未開領域だからこそ、「売るだけ」でなく“コンセプチュアルスキル”が磨かれる──シタテルのセールスチームが創り出す、新しい商習慣
Sponsored2019年5月と6月に資金調達を行い、累計調達額が約20億円となったシタテル株式会社。同社は衣服生産プラットフォーム「sitateru」を中心に、プロ/アマチュアを問わず、「衣服をつくりたい」人を支援するサービスを提供する。
本記事では、「売るだけ」ではなく、現場で得た情報を元にサービスを進化させていく、同社のセールスチームの組織体に迫る。
話を伺ったのは、セールスとマーケティングを管掌する執行役員・鍜冶村忠氏と、開発中の新規データベースサービスのPMとしてプロジェクトを牽引する、営業企画部所属の塚本壮史氏だ。
衣服産業の変革に挑むシタテルの展望と、少数精鋭でサービスを進化させていく組織の全容を明らかにする。
- TEXT BY TAKUMI OKAJIMA
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
- EDIT BY MASAKI KOIKE
目指すのは、誰もが自由に衣服をつくれる未来。縫製工場からデザイナーやパタンナーまで網羅するデータベースサービス
衣服産業の変革に挑むため、2014年3月に創業されたシタテル。同社の事業は「縫製工場のデータベース化」からスタートした。電話帳にも載っていない地方の縫製工場の情報を掲載するため、現地に車で向かったり、紹介を受けたりし、データを集めていった。
その後、縫製工場と衣服をつくりたい人のマッチングサービスをスタートするも、専門知識の量にギャップがある両者のやり取りがうまくいかず、成立しなかった。
そこで、単にデータベースを提供するだけでなく、衣服づくりのプロセス全体を支援するプラットフォームとして生み出されたのが、現在の「sitateru」だ。
そしてシタテルは現在、既存のサービスを進化させ、新規データベースサービスを開発している。衣服づくりに必要な、複雑で属人的な情報を一元管理し、簡単に検索できるデータベースである。
これまで、衣服づくりをしたい場合、まずは材料を仕入れるにも商社や繊維工場の担当者と知り合う必要があり、いくつものプロセスを経る必要があった。しかし、新規データベースを用いれば、縫製工場からデザイナーやパタンナーまで、どの生産者と協力して衣服づくりを進めれば良いのか、誰でも簡単に知ることができる。
同サービスを通じて、シタテルは「誰もが専門知識ゼロでイメージ通りの衣服をつくれる」世界を目指している。
鍜冶村「こういうプリントをした衣服をつくりたい」と希望を持つ人がいても、「そもそも何と検索すればいいのか分からない」といった状況に陥ってしまうことが多いのではないでしょうか。
このサービスを用いれば、専門的な技術や経験がなくても、「どういった衣服がつくれるのか」「どういった加工が実施できるのか」が分かるので、自由なアイデアを元に衣服をつくれます。今後は、それぞれの繊維工場やデザイナー、クリエイターの得意領域や制作実績を知るために、過去に制作された商品を閲覧できるようにすることも構想しています。
塚本たとえば、衣服用のプリントの種類は、よく使われるものだけでも100種類以上あります。専門的な言葉でしか表現できない要素が多く、衣服づくりの経験がない場合、自分がどんなプリントをイメージしているのかを、適切に生産者に伝えることすら困難です。
塚本衣服をつくるうえで、イメージはすごく重要だと思います。だからこそ、衣服のイメージを表現する専門的な言葉を持たない人も、写真などの情報を元にデザインを選べるオンラインの仕組みづくりに着手したんです。
実際にシタテルのセールスも、この仕組みを使いながら企画提案をはじめているのですが、良い反応をいただけていますね。
「サービスを売るだけの人」はいない。一人ひとりが“事業家視点”を持つセールス組織
塚本氏は売上やKPIの管理から、営業や生産の業務フロー効率化、新規サービスの開発まで広範囲に渡る業務を手がける。シタテルのセールスチームでは、他にも多くのメンバーが、通常のセールス業務に加え、事業づくりや企画出しを担っている。
