年で累計ワーカー数900万人以上、導入企業約13万6,000社という驚異的な成長を遂げた。

しかし、タイミーの成長戦略はこれに留まらない。

2024年2月には、新規事業『タイミーキャリアプラス』をローンチ。これは、スポットワークからキャリア支援へと事業領域を拡大する大胆な一手だ。

「タイミーは短期アルバイトのマッチングで終わらず、キャリア形成や転職支援まで一気通貫で担っていく。それが、日本の"はたらく"にまつわる社会課題の解決を目指すプラットフォーマーとして、今果たすべきミッションです」

(「7月上場のタイミー。小川嶺は「はたらく」市場をどう開拓する?」)

この戦略拡大には、二つの狙いがある。

一つは、ユーザーのライフタイムバリューの向上だ。スポットワークから正社員紹介まで、働き手のキャリアステージに応じたサービスを提供することで、長期的な顧客維持を図る。

もう一つは、競合他社との差別化である。メルカリやリクルートなど、巨大企業の参入が相次ぐ中、単なるマッチングサービスから脱却し、総合的な人材プラットフォームへと進化を遂げようとしている。

タイミーの競争優位性は、この「プラットフォームの進化」にある。

「スポットワークが新しい働き方だという認識が広がるし、自分たちがナンバーワンになればいいから追い風」

(「本日上場タイミー、27歳社長が語るユニコーン企業の野望」)

同社代表・小川氏のこの言葉には、先行者利益を活かしつつ、市場全体の拡大を見据える戦略的思考が表れている。

実際、スポットワーク市場は拡大の一途を辿っている。業界団体のスポットワーク協会によると、サービスの登録者数は複数登録も含め約1,500万人規模に達しているという。

しかし、課題もある。非正規ワーカーのマッチングサービスは、格差の固定化につながるおそれも指摘されている。これに対し、タイミーは「タイミーキャリアプラス」を通じて、スキルアップと正社員化の道筋を提供。社会課題の解決と事業成長の両立を目指すのだ。

さらに、政策立案者との対話も積極的に行っているのがタイミーのある種の“したたかさ”を表しているだろう。

「政治家の方からするとタイミーは『世の中に良い影響を及ぼすのか、悪い影響を及ぼすのか』がわからない未知の存在でしょう。時代にアジャストしたサービスであり、働く人の可能性を広げる存在であることを、適切に伝えていきたいです」

(「7月上場のタイミー。小川嶺は「はたらく」市場をどう開拓する?」)

この発言からは、規制対応を見据えた長期的な事業戦略が垣間見える。

タイミーが掲げる「はたらくに“彩り”を。」というタグライン。これは、単なるキャッチコピーではない。それは、テクノロジーと戦略の融合がもたらす、新たな労働市場の姿を表現したものだ。

スキマバイトという新市場を開拓し、キャリア支援へと領域を拡大。さらには政策立案者との対話まで。タイミーの戦略は、単なるアプリ開発の域を超え、日本の労働市場そのものを変革しようとしている。

この壮大な構想は、果たして実現するのか。それとも、巨大企業との競争の中で埋没してしまうのか。

タイミーの今後の展開が、日本の労働市場の未来を占う試金石となるのは間違いない。

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Uberに挑むnewmoの日本発モビリティ革命。
切り札は「OSAKAモデル」

世界のライドシェア市場で覇権を握るUber。その巨大な影に挑む新たな挑戦者が、日本から現れた。

newmo──。

2024年1月に設立されたばかりのこのスタートアップ。スタートアップ界隈では「ロールアップ」という「タクシー×ライドシェア」という独自モデルで、モビリティ革命を起こそうとしている。

newmoの戦略の核心は、「OSAKAモデル」と呼ばれる独自のアプローチだ。 これは、既存のタクシー会社への資本参加を通じてライドシェア事業を展開するという、一見矛盾するかのような戦略である。

しかし、この戦略の威力は、すでに実証されつつあるのだ。

newmoは設立からわずか半年で、大阪のタクシー会社「岸交」への資本参加を皮切りに、「未来都」の経営権も取得。大阪府内のタクシー事業者5位の規模にまで急成長を遂げたのだ。

(「M&Aで猛追!スタートアップ×老舗タクシーの野望」)

Uberが各国で既存のタクシー業界と対立してきたのとは対照的に、newmoは「共存共栄」を掲げている点も興味深い。この戦略は、日本特有の規制環境や市場構造を見据えたものだ。

newmoの「OSAKAモデル」戦略の核心は、既存のタクシー事業者への資本参加を通じてライドシェア事業を展開することにある。この独自のアプローチにより、newmoは複数の課題を同時に解決しようとしている。

まず、規制対応の面では、既存のタクシー事業者の許認可を活用することで、ライドシェアサービスの迅速な展開が可能となる。日本では依然としてライドシェアに関する規制が厳しいが、このモデルならばその障壁を克服できる。

次に、インフラ活用の観点では、既存のタクシー会社が持つ配車システムや営業所などの設備を効率的に利用できる。これにより、新規参入に伴う初期投資を大幅に抑えることが可能だ。

さらに、人材確保の面でも大きなメリットがある。経験豊富なタクシードライバーをそのまま活用できるため、質の高いサービスを即座に提供できる。また、ライドシェアドライバーの教育も、既存のタクシー会社のノウハウを生かして効率的に行える。

このように、「OSAKAモデル」は日本の独特な市場環境に適応した、newmo独自の戦略と言える。タクシー業界との協調を図りつつ、新しいモビリティサービスを展開するという、一石二鳥のアプローチなのだ。

