1on1の先送りは損!今すぐ考えるべき、対話型組織への第一歩。戦略的に“1on1”を取り入れた大手IT2社に実現の創意工夫を聞く
「対話型組織」と聞いて、魅力を感じない人事担当はいないだろう。社内の対話をもっと促進したい、そんな想いはどこの企業でも抱えているもの。かといって、対話がまったくない組織というのもありえない。「対話を増やそう!」と言われても、現場からは「?」という反応が来ることも少なくない。
だが、「対話」の効用をきちんと具体的に紐解いていけば、そんな懸念も氷解していく。例えば離職率、あるいはメンバー一人ひとりのキャリア形成、評価に対する納得感といった面で、課題のない企業などないはず。「対話」をうまく設計できれば、こうした課題に対しても実はそれなりに即効性があるのだ。“1on1”がにわかに注目を集めている理由が、ここにある。
戦略的に“1on1”を取り入れ、組織活性を実現し始めたIT企業の事例から、「今すぐ考えるべき、対話型組織への第一歩」を学びたい。あなたが社内で感じるモヤモヤのほとんどを解決できるヒントが、きっとあるはずだ。
- TEXT BY YUI MURAO
ほとんどの会社が実はできていない、本当の「1on1」
社内コミュニケーションが大切。そう聞いて、同意しないビジネスパーソンはほとんどいないはず。だが、コミュニケーションを最適化させるための取り組みができているかと問われれば、ほとんどの人が「そこまで自信はない」と答えるのではないだろうか?
昨今、市民権を得るようになってきた“1on1”という言葉。これは単に「上司と部下」が1対1で話す、ということを指しているのではない。中長期的な事業成長に向けた、あらゆる施策の基となるコミュニケーション施策なのだ。ボトルネックとなる要因を見つけ取り除き、目線を揃え事業を加速させるアイデアを引き出す。あるいは、組織のパフォーマンス向上を見据え、メンバーそれぞれの才能や得意分野を伸ばし、改善が必要な点は率直にフィードバックが行われるカルチャーを作る。そんな具合だろう。
そしてこれは何も、ベンチャー企業やスタートアップだけの話ではない。実は著名な大企業でも、組織の課題にぶつかった時、1on1を計画的に導入することで、新たな価値を創出しようとしている。
電通グループでシステム開発事業を手がける電通国際情報サービス(ISID)。従業員規模は連結で約3,000人。社員一人ひとりが中長期的な成長を考える機会の充実を、リモートワークに即した方法で模索できればと、人事部の藤條厚史氏は考えていた。
藤條新型コロナウイルス感染拡大の影響でリモートワークの働き方が増え、オンライン会議が多くなりました。会議は業務確認のみで完結することも多く、将来について話をする機会が減ったという声が寄せられ、自分自身も課題感を感じていました。
そこで考えたのが、仕組みとしての1on1の導入です。数カ月のトライアルから着手してみたところ、限られた期間の中だけでも、コミュニケーション活性化とキャリア形成支援機会としての効果が確認できました。
システム開発大手TISインテックグループは、連結で従業員数21,000人超の大所帯。グループ全体の組織開発を検討するTISの人事本部は、グループビジョン実現のためのエンゲージメント向上に向けた現状課題を、1on1という施策で解消しようと動き出した。
藤原エンゲージメント向上に向けては、「仕事に意義を感じられる」「成長実感を得られる」「評価に納得感がある」など、取り組むべき重要な課題がいくつもありました。例えば評価については、上司向けコミュニケーションガイドの策定や、制度・運用プロセスの見直しなども進めています。でも、ビジョン実現・エンゲージメント向上に向けた打ち手としては何かが足りない。そう考えているうちに出会ったのが1on1です。
課題認識は異なるものの、解消していく手段としてこの2社が選んだのは1on1だった。なぜか?それは、中長期的な企業成長につながるからだ。
とは言っても、中長期的なものだから、始めるタイミングが見つからない──。そう考える経営者や人事担当者もいるだろう。そんなあなたにこそ、「そうではない」と伝えたい。