こうした組織体制が敷かれているのは、リクルートグループや株式会社リンクアンドモチベーションに在籍した経験を持つ鍜冶村氏が、事業戦略に紐づく組織づくりを大切にし、「それぞれが考えて学習し続ける」集団を目指しているからだ。
塚本淡々とセールス業務をこなすのではなく、サービスの未来について仮説を持ちながら働く時間が多いことが、シタテルのセールスチームの特徴です。僕自身も色々な人の意見を通じて生産の知識を取り入れつつ、常に頭の中ではサービスの仮説検証を繰り返しています。
鍜冶村一人ひとりのセールスが“事業家視点”で現場の仕事をこなし、スピード感を持ってサービスの仮説検証をできているのが、僕たちのチームの大きな強みです。設立5年でこれだけの体制が築けていて、かつ新規事業も順調に立ち上がっている組織は、なかなかレアなのではないかと思います。
一応、シタテルにも役職や職域はありますが、良い意味で役割意識がなく、事業成長のために必要な意見を自発的に言える環境づくりを重視しています。シタテルのセールスの役割は、サービス自体をつくっていくこと。「売るだけ」ではないからこそ、目標やKPIで縛って評価することはしていないんです。
「低価格化」と「同質化」により、国内産業が空洞化。衣服産業の変革に挑む
日本では2000年頃から、海外から参入してきたファストファッションが台頭し、対抗する形で国内のメーカーやブランドが低価格戦略を展開。結果としてデザインの同質化が起こり、付加価値ではなく価格をもとに商品が購入されるようになった。
現在、日本で消費されている衣服の約97%以上が輸入商材と言われている。また、衣服の供給量は90年代の20億点から40億点近くに倍増しているにもかかわらず、90年代は15兆円あった衣服の市場規模は現在10兆円程度にまで収縮した。「低価格化と同質化の進行に加え、国内産業が空洞化していることは大きな課題だ」と鍜冶村氏は話す。
一方で、周囲と似た衣服を着用することに満足できず、オリジナリティのある衣服を望む人たちも増えつつある。ブランド神話によって成り立っていた衣服産業のルールが、SNSの登場によって顕在化した「小さな声」で崩れ始めた。コミュニティのあり方が変わったことで、プロダクトアウトでもマーケットインでもなく、コミュニティが生み出す「共感・共生型」のものづくりが求められるようになったのだ。
こうした背景から、シタテルは「自分たちがつくり手として良いと思う衣服」をつくるのではなく、「個人やコミュニティ自らが最適な衣服をつくり出せる、仕組みそのもの」を提供する方針を取っている。
鍜冶村これまでは、一部の商社やメーカー以外、服をどうやってつくればいいか分からなかった。どういった構造でものづくりをしているのか自体、明かされてこなかったのが衣服マーケットなんです。そして衣服を仮に少量つくれたとしても、小売店に扱ってもらいにくい傾向もある。まずは、その仕組みをオープンにすることで、「誰もが自由に衣服をつくれる」世界を実現していこうと思っています。
シタテルに所属するメンバーは、共通して誰もが「衣服産業を変えたい」という使命感を持っている。前職のZARAで商品企画から新規店舗の立ち上げまで幅広く業務を手がけていた塚本氏は、大量生産・大量販売のSPA(製造小売)業態のビジネスと向き合うなかで、日本のアパレル業界に対する漠然とした不安を抱くようになった。
また、根底にはものづくりの職人だった父親の仕事を見て育ったことも影響しているという。
塚本父が手間をかけてつくったものが、海外生産や消費の変化の影響を受け、売れなくなっていきました。昔は取引があった小売や商社も、5年後には倒産や営業に来ない状況になる一方、職人である父は新しい販路の開拓に苦戦していた──そんな様子を、子どもの頃からずっと見てきたんです。
だからこそ、自分が身を置いていたアパレル業界に対しても「このままで大丈夫なのか」と不安を抱いていました。「成長市場に身を置いてキャリアを形成していきたい」と思ったこともありますが、「業界や市場の課題を解決することでキャリアを形成していきたい」という想いもありましたね。
