連載HACKの瞬間
「一兆円企業を創るまで、突き抜けたなんて思えない」──日本で最も多くの「転職」を生み出すROXX中嶋氏が走り続けられる理由を、CROOZ執行役員の諸戸氏が探る(連載:HACKの瞬間 第3回)
今年11月、SHOPLISTを筆頭にEC事業を展開するCROOZ株式会社が採算度外視、クルーズの紹介・説明会も一切なし、学生に本気で事業開発を学んでもらうための短期インターンシップを開催する。
現在は、2ヶ月後のプログラム開始に向け、メンタリングを務める若手起業家事業家達を、彼らのことを学生時代から知るCROOZ執行役員の諸戸友氏が同一のテーマで1人ずつ掘り下げていく対談企画が進行中だ。
全5回に渡る対談のテーマは、インターン名にもなっている“HACK”。「突き抜けた瞬間」との意味だ。
第3回目となる今回のゲストは、人材紹介会社向けクラウド求人プラットフォーム『agent bank』を運営 する株式会社ROXXの代表・中嶋 汰朗氏。
今回対談する二人の出会いは、中嶋氏がまだ学生起業家だった5年ほど前。当時を振り返って諸戸氏は「いつも革ジャンを着てロックで熱いプレゼンをする彼に惹かれて仕事を依頼し、後に出資もした」と述べている。付き合いの長い両者だが、じっくりと腰を据えて対談するのは今回が初めてだ。
- TEXT BY RYOYA KUDAKA
- PHOTO BY KENGO HINO
クルーズ投資史上最速の意思決定を引き出した5年前
諸戸革ジャンにギター。さすが初めて会ったときからブレないね。
中嶋このスタイルは一生変わらないですよ(笑)。
諸戸中嶋くんは5年前の当時クルーズが『XYZ』という名でインターンやっていたときにメンターとして参加してくれて、多分その時くらいからの付き合いだよね。メンターだけじゃなくて、あまりにも当時のうちの会社説明スライドとかダサかったから、そういうの全部中嶋くんがカッコ良くしてくれたよね。うちはケチだったからかなり金額たたいたと思うけど(笑)。
中嶋そうそう、昔からデザインにはこだわりがあったから、なかなか手直しのしがいのあるスライドでした(笑)。当時は起業したてで大学にも通っていたので、とにかく日銭稼ぐのに必死でしたからね。
諸戸あの頃から中嶋くんはハングリーというか、貪欲というか、他の若手起業家の中でも群を抜いていたね。この前noteにも書いたけど、うちの小渕さんも起業したばかりの頃に日銭を稼ぐために何でもやる姿勢はホント大事だって言ってた。そんな小渕さんが中嶋くんに初めて会ったときに「あの革ジャンは絶対に伸びる」って言って、そのまま出資まで決めちゃったもんね。多分クルーズ投資史上最速の意思決定。
中嶋小渕さんには頭上がらないですね(笑)。
久々の再会に旧交を温めた後、話は早速本題に移った。第1回の小川氏の「突き抜けた瞬間」の話と共に、今回の対談のテーマについて語り始めた諸戸氏。それに対し、テーマを聞くや否や即座に「自分はまだ突き抜けていない」のだと中嶋氏は答えた。
対談の出鼻でテーマの変更を余儀なくされたかに思われたが、むしろ諸戸氏は身を乗り出して興味津々に話の深ぼりを開始。こうして今回の対談は、2度の社名変更とピボット、資金ショートも経験した後、今や日本で最も多くの「転職」を生み出す企業になってもなお、上を目指し続ける中嶋氏の強さの秘訣に焦点が当てられた。
「俺なんかまだ突き抜けていない」の理由
諸戸僕から見れば、同世代の中では一線を画しているように思うのだけど、まだ自分では突き抜けていないと感じるんだ?