1on1を継続することで、組織変容の胎動が着実に始まっていく。長期で効果を発揮するからこそ、着手するのが1日でも早い方が、大きな効果も早く現れる。この2社の事例を見れば、「いますぐ始めることがどれだけ重要か」ということもわかるはずだ。
「社のため」ではなく「メンバーのため」が導入のミソ
企業の抱える課題は千差万別だ。2社の導入経緯も似て非なるものだった。まずはこの点をもう少し詳しく見ていこう。
ISIDは以前から、業務効率化や残業時間の削減、ダイバーシティの意識浸透などの施策には積極的に取り組んできた。そしてより良い組織を目指す過程で、組織開発という視点に注目し、主に2領域の施策を展開した。
まず一つは、組織の風通しのよさや働きやすさに直結する要素として「関係性」に注目したチームビルディング施策。そしてもう一つは、「キャリア形成支援」に関する施策だ。ISID人事部の藤條氏は1年前の状況を思い出すように語る。
藤條毎年行っている人材開発に関する社内アンケートで、「働きやすさ」「成長予感」「誇り」といった質問項目を設けていました。その結果から、「上長との関係性」が重要だと考えるメンバーが多いことがわかってきたのです。
コロナ禍でリモートワークを主体とした働き方に舵を切る中で、仕組み化された1on1の場がなかったために、メンバー層からは「中長期的な成長を考えて上長と話す機会が少ない」「組織目標を認識しにくい」といった声が、上長側からは「育成より業務管理のための会話に偏ってしまいがちになる」といった悩みが寄せられたという。
上長とメンバーが話す場が、全くなかったわけではないはず。だが、メンバーも上長も、不足感を覚えている。そんな声に直面し、至った仮説は「対話の場は、意図的に設計する必要があるのではないか」だ。
そうして2021年度から、クラウド1on1ツール『TeamUp』をトライアル導入した。
藤條メンバー一人ひとりが、キャリアや悩みを抱えたまま、話し出せない状態になっているのかもしれない。また実は、本音で話すことができていないのかもしれない。そこで「場の提供」が必要だと考え、まずは1年間のトライアル導入を決めました。
メンバーのパフォーマンス向上やキャリア形成に、どのように対処したらいいか頭を抱える企業も多いはずだ。その課題にアプローチする一つの手段として、ISIDは1on1施策が有効ではないかと判断したのだった。
とはいえ、対面で話す機会を設けていても形骸化してしまいがち──。そんな企業もあるはずだ。だがISIDは1on1を独自に定義することで、価値のある時間を生み出している。カギとなったのは「言語化」だ。
藤條当社は対話によって課題を解決したり、業務を推進したりすることを行動指針の一つに掲げており、この対話のことを「ダイアログ」と呼んでいます。だから、ISIDの大切にしたい価値観にもぴったりの取り組みでした。
組織のためではなく、自分自身のための時間。問題解決や評価面談とは異なる取り組みの場である「対話の機会」だと位置づけました。
その狙いを込めて、言葉も工夫しました。数字の1ではなく、人間同士、私(I)と私(I)が誠実に協力的に対話するという意味で、表記を「IonI」としつつ「ワンオンワン」と読むことにしました。
1on1を仕組みとして取り入れることで、対話する文化を組織に浸透させる効果も期待できるということだ。
「コミュニケーションは足りている」なんて、勘違いかも
一方、グループで合計21,000人以上のメンバーを抱えるTISは、グループビジョン実現・エンゲージメント向上を目的に、仕事への意義や成長を実感できる組織作りをねらいとして、1on1を取り入れることを決めた。藤原紘子氏が感じていたもどかしさが、その発端の一つだった。
藤原グループビジョンの実現に向けて、社員のエンゲージメントを高めることは重要です。TISではエンゲージメント向上の指標として、社員の「働きがい」に関する調査と各種施策の浸透定着を図るアンケートを実施しています。
その調査とアンケートから「働きがい(エンゲージメント)向上」のために必要な要素を、導き出しました。それが、1.仕事に意義を感じられる、2.他者から認められる・フィードバックを受ける機会がある、3.仕事上の経験の振り返りが成長につながる、4.適正に評価されていると感じる、の4つです。
