「M&Aは時間を買うための選択肢」上場企業3社の経営陣が語る、“売り手側“に求める条件とは?──FastGrow × M&Aクラウド共催イベントレポート
2019年3月11日、M&Aに積極的な企業の役員とベンチャー経営層が対面で交流し、情報交換できる初のミートアップイベント「Synergy Night ~ produced by M&Aクラウド」が、スローガン株式会社 イベントスペースにて開かれました。
今後の経営戦略においてM&Aや資本提携を検討しているベンチャー経営層にとって、M&Aの買い手側の声をオープンな場で聞ける機会はなかなかありません。今回のイベントは、M&Aのマッチングプラットフォーム「M&Aクラウド」を運営する株式会社M&Aクラウドが、“売り手と買い手が直接やりとりできる”同サイトの特長をリアルの世界で実現しようと企画したものです。
今回、“買い手”側として参加したのは、住宅設備販売、不動産テック、ディスクロージャー支援と業種もさまざまな上場企業3社のM&A担当役員。それぞれの事業内容とM&A戦略を発表した後、交流会にて参加者と自由に語り合い、情報交換を行いました。
※このコンテンツはM&Aクラウド社により制作されたものです。
- TEXT BY TAKUMA MORI
「システムの内製化、送客拡大、提供サービスの拡充のパートナーを求めています」
イベントの前半は、M&Aに積極的な企業3社によるプレゼンテーションが行われました。トップバッターを務めたのは、株式会社サンワカンパニーの山根社長。同社は、キッチン・洗面台・洗面ボウル・タイル・建具・バス・フローリング・インテリア家電などの住宅資材を自社ECサイトで販売。エンドユーザーが好みのアイテムを自ら検索して購入できるビジネスモデルで、急成長を遂げています。
株式会社サンワカンパニー
2000年から業界に先駆けて住宅設備機器・建築資材のEC販売を行う。世界から認められるデザイン性と幅広い商品カテゴリを保有し、独自のビジネスモデルを確立。
現在国内の売上の約8割がオリジナル商品(自社開発商品と国内独占販売できる海外輸入商品)であり、ショールームを全国5個所に設けリアル空間でも顧客に接する。
2018年ミラノサローネ国際家具見本市において最も優れた出展企業に贈られる「ミラノサローネ・アワード」をアジア企業として初めて受賞し、国内外で高い注目を集める。
さらにアジアを中心に海外事業の拡大も進めている急成長の企業。
同社の直近のニーズは、現状、外注しているECサイト制作・システム制作を内製化することだといいます。このため、山根社長は「システムの受託開発会社やWeb制作会社」をM&A対象領域の筆頭に挙げました。
加えて、販路拡大目的で関心を持っている不動産会社とのM&Aの可能性にも触れ、「賃貸物件の借り手が退去した際には、必ず原状回復の作業が行われます。そこで使われる住宅資材を当社がリーズナブルに供給できれば、双方にとってよい関係が築けます」とアピール。
続いて、ライフスタイル系のメディアにも注目していると語り、「メディアから当社ECサイトへの送客効果を期待しています」と目的を説明。
さらに、今後は住宅資材だけでなく、好みの資材を使って建てた家1軒をまるごとインターネットで買える仕組みの実現を目指していることを説明し、「このビジョンを具現化するためには、設計事務所と共に取り組むことが欠かせません。M&Aでよいパートナーを迎えることができれば」と期待を述べました。
プレゼンテーションの最後に「住宅業界にはまだアナログな部分が多く残っており、ITで変革できる余地が大きいと考えています。当社の目指す方向性に共感してくださる皆様、ぜひ一緒に改革していきましょう」と呼びかけました。
発表後、会場参加者から「相手先の検討にあたって、社風などKPIには表れない部分はどのように判断するのですか?」との質問が寄せられました。山根社長は「業界の変革を掲げ、ベンチャースピリットを持って取り組み続けている当社の場合、安定を求める人や現状で満足している人が多い会社とは相性がよくないものと思っています。そのあたりは、私や副社長がオフィス訪問した際などに、雰囲気を感じ取っています」と答えていました。
「国内No.1のプラットフォーム構築に向け、スピード成長を実現できるM&Aを検討中です」
続いて登壇したのは、「不動産×IT」の領域で事業展開する株式会社アズームの高橋副社長です。同社は、月極駐車場の遊休スペース情報を駐車場オーナーや事業者から集め、ユーザーが希望条件で検索できるポータルサイトを運営。同サイトの集客力を武器に、駐車場オーナーから遊休スペースを1台分から借り上げるサブリース事業を軸に、業績を伸ばしています。
株式会社アズーム
駐車場ポータルサイト「CarParking」をはじめ、駐車場を中心とする不動産の有効活用を図るべく、「貸し出したいオーナーや事業者」と「必要としている利用者」の橋渡しに取り組む。