中嶋誰と比べるかですよね。それによって、危機感や焦りが変わってくる。
起業家が競争しているのは市場の全ての企業なわけで、学生起業家という括りで見てどっちが優れているか議論しても仕方ない。数十億の資金調達はけして珍しいことではないし売上数百~数千の経営をされている経営者もたくさんいる。それから今メガベンチャーの社長をしている方の過去の姿など、そうした先輩方と比べたら全然大したことはないと思います。すみません、テーマには沿わないですけど。
諸戸なるほど。いや構わないよ。面白い。ちなみに、逆にどこまで行ったら突き抜けたなって感じるんだろう?
中嶋時価総額1兆円辺りまで行ったらそう言えるかもしれないですね。まだROXXは売上が10億円に手が届いたという段階ですけど、そこから見たら100億もまだ10倍。とはいえ、100億円規模の会社って無数にあるし、1,000億だってゴロゴロいる。1,000億まで行っても、そこから成長し続けなければ突き抜けているとはいえないと思う。そのことにすごい危機感を覚えています。
諸戸自分たちよりずっと上を見続けて、まだまだ足りないの精神で頑張るってことだよね。修羅の道だな(笑)。あえて高みにいる人たちと比べる理由はなんだろう。
中嶋なんでしょうね。そういう性分なのかもしれません。起業家を志すまでバンドをやっていたのですが、一発屋で終わるのはダサいと思っているんですよね(笑)。メジャーデビュー、会社で言えば上場したら勢いがなくなったねみたいなことにもしたくない。
既に何度も資金調達を経験し、事業も右肩上がりで伸ばしている中嶋氏だが、現在の自分より遥か先を進む人たちと比べ、己の未熟さに危機を感じて焦っている。聞く人によってはハッとさせられる発言だったのではないだろうか。
どんな環境に属しているかが違いを生み出す
大量の書籍やSNSによる情報を通じて誰もが自分の遥か先を行く人たちを毎日のように目にする昨今、各分野の突き抜けた人たちの煌びやかな活躍ぶりは嫌でも目に付く。しかし、誰もが中嶋氏のようにそういう人々とのギャップに焦りを感じるわけではないだろう。一体何が彼のその強烈な焦りを生み出す違いなのか。諸戸氏はそこが気になったようだ。
諸戸何が他の人たちとの違いなんだろうね。その焦りはどこから生まれてくるんだろう。
中嶋間違いなく周りの環境ですよね。株主の方であったり、小渕社長や諸戸さんみたいに昔からお世話になっている方であったり、そういうすぐ身近な人が自分より遥かに先を行って、デカイことをやっていると「これじゃまずいな」と嫌でも差を感じてしまう。そういう環境に身を置いていることが大事。「SCOUTER」のリリース以前はまだそういうコミュニティの中にいませんでした。
諸戸生まれた家がたまたま親族一同東大に行くような家庭だと、それが当たり前みたいになるというのと似た感じだろうね。周囲の当たり前が違うと自ずと基準が高くなる。
中嶋ここまで行かなきゃ喜べない。それどころか恥ずかしい、くらいの勢いで周りに追いつき追い越そうとするんですよね。いくら「すごいですね!」と言われても腹の底から「そんなこと全然ないです…」と思えてしまう。
諸戸数年前と比べたらかなり良くなっているんだろうけど、それでも全然まだまだだと。中嶋君にとっては付き合う人が全てなんだ。
中嶋はい、過去と比べて良くなってるのって普通というか、ただ逆に言えば環境が一番だと思います。
別にどんな人と付き合うのも悪いとは思わないですけど、僕はぬるいと感じる環境にいるとすぐ「このくらいでいいか」となってしまう弱い人間なので、慢心しないような環境に身を置いています。「なんで俺ってこんなレベルなんだろう」と何回打ちひしがれ、心をへし折られるか。厳しいかもしれませんが、大事なことじゃないですかね。
諸戸同意するけど、ストイックだよなあ(笑)。
自分の属するコミュニティ、最もよく接している人々の考え方や視座が今の自分の在り方に影響しているというのは読者にとっても頷ける話ではないだろうか。しかし、今いるコミュニティを抜け出すのは容易ではないと感じている方もいるかもしれない。抜け出せたとしても、どのようにして中嶋氏のように視座の高い相手に出会うことができるのか。
出会える人のレベルを上げたいなら、名乗りを上げよ
起業家になりたい人にとっては当然、一流経営者と出会える機会は喉から手が出るほど欲しいものだろう。しかし、経営者として大きく活躍する人であればあるほど一様に忙しく、また彼らの時間を欲する人が多くなるのも事実だ。彼らに会ってもらい、さらには長く付き合えるようになるにはどうすればよいのだろうか?その答えに対し中嶋氏は、まず「名乗りを上げよ」と言う。
諸戸今の若い人たちが中嶋くんのここまでの話を聞いて、自分も環境を変えなきゃと思ったとして、どうすればいいんだろう?