上記四つの要素を満たしていく上で、藤原氏が感じたのは「コミュニケーションの量と質が不足している」という課題だ。検討の基にした全社アンケートにはネガティブな意見もあり「全部読むのはつらかった……」と振り返る。
藤原調査やアンケートの回答を読んでいると、「そもそも必要な会話ができていないのでは?」「ベースとなる信頼関係ができていないのでは?」と思うことが何度かあったんです。会話できていない相手や基本的な関係性ができていない相手に評価や配置を決められるのは、納得しづらいだろうと思います。
また、メンバーの退職が発生した際の対応で、上司側に対して「このアサインの意図や今後の配置見直し予定について、本人に伝えていましたか?」と聞くと「今後については、明確には伝えられていなかったです……」と言われたこともありました。上司側の考えの背景や意図、今後の見通しなどがタイムリーに伝わっていれば結果が違っていたのでは、と口惜しく感じました。
同社は、大きな組織課題に直面していたというわけではない。一方で、より強い組織を作り上げていくために何ができるのか、こうした事例から徹底して突き詰め、必要な対策を検討している。
課題は見えてきた。一方でそれらはいずれも、一朝一夕に改善を図れるものではない。そこで、まずは中長期的な視点で、手段を検討した。
藤原「働きがい向上」のために必要な要素の多くは対話の量・質と相関があり、頻繁でタイムリーなコミュニケーションや、育成観点のマネジメントが社内には不足しているかもしれない、という仮説を持ちました。「それならば」と、マネジメント手法の1つである1on1の仕組みの全社導入を本格的に検討してみようという話になったんです。
このように、1on1という施策は、あくまで手段の一つである。だが、組織に関するさまざまな課題意識や目的意識について効果を発揮する。だから、この2社のように位置づけを明確に定義することが、質の高い施策実行につながる。
ISIDはメンバーのキャリア形成支援の機会としてマネジメント層との関係性強化に着目。一方、TISはビジョン実現に向けた文脈から、エンゲージメント向上を念頭に置いていた、というわけだ。
目的をしつこく伝えよ。それが浸透の秘訣
異なる背景で導入に至った2社。とはいえ、組織課題の解消施策は、効果が目に見えにくい。藤原氏も「人事本部の中で1on1の導入について議論したとき、やはり直接すぐ数字に結びつかないわりに、コミュニケーションの負荷が大きくかかるのでは?という話になった」と明かす。
どのような創意工夫で、導入や社内浸透といった高いハードルを乗り越えたのだろうか。
ISIDは、メンバー層とマネジメント層の双方が、対話による効果や楽しさ・喜びを実感できるよう、結果の見える化に取り組んでいる。
藤條なぜ今の導入なのか?何を狙いにするのか?どう進めるのか?といった背景や狙いについて、マネジメント層とメンバー層に分けてガイダンスを複数回実施し、まずしっかり伝えることを心がけました。
加えて、1on1施策は完成形ではなく、参加者に定期的なフィードバックをもらい、実施を通じて改善していく方針を明確にしました。
その上で実践の声を集め、私たち人事担当がその成果をまとめ、わかりやすくタイムリーに社内に伝えることを心掛けています。定量的には、メンバーに対して定期的にアンケートを行っています。並行してメンバーの「生の声」という定性的な情報も集めて、社内事例集として開示することも行っています。
TISは導入フェーズで様々な施策を講じたと、実践的な内容について振り返った。
藤原まずは納得感を持って取り組んでもらうために、メンバー層・マネジメント層の双方に目的をしっかりと伝えていきました。特に、長期で効果を見ていくべき仕組みだと説明するために「中長期的な人材育成のための施策である」「モデル企業でも効果を感じるまでに3~5年かかっている」ということを繰り返し伝え、「1on1は組織改善の漢方薬」という例えで理解を促しました。
働き方改革におけるテレワーク推進のためには、意識的なコミュニケーションの仕掛けが必要不可欠である、という文脈で理解してくれた方もいましたね。
経営陣にも協力を仰ぎ、1on1導入の意義や必要性をマネジメント層に対して直接語ってもらいました。しつこいくらいに目的や意義を伝えて回った感じです。