「CarParking」の掲載件数は、国内最大規模の45,000件超であり、またエリアごとの相場の推移やユーザーからの問い合わせ量を把握し運営に反映させるデータベースの保有量は業界内随一。
同社は今後、駐車場データベースの拡充、事業展開エリアの拡大により、国内No.1の駐車場情報プラットフォームの構築を目指すとともに、駐車場以外の遊休不動産活用ビジネスの育成・展開を進めていくことを成長戦略に掲げています。加えて、2019年2月には、空間の利用方法や完成イメージ等をCG活用により表現することに取り組む子会社を設立するなど、遊休不動産活用に役立つIT開発にも力を入れています。
同社は2018年9月に東証マザーズへの上場を果たしており、上場後にM&Aに向けた動きを本格的に開始しています。高橋副社長は、「不動産×ITにどこかでつながる会社様とは、ぜひお話しさせていただきたい」と会場に語り掛けました。
発表後、会場参加者からは、M&A検討の背景を尋ねる質問が上がりました。高橋副社長は、「M&Aが必須なわけではありませんが、時間を買うという意味では、やはり選択肢の一つに入れておきたいと考えます。優れたITスキルを持つ会社には、特に関心を持っています。現在も社内にエンジニアを抱えてはいますが、今後の事業拡大に向け、質・量ともに人的リソースを拡充していきたい」と考えを語りました。
「IRのWeb化・自動化ニーズへの対応力向上が急務。高度な専門性を持つパートナーが必要です」
最後のプレゼンテーションには、株式会社プロネクサスの大和田執行役員が登壇しました。同社は、有価証券報告書の作成支援をはじめ、上場企業のディスクロージャー(情報開示)支援を行っており、上場企業の約6割を顧客に持つ老舗企業です。従来は紙の書類作成において、法令知識を生かしたアドバイスやチェックなどを行ってきましたが、近年は企業コミュニケーションのWeb化、事務作業の自動化といった社会の流れを受け、Web制作やシステム構築にも注力しています。
株式会社プロネクサス
日本企業の情報開示・IR実務を支えてきた東証一部上場企業。開示資料をはじめとするドキュメント作成支援を核に事業展開。上場企業の6割を顧客にもつ。近年は、決算開示・業務プロセス支援ソリューションやWeb関連ソリューションも急成長中。
また自己資本比率70%超と経営安定性に優れており、グループ会社のチャレンジを支援できる財務基盤を有する。
同社は、社内にもWeb制作やシステム構築の部隊を持っているものの、拡大する顧客ニーズに応じたリソース拡大が急務です。。大和田執行役員は、会計領域に馴染みのあるシステム開発会社やWebマーケティングのトレンドに明るいWeb制作会社などを具体的なM&A先候補として挙げました。
そのうえで、「ディスクロージャーとIRは、現代社会において欠かせない役割を果たしており、その正確性が投資家の判断、ひいては資本主義社会のサイクルを支えています。こうした当社事業の社会的意義を理解してくださる会社とご一緒させていただきたい」と思いを語りました。
同社は2018年11月、経済統計・ファイナンスデータベースサービスを手掛ける株式会社アイ・エヌ情報センターを、M&Aにより子会社化しています。大和田執行役員はこのM&Aについて、「企業情報というミクロ情報を扱うプロネクサスと、経済統計というマクロ情報を扱うアイ・エヌ情報センターがタッグを組むことにより、両社のデータベースの価値向上や新たなサービス創出の可能性が生まれます」と目的を説明しました。
また、M&Aから4か月間を経た現在までの軌跡を振り返り、「当社はグループ会社の自主性を尊重しています。アイ・エヌ情報センターにも、従来の経営体制はそのままにグループ入りしていただいたうえで、『今後、どのようにシナジーを創出していくか』という点にフォーカスして協議を続けてきました。先方社内には当初は不安もあったと思いますが、現在では当社の姿勢を理解いただき、非常によい関係で協議を進めることができています」と状況を紹介しました。
M&Aをトピックとするフランクな語り合いの場が実現!
プレゼンテーション後は、登壇者と参加者が自由にコミュニケーションできる交流会が行われました。「現在自社の売却を検討している」「将来的に売却を考えているため、M&Aに関する情報を得たい」「経営者同士の横のつながりを作りたい」「資本提携や業務提携を考えている」といった思いを持って参加したベンチャー経営層とのフランクな情報交換の場が実現。
イベント後、参加者からは、「登壇者、参加者含め、面白い方々とつながることができた」「これまでに例のない、よい企画だと思う。今後も継続開催してほしい」などの声をいただきました。
こちらの記事は2019年04月26日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
森 琢麻
M&Aクラウド ライティング担当
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