ようこそカオスと狂気の世界へ
狂気とカオスが渦巻くベンチャーであなたが躍動するために
ようこそ狂気とカオスの世界へ!まずは入社おめでとう!この連載は、ベンチャーというカオスの荒波にこの春飛び込んできた皆さんに送るエールだ。
入社式が中止になった会社も多いと聞く。初出勤を自宅から一歩も出ずに達成したあなたがそこにいるかもしれない。そんな私も、いつもなら青山のオフィスでのはずが、薄暗い自宅でパソコンと向き合っている。
なぜこんな文章を書いているのか。それは皆さんのこれからのベンチャーライフがより良いものになるように強く願っているからだ。想像もしていなかったような、とんだ門出になったかもしれない。今後、より一層困難な状況になっていくかもしれない。ただ、あえて困難な道を選ぼうとしたのが、皆さんのはずだ。
私は仕事柄、多くの新入社員がベンチャーに飛び込み、活躍し、成長していく姿を見てきた。一方でその逆に、思っていたような活躍ができなかったパターンももちろんある。そうした経験から、業界やビジネスは様々でも、イケてるルーキーには共通するマインドセットや型があると感じている。
本当にそんなものがあるのなら、ベンチャーでのキャリア形成に携わる身として、僭越ながら言葉にしてあなたに伝えたいと思った次第だ。
思い返せば入社1年目の初日、会社のウェルカムランチでまわりのみんなから「え、そんなのも読んでないの!?」とツッコまれ、そのまま急いで買いに走ったのが『入社1年目の教科書』という本だった。
その名を拝借したこの連載、4月から始まった皆さんの仕事人生が素晴らしいものになるように、そう願いながら筆を進めよう。
皆が必死な人の少ない小さな船
あのAirbnbやDropboxを輩出したベンチャーキャピタル「Y Combinator」、その創業者であるポール・グレアムは、大企業を「1000人の漕手がいる巨大なガレー船」に例えた。対してベンチャーを「10人の船」と言った。
1000人の船であなたが仕事をサボったとしても、航海に影響はほとんどないだろう。昼寝をしていたって船は進む。1人の影響力なんてたかが知れている。そんな素晴らしい仕組みがあるからこそ、大企業は大企業になれたのだ。
しかし、10人の船で誰か1人でも仕事をしない人がいれば、その船は進まなくなる。そして厳しく文句を言われるだろう。皆、船を前に進めるために必死だからだ。
あなたが入社したのは、きっと10人の船だ。そこではあなたの努力次第で、前に進むことに思い切り貢献できる。あなたが働いた分だけ、あなたが成長した分だけ、その船は早く遠くに進むことができる。そしてあなた自身もそれを実感できる。
全体像を把握しよう。会社は、部署はどう動くのか
会社が船だとするならば、どれだけ先に進んだのかという結果が売上だ。あなたが早く効率良く漕げば、船は前に進む、すなわち売上が上がる。まずは、自分の会社がどのように売上を上げているのか理解しよう。
あなたの会社の顧客・ユーザーは誰だろうか。なぜ、その顧客やユーザーは、あなたの会社にお金を払ってくれるのだろうか。そして、どのような仕組みで、その商品やサービスが届けられているのだろうか。こうしたことを確認し、船がどのように進んでいるのかを知らなければ、きちんと貢献し続けるのは難しい。
次に知るべきは、あなたが所属する部署のことだ。お客様からお金をもらうために、どのような役割を担っているのだろうか。会社全体の売上目標を達成するために、部署が目指す重要な目標はなんだろうか。それらを割り戻したものが、あなたへの期待値だ。
あなたが10人の船におけるコックだとしよう。次の島まではあと1週間かかる。あなたの役割は10人分の食事を1週間、いまある在庫から提供することだ。5日分しか提供できなければ、2日間クルーは飲まず食わずだ。もちろん誰かが盗み食いしないように食料庫を見張るのもあなたの役目だ。
後に知るべきは、コスト削減について。コストを下げることができれば、利益が増える。あなたの給料の原資がそこから生まれていることを把握すべきだ。財務諸表が開示されているなら見てみるといい。あなたが座っているその椅子も、PCも、すべてはその中の項目に計上されている。
何にどれくらいのお金がかかっているのだろうか。あなた一人雇うのに、いくらかかっているのだろうか。これらを知っておいて損はない。
私は新卒1年目のとき、ペットボトルをゴミ箱に捨てたら「おい」と先輩社員に声を掛けられた。「分別でも間違えたか?」と思ったら「潰せ」と言われた。当時、ゴミ袋一つ回収してもらうために500円必要だった。ペットボトルを潰したら、倍の数のペットボトルが一つのゴミ袋に入る。あなたの行動一つで、財務諸表の中身は少しばかり変えることができる。
会社がどのように回っているのか、わからなければ聞いてみるといい。あなたの会社が小さければ余剰人員なんていないはずだ。すべての人の、すべての仕事に意味がある。
話す時間が欲しい、でも今はランチすら一緒に行くことができなくて困ると訴えているそこのあなた。そんな暇があるなら、どの先輩でもいいから、Zoomでもオンライン飲み会でも誘ってみるといい。他部署や上の先輩を誘うことができるのも新入社員の特権だ。新入社員に声をかけられて、嫌な顔をする先輩社員はいないはず。
あなたもきっとそういう経験があるだろう。サークルに入ってきた大学1年生に「先輩!ご飯連れていってください!」と言われれば、ラーメンにライスでもつけて奢ってあげたはず。
このように可愛がられる後輩力を発揮することも大事だ。いい年になって後輩力を馬鹿にする大人も少なからずいる、だが特権は享受できるうちに思い切り享受し、仕事に生かすのが本当に真摯な姿勢だ。
先輩の「5分」を作ることにも価値がある
ここまで理解できたら、あとは乗組員としてチームに貢献する、やるべきことはただそれだけだ。つまり、売上を上げ、コストを下げるということ。直接に越したことはないが、間接的にでも、いまあなたにできることで、チームに貢献しよう。
例えば、いま鳴っている会社の電話をあなたが先輩の代わりに取る。やり方が分からなければ、隣で先輩の対応を見てその言動をメモすればいい。「お電話ありがとうございます、○○でございます」。たいていはこんな入り方だ。あなたが代わりに電話を取ることで、先輩社員に5分の時間がプレゼントできる。その5分で船は少し進む。
目の前で行われているすべての行為に意味はある。無駄な仕事なんてない、結局のところ大切なのは、全体が見えているのか、なんのために仕事をしているのか、ということだ。
とある知人が、新卒だからというので「テレアポしてみよう!」ということになった。まわりには、電話をかけることにドキドキしてしまう人、うまくできるように練習してからといつまでも電話をしない人、アポイントが取れたといって少し自慢気にしている人、まあそんな様子だったらしい。だが、その知人は血相変えて電話し始めた、そしてアポを取ったと思いきや、資料を片手に営業に出かけ、なんと受注して帰ってきた。
その人はもちろん、はなから受注して売上をつくるためにテレアポに臨んでいた。いまではとある会社の役員だ。なんのために仕事をするのか、その大事さを知った瞬間だった。
成果に集中すること、確かドラッカーという人もそんなことを言っていた。
ベンチャーでの市場価値が知りたい、大手エージェントでは紹介されない優良ベンチャーが知りたい方はこちら
こちらの記事は2020年04月10日に公開しており、
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連載ベンチャー新卒1年目の教科書
10記事 | 最終更新 2020.08.14おすすめの関連記事
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