しかし、newmoの野心はここにとどまらない。

2025年度中には、「全国主要地域での展開」「タクシー車両数3,000台」「ドライバー数1万人」という壮大な目標を掲げる。この目標達成のため、newmoは積極的なM&A戦略を展開している。

そして、この急成長を支えているのが、驚異的な資金調達力であろう。設立からわずか7か月、シリーズAで100億円超を含む累計120億円超の調達に成功。 さらに、直近10月には追加ラウンドで約63億円の調達も発表したばかり。投資家たちが、newmoの戦略に並々ならぬ期待を寄せていることの証左だろう。

しかし、Uberとの競争は、単なる規模の戦いではない。newmoは、テクノロジーの面でもUberに挑戦状を叩きつける。

例えば、AI駆動の需要予測システムの開発だ。 気象データやイベント情報、過去の乗車履歴などを分析し、効率的な車両配置を実現する計画だ。 日本特有のデータ(例:花見シーズンの人出)を組み込むことで、Uberとの差別化を図る。

さらに、8月には子会社「ライドシェアリース」を設立し、FinTech事業にも参入。初期費用0円でのカーリースを提供し、ライドシェアドライバーの裾野を広げる戦略を展開している。

これらの取り組みは、単なるビジネス拡大を超えた社会的意義を持つだろう。地方の交通問題解決、新たな雇用創出、そして環境負荷の低減──。newmoの挑戦は、日本社会の課題解決と直結しているのだ。

newmoの挑戦は始まったばかりだ。Uberという巨人に挑む、この新興企業の行方から目が離せない。

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「家」と「旅」の境界線を溶かす、NOT A HOTEL住まい革命

あなたは「家」と「旅」を別のものだと思っていないだろうか。

その常識を覆す革命が、静かに、しかし確実に進行している。

NOT A HOTELは、テクノロジーの力で「家」と「旅」の境界線を溶かし、新たな住まい方を創造している。 それは単なる宿泊ビジネスの革新にとどまらず、我々の生き方そのものを変える可能性を秘めているのだ。

2020年4月の創業からわずか4年。累計契約高227億円、オーナー597名という驚異的な成長を遂げたNOT A HOTELは、2024年7月に約55億円の資金調達を実施。そして2024年12月にはデットファイナンスによる総額105億円の資金調達を実施し、累計調達額は約223億円に達した

しかし、この数字以上に注目すべきは、その革新的なビジネスモデルだ。

NOT A HOTELの核心は、「世界中にあなたの家を」というビジョンにある。 これは単なるキャッチフレーズではない。テクノロジーを駆使した独自のプラットフォームによって、このビジョンを現実のものとしている。

その仕組みは、シンプルでありながら革新的だ。

  1. 物件をオンラインで販売(1棟単位、年間30日分、年間1日分から選択可能)
  2. 購入者は自宅や別荘として使用可能
  3. 未使用時はホテルとして運用し、収益を得られる
  4. 他の物件も相互利用可能

この仕組みにより、NOT A HOTELは「所有」と「利用」の概念を柔軟に組み合わせ、新たな価値を創出している。

しかし、NOT A HOTELの真骨頂は、このビジネスモデルを支えるテクノロジーにある。

自社開発のスマートホームシステムは、国際標準規格「KNX」を採用。 照明、オーディオ、空調など全ての設備をネットワーク化し、どの物件でも同じタブレット端末で操作可能だ。

この一貫した体験が、ユーザーに「自宅感」をもたらす。まさに、テクノロジーが生み出す「新しい住まい方」の真髄と言えよう。

さらに、予約システムから顧客管理、ビルマネジメントまで、全てを自社開発のプラットフォームで一元管理。これにより、きめ細やかなカスタマーサポートと効率的な運営を両立させている。

この徹底したテクノロジー戦略が、NOT A HOTELの競争優位性を生み出している。

実際、社員約200名のうち30名がエンジニアだという。 これは、不動産企業というよりも、“テクノロジーカンパニー”の様相を呈している。(記事公開時点)

NOT A HOTELの挑戦は、単に宿泊体験を変えるだけにとどまらない。それは、我々の「住まい方」そのものを変革する可能性を秘めているのだ。

「今日は海辺で目覚め、明日は山頂で朝食を」

かつては夢物語だったこの生活が、テクノロジーの力で現実のものとなりつつある。

さらに、NOT A HOTELの挑戦は、日本国内にとどまらない。

「日本のNOT A HOTELの物件を、海外の顧客に売る」

これが、グローバル展開の第一歩だという。日本の特別なロケーションを活かし、世界に類を見ない「住まい方」を提案する。 そんな構想が、今まさに動き出そうとしている。

NOT A HOTEL、海外富裕層にシェア別荘 1口3.5億円

「所有」と「共有」の新たな形。「定住」と「遊動」の調和。そして、「日常」と「非日常」の融合。NOT A HOTELが提案する、新しい住まい方の世界。その扉が、今まさに開かれようとしている。

令和トラベル、LUUP、タイミー、newmo、NOT A HOTEL。

この5社が示したのは、成長の方程式と言える。

彼らは、既存産業の常識を覆し、テクノロジーで新たな市場を開拓した。単なる数字の上昇ではなく、社会の仕組みそのものを変える成長を遂げている。

これが、次の10年を担う企業の共通項だ。

さて、読者の皆さん。 あなたの周りにも、こんな企業がまだまだ眠っているかもしれない。

いや、むしろこう問おう。 あなた自身が、次の革新者になる準備はできているだろうか。

こちらの記事は2024年12月03日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

井上 柊斗

編集

大浜 拓也

株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。

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