そんな折、「クリティカルな問題だけど、誰も取り組んでこなかった」領域に大々的に挑んでいたシタテルと出会い入社を決めたんです。
新しい商習慣をつくるために必要なのは、事業を率いる“覚悟”と「ゼロベース思考」
SDGsが策定され、無駄な在庫をつくらない仕組みが求められていくなか、日本のアパレル業界にはまだ変化が起こりきっていない。シタテルは受注生産で商品販売を行える生産一体型ECパッケージ『SPEC』の提供などにより、新しい商習慣をつくろうとしている。
塚本アパレル業界の既成概念を打ち砕き、これまでの商習慣にとらわれないサービスをつくるには、自分の常識すらも疑って「どうしたら実現できるか」をゼロベースで考え抜くしかない。失敗が付き物であるゆえに、チャレンジ精神が旺盛な人でなければいけません。
高い目標を達成するためには、無理難題を突破していかなければいけないし、それに萎縮してしまう人では難しい。僕も、無理矢理にでも考え抜いて、鍜冶村や他のメンバーに壁打ちしてもらいながら、プロジェクトを進めています。一緒に働きたいのは、臆せず挑戦し続けられるタイプの人です。
鍜冶村もちろん僕たちが達成しなければいけない目標のハードルは高いので、前提として高い能力を備えている必要はあります。
ただ、最も重要なのは、経験よりも「情熱とコミットメントの強さ」だと思います。何も言わずともシタテルの課題について考え抜き、自分なりに解決し、変化をもたらす答えを持っている人と一緒に働きたい。考えの正しさよりも、自分なりのアプローチを考え抜いている人が良いんです。
現在のシタテルで得られる経験やスキルを問うと、「経営人材に求められるコンセプチュアルスキル(構想力)が鍛えられる」と鍜冶村氏は話す。
鍜冶村僕自身、努力して後天的にコンセプチュアルスキルを鍛えたタイプなので、どうすればそれが身につけられるのかを体系化できています。マネジメントにおいては、すべてのメンバーにそのスキルを身につけてもらうために、事業の一部を切り分けて、責任の大きな仕事について自分で考える機会を与えているんです。
そして、僕自身も「こうすべき」という答えを持ちつつも、時間の許す限り、本人が答えを導き出すまで待つ。そうすることで、現場の一人ひとりがコンセプチュアルスキルを徐々に開花させていき、強い組織になっていけるんです。
シタテルのセールスチームが営業に留まらない事業づくりにコミットできているのは、一人ひとりが主体性を持ち、サービスの未来について仮説を持ったうえで日々の業務に従事しているからだと分かった。鍜冶村氏が話したように、事業づくりに参加できる機会を与えられる環境も一因だろう。
衣服産業の課題解決に関心がある読者にとっては、経営人材として急成長できる唯一無二の環境と言えるのではないか。
こちらの記事は2019年08月23日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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執筆
岡島 たくみ
株式会社モメンタム・ホース所属のライター・編集者。1995年生まれ、福井県出身。神戸大学経済学部経済学科→新卒で現職。スタートアップを中心としたビジネス・テクノロジー全般に関心があります。
写真
藤田 慎一郎
編集
小池 真幸
編集者・ライター(モメンタム・ホース所属)。『CAIXA』副編集長、『FastGrow』編集パートナー、グロービス・キャピタル・パートナーズ編集パートナーなど。 関心領域:イノベーション論、メディア論、情報社会論、アカデミズム論、政治思想、社会思想などを行き来。
1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。 「ライフハッカー[日本版]」副編集長、「北欧、暮らしの道具店」を経て、2016年よりフリーランスに転向。 ライター/エディターとして、執筆、編集、企画、メディア運営、モデレーター、音声配信など活動中。
連載テクノロジーが最適化する10兆円市場〜衣服産業で起こる変革の兆し〜
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