TISでは、その取り組みについて地道に目的を伝えることを徹底してきた結果、理解も広がってきたようだ。運用フェーズでは、社内で1on1を上手く活用して成果につながった話をモデル事例として取り上げ、社内報やメルマガなどで周知することで、効果の可視化につなげている。マネジメント層へのフィードバックも、欠かさず実施している。
組織課題は目に見えにくい。だからこそ、導入目的を現場に浸透させることや、効果を可視化させることが、効果を発揮するのだ。
8割のメンバーが「上司と本音で話せるようになった」
継続的に1on1に取り組んできた2社。どのような変化があったのだろうか。「メンバー、マネージャー双方にポジティブな変化がありました」と語るISIDの藤條氏。導入から約1年で、手応えを感じ始めている。
藤條メンバー層とマネジメント層にそれぞれ、1on1導入後にアンケートを実施しました。
メンバー層では約8割が「上司と本音で話せるようになった」と回答してくれています。他にも、半数以上が「自身の今後の成長について話ができた」「働くうえで大切にしたい自分の価値観や想いを認識できた」と答えてくれており、手応えを実感できました。
「本音で話せる場を提供すること」を目的としていたISIDにとって、まさに狙い通りの結果というところだろう。
マネジメント層も、回答者のうち約9割が「メンバーへの理解が深まった」と回答。次いで、「メンバーの心身の状態を理解できた」「関係性が深まった」「マネ―ジャー自身の成長につながった」という回答も多く寄せられた。
藤條約1年のトライアルでポジティブな反応が見られたので、施策実施を全社に広げました。これからもフィードバックを集めて施策を磨いていくことにより、さらに効果が期待できると思っています。上長との関係構築も含めたエンゲージメント向上を、個人のパフォーマンス向上、そして今後、ビジネスや会社全体の組織力向上にもつなげていきたいと考えています。
一方、すでに3年間継続して取り組んでいるTISでは、個々人の定性的な感覚だけでなく、データという形で着実にインパクトが生まれている。
藤原毎年1回実施しているエンゲージメント関連調査で、「総合的な働きがい」や「適正な評価」という点では高まってきています。また、1on1の満足度自体も着実に上がっていて、手応えを感じますね。
同社の調査結果には驚きを禁じ得ない。主要指標として置いている「総合的な働きがい」「私はTISにおいて適正に評価されている」はいずれも、1on1導入後に目標スコアを達成。「1on1の満足度」「最終評価の納得度」も着実に改善している。メンバー層が1on1に期待する効果の中では、「傾聴」「内省効果」「関係性強化」といった項目で期待を充たしている。
さらに、社内調査においては「1on1の実施率」と「総合的な働きがい」の間に相関関係があることも確認された。
藤原1on1施策の導入時に明確にした目的に対し、実際にどんな変化があったかを示し続けることが重要と考えています。今後もPCDAサイクルをしっかり回して成果や課題を見える化し、メンバーと組織の成長につなげていきたいです。
仕事において対話の場は様々なシチュエーションがある。2社の事例では、1on1では上司と部下の縦の関係性をカバーしているようだ。年単位で継続している2社には早速組織課題の改善傾向が現れており、かつ新たな課題も見えてきている。
だがもちろん、重要なのは「成果を焦らないこと」だ。効果が見えたといっても、「現状の課題が明らかになった」「すぐに改善できるところが改善できた」ということと、「離職率が下がった」「エンゲージメント調査結果が向上した」こと、さらに言えば「対話型組織が成立してきた」「事業の目標達成に効果があった」ということの間には大きな差がある。
数年単位での大きな目標を掲げつつ、短期目線での効果をしっかり積み上げていく。そんな意識こそが、最も重要になる。この2社も、短期での効果測定こそしているが、見ているのは遠い先、数年先の組織の未来なのだ。
デメリットを大きく上回る、組織貢献ポテンシャルは明らか
目的や施策に違いはあれど、継続的な取り組みで効果が目に見えるようになった2社。だが全社的な取り組みであるがゆえに、ともに現場への理解の浸透には苦戦したそうだ。いかにして乗り越えたのだろうか。
「正直、社内からネガティブな声はありましたか?」