中嶋難しいですけど、1つは自ら名乗りを上げることですね。そうしないと始まらない。起業したいと言っている人よりは、既に起業している人の方が経営者の方に会ってもらいやすい。サービスアイデアがゼロの人よりは、プロダクトをリリースしている人の方が出会いやすい。
最初に会ってもらう時にはやはりある程度の行動量がないとどうしても難しいと思いますね。動き出して間違っていることがわかったらまたやり直せばいいんですから、学生の皆さんにはどんどん挑戦していって欲しいです。
ついでに、動いていない人は会ってもらいにくいだけでなく、仮に経営者の方に出会えたとしても何も良いアドバイスを吸収できないと思います。動き出している人でないとリアルな課題がわからないので。
諸戸たしかに、起業って頭で考えてるときが一番楽しくて、実際始めてから予想だにしない壁や困難が襲いかかってくるもんね。
中嶋そうですね、一歩ずつ目の前のことをやって行くしかないですね。早い遅いはあれど、一気に突き抜けるなんてことはないと思います。目の前のことをしっかりやって、レベルが上がるたび、先を行く経営者に会える機会も増える。会えたら、次また会う時また違う姿を見せられるように頑張る。2回目、3回目また会ってもらうにはどうすればいいだろうと考え、高い変化率を意識して自分を変えていく。この繰り返しです。
諸戸例えば今回のイベントのプロジェクトオーナーを務めている筧くんがまさにそうだよね。どんな経営者にも物怖じせずとりあえず会えるか聞いてみるとか、企画を提案してみるとかそういうことができている。
中嶋どうしよう、どうしようと言い続けて、最初の一歩を踏み出せない方も多い中ですごいことだなと思いますね。
アドバイスする立場としても、相手が結局は行動に移さないだろうと感じられれば真面目にフィードバックする気にはならないだろう。「起業家になりたい」と口で言うだけでなく、まずは動き出してみる。地道なことを積み上げていく。こういったことができているからこそ、今の中嶋氏がある。
「経営者になるべくして生まれてきたような人だよね」
何かしようと思い立ったが、最初の一歩を踏み出せない。よくある話だ。これも、中嶋氏の言うように、周りの環境から影響を受けてのことなのかもしれない。しかし、どうやらそれだけではないとも言えそうだ。中嶋氏にしかない特性が強烈に彼の背中を押し続けているのではないか。
諸戸昔から中嶋くんを見てきて、ここがすごいなというか、変わってるなと思うのは、起業してから1日も欠かさず絶えず仕事のことを考えているところだと思う。そんな風に見える。
中嶋どこにいても頭の中は休まらないですね。僕は割と根がネガティブで、さっき自分はまだまだだって言ったように自己肯定感も低いんですよ。目の前のことでいつもどうしようどうしようと不安で余裕がない。最後はどうにかなると思ってはいるんですけど。
いつも僕の10倍先を行く人から見たら何一つなし得ていないと焦って、そうしたら落ち着いていられなくなるんですね。だからこそ早く行動するし、厳しくフィードバックもする。資金調達だったら投資家の方と会う時は誰より準備するし、資料を読み込む。
諸戸なるほどね。不安がそうさせているわけだ。一般から見れば、特殊な性格だと思うな。これからまだまだ走り続けて行くんだろうね。
中嶋止まったら死ぬと思ってますから。
諸戸たしかそんな魚いたね(笑)。でもそれって、楽しいの?