こんな質問に対し、ISIDの田中有希氏とTISの藤原氏が語り出す。
田中懸念の声はもちろんあります。忙しい時間を1on1でのダイアログに割き、それでどのような効果が得られるのか、通常業務の時間を犠牲にしてまでやる必要があるのか、という声です。
導入前は説明会を開いて目的や位置づけを丁寧に説明したり、導入後は個別にフォローアップの機会を設けたりしていました。また、トライアルを通じた効果や課題の声を集め、集計・分析・公開するサイクルを大切にしてきました。
藤原「忙しい中でさらに1on1なんて大変だ」という事業部門からの声は、当社でも多く寄せられました。だからこそ、きちんと必要性や意義を伝えることを徹底しました。一方で運用面の負担については、『TeamUp』を導入することである程度軽減できたと思います。
人と人が、人として対峙して対話するわけなので、相性の合う・合わないがボトルネックとなることはどうしてもありました。そうした問題については、仕組みで一元的に解決するというより個別に問題を解きほぐし対処しています。
1on1は人事の熱量だけが高ければ成立するものではない。実際に取り組むメンバー層やマネジメント層が協働して意義のある時間にする、というスタンスが不可欠だ。そのために、意義や目的を泥臭く伝え続けることが、理解を得る近道なのだろう。
上司側に対しても、両社ともサポートは強く意識している。
田中1on1で大切なのは、本音で話せる関係性を作ることだと考えています。そのためにマネジメント層の協力が必須です。研修を通して効果的な話し方や聞き方を学び、マネジメント層の一人ひとりも1on1を実施しながら共に学んでいくという文化を大切にしています。
合わせて、1on1の主体であるメンバーへのアプローチが必要だと考えています。「対話の機会を、自分のためにどう役立てられそうか?」と考え続けることが重要です。自分のペースで考えるためのワークシートの提供や、同僚同士で意義や感じ方を共有できるようなプログラムの企画をしています。
また、社内のコミュニケーションツールとして使用しているTeamsで、1on1用のコミュニティを設けて質問窓口を作り、寄せられた声に対して人事担当が答えるようにしています。
藤原上司向けのサポートと一口にいっても、様々な状況の組織があります。そのため、それぞれの組織ごとの課題に応じて具体的なアクションを取ることができるように、サーベイ結果を持って人事担当が直接お邪魔し、支援する取り組みも行っています。
また、上司向けのトレーニングでは、対話の質を高めるためのマインド&スキルセットを扱っていますが、その場はマネージャー同士の横の連携で悩みを共有・相談できる良い機会にもなっているようです。
こうした点だけを見れば、導入と浸透には苦労が付きまとうように見えるかもしれない。だが、そんなデメリットを大きく超える効果が、間違いなくある。そう感じているから、登壇した4人の表情は常に明るい。
終盤にTISの覚野千春氏が強調したのは、組織開発面での貢献。中長期的な観点では、この取り組みが特に価値を高めていきそうだ。
覚野各部門に対して、多面的なサーベイ結果に基づいたフィードバックをしています。
前出の社員の「働きがい」に関する調査と各種施策の浸透定着を計るアンケートに加えて、組織健康度観点の調査、労働時間や離職情報などの多面的なアセスメントの結果ですね。「こういう観点を1on1に盛り込むことで追加的な取り組みをしなくても改善できるかもしれない」といった話をしています。
1on1は一朝一夕の施策ではなく、全社を巻き込む必要のある、極めて長期的な取り組みだ。特に、初期フェーズでは、現場の上司と部下のマインドセット醸成と具体的な対話スキルの装着が肝だ。そうして浸透していく中では、改善をどれだけ広げていけるかが試されていく。
この2社の組織が、これからどのように変革を遂げていくのか、そして事業の進化に影響を及ぼしていくのか。楽しみで仕方がない。
こちらの記事は2022年05月26日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
村尾 唯
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