中嶋いや、死ぬほどキツイですよ。ですけど、やっぱりお客さんから「このサービスいいね」と言っていただけると嬉しい。それに、その瞬間は苦しいだけだとして、数年後には最高の笑い話になると知っているので、僕は苦しくても行動し続けます。「あの時死ぬ気でやったことって今なら片手でできるよね」みたいになったら仲間と盛り上がれます。
僕のストレス耐性は普通じゃないかもしれないですけど、誰しも適度なストレスは人生の張りになるんじゃないかな。
諸戸ここまでの話を聞いていたら、うちの小渕さん(CROOZ代表・小渕 宏二氏)ととても似ているなと。中嶋くんはまさに経営者になるべくして生まれてきたような人だなと思った。そんな自覚はないのかもしれないけど、発言していることが経営者以外に道がないという感じなんだよね。
諸戸氏によると、小渕氏は、プライベートで訪れた沖縄の海を眺めながら「ここで船でも買ってこのまま一生気ままに暮らすのもありだよなぁ」と言っていた翌日、役員を全員集め鬼気迫る顔で「俺たちは1兆円企業を目指すぞ」と宣言したという。それが経営者という生き物なのかもしれない。
底抜けに元気で俺の熱量に負けないくらい
熱い学生と出会いたい
今回のインターンシップ、中嶋氏をはじめメンターを務める5人の若手起業家たちによるドラフト形式でチームが選抜される。そして、彼らがプログラム期間中毎日参加者の事業アイディアに対しフィードバックをくれる。ここまで、熱く自身の考え方を語ってくれた中嶋氏はどんな学生チームをメンタリングしたいと考えているのだろうか。
中嶋僕の熱量に対して食いついて来てくれる人と出会えることを望んでいます。素直で底抜けの元気がある人。プログラムが終わる頃には「これを乗り越えたんだからもう何でも大丈夫」って思ってもらえるくらいの勢いで行くので踏ん張って欲しいですね。
諸戸中嶋くんチームはかなりハードになりそうだけど、学生にとっては成長のための絶好の機会になりそうだね。
今回5年越しに話して、中嶋くんの強さの秘訣がわかった気がする。人並み外れた行動力や細部まで突き詰める執念の本質部分が覗けたようで興味深かった。
11月のイベントで中嶋くんの熱さが学生とどんな化学反応を起こすのかと想像すると今からすごくワクワクするよ。熱量高い学生を集めるから楽しみにしてて!
今回の対談で、熱を込めて自分の考え方を言葉にしてくれた中嶋氏。彼はどこまで行っても「俺なんてまだまだだ」と意気込み、全力で走り続けていくのだろう。そんな彼のフィードバックは学生たちに何をもたらすのか。
11月に行われるCROOZのガチンコ事業開発インターン。中嶋氏にも負けない熱量を持っていると自負する学生は挑戦してみてはいかがだろうか。
今回の対談記事で撮影協力をしてくださった企業紹介
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【2023年卒】CROOZ INTERNSHIP 2021 ”HACK”
こちらの記事は2021年09月15日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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沖縄出身の大学生。21歳。個人・法人の専属ライターとして中期的に発信をサポートするパーソナルライター個人のnoteはこれまでに約7.5万ビュー。趣味は読書。
1992年 広島県出身、東京都在住フォトグラファー。大学卒業後大手住宅設備メーカーに勤務。4年ほど営業として勤務しつつパラレルキャリアとして建築や広報広告事業のフォトグラファーとして活動。
2018年、結婚を機に上京しフリーのフォトグラファーとして独立。現在はWEBや広告等でポートレートを中心に撮影。またライフワークとして一般のご家族や恋人を撮影し、人々の繋がりをテーマに写真を残している。
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