飲食店向け受発注サービス、グローバル学生向け就活支援のスタートアップが登場──FastGrow Pitchレポート
「イノベーターの成長を支援し、未来社会を共創する」をミッションに掲げるFastGrowが、「この会社、将来大きなイノベーションを興しそうだ!」と注目するスタートアップをお呼びして、毎週木曜朝7時にオンライン開催する「FastGrow Pitch」。
登壇するスタートアップが目指すビジョンや事業内容、創業ストーリー、どんな仲間を探しているのかなどをピッチ形式で語るイベントだ。
本記事では、ピッチの模様をダイジェスト形式でお届けする。登壇したのは、クロスマート株式会社、株式会社SPeakの2社(登壇順)だ。
- TEXT BY OHATA TOMOKO
- EDIT BY RYOTARO WASHIO
クロスマート
受発注業務をデジタル化し、食品流通を変革する
最初に登壇したのは、受発注サービス『クロスオーダー』を開発・運営している、クロスマート代表取締役の寺田佳史氏。
『クロスオーダー』は、飲食店が使用する食材の受発注に関する課題を解決するサービスだ。
寺田食材を発注する店舗と商品を納品する卸売業者の間では、未だにFAXでのやり取りが主流。アナログで非効率なやり取りは、長時間労働や発注・納品ミスの原因にもなっています。
日本には飲食店が約60万店舗存在し、そのほとんどが食材の調達を卸売業者に頼っています。つまり、飲食店と卸売業者間の受発注に関する課題を解決しなければ、飲食産業は変わらない。そう考え、『クロスオーダー』を開発しました。
『クロスオーダー』は、LINEを活用した受発注サービスだ。
飲食店の運営者は、LINEで『クロスオーダー』を友だち追加すると、すぐに卸売業者との受発注に関するやり取りが可能になる。さらに、卸売業者から特価品や訳あり品などの情報が受け取れるようになり、コストカットにもつながる。初期費用や月額費用も不要だ。
LINEのみならず、FAX-OCR(手書きのFAXを自動で認識し、データ化するシステム)にも対応しており、店舗はより使いやすい発注方法を選択できる。
また、『クロスオーダー』を導入した卸売業者は、従来はFAXで届いていた注文をデジタルな情報として受け取れるようになり、管理コストが大幅に低減する。
競合優位性に関して、寺田氏は「ポジショニング」に特徴があると語る。
寺田受発注領域には、一部上場企業であるインフォマートが先行して参入していますが、主なターゲットは大手チェーン店。一方、インフォマートが提供するサービスを利用していない個人店の発注は、未だにFAXに頼っている。
卸売業者の視点で考えると、全ての取引先とのやり取りをDXできた方が効率がいい。しかし、個人店とのやり取りはアナログなまま。そこで、チェーン店の受発注DXはインフォマートにお任せし、個人店のDXを我々が担当する。そうしたポジションを取り、他社と協力する形で飲食業界全体のDXを推し進めようと考えたんです。
2021年12月時点で、約1.5万店舗が『クロスオーダー』を利用している。今後は、業務用食品のマーケットプレイスを立ち上げることも検討しているという。
寺田我々の強みは、全国にある大手卸売業者を顧客に持つこと。さらに、導入店舗数も急速に増えています。これまでに積み上げてきた既存のアセットを活用して、業務用食品に特化したマーケットプレイスを立ち上げたい。
すでに、サンプル製品などを販売しており、販売実績も蓄積されているので、来年は本格的にマーケットプレイスビジネスに挑みたいですね。
2021年2月にシリーズAで2.7億円を調達し、成長を遂げている同社。「受発注領域にご興味がある方は、ぜひご連絡ください」と参加者に呼びかけた。
採用情報
SPeak
グローバル学生の就活を支援し、インクルーシブな社会を実現する
続いて登壇したのは、SPeak代表取締役の唐橋宗三氏。
同社は、グローバルなバックグラウンドを持つ学生向け就活オンラインメディア&コミュニティ『JPort Journal』、企業とグローバル学生をつなぐダイレクトリクルーティングサービス『JPort Match』を運営している。
「優秀なグローバル学生でも就活が難しい現実を目の当たりにした」ことから、グローバル学生の就活に注目したという。
唐橋アメリカの理系トップ大学を卒業した後、慶應義塾大学の大学院に進学した、マレーシア人留学生と知り合いました。彼は日本語、英語、マレーシア語を完璧に操る優秀な人だったのですが、大学院を出た後、あまり知らない企業に勤めた後、メンタルを壊して帰国してしまった。理由を聞くと、就活のシステムわかりづらかったから。
この話を聞いた時に『優秀な人材が日本の大学に来ているにもかかわらず、就職できないのは日本にとっての大きな損失なのではないか』と感じたんです。実際、グローバル学生の就職率は35%。自分自身も異国の地へ飛び出して、留学した経験から日本をもっとボーダーレスにしなくてはいけないと感じ、この現状を変えるために、起業に至りました。
留学生が異国の地で職を得る際、ボトルネックになるのが十分な情報を得られないこと。そこで、同社は留学生をはじめとするグローバルなバックグラウンドを持つ学生が就活に関する情報を英語・日本語で得る場として『JPort Journal』を提供している。
ユーザーは日本で働いた経験を持つ留学生やバイリンガル日本国籍の先輩に就活に関する質問をできる他、記事や動画などで就活にまつわる情報を得られる。また、就活対策オンラインイベントやワークショップなども開催している。
2021年12月時点で、3,000名以上のグローバルなバックグラウンドを持つ外国籍留学生や日本国籍学生が登録。さらに『JPort Match』を利用すれば、グローバル新卒採用に積極的な企業からのオファーを受け取れるため、簡単に就職先候補を見つけられる。
業種・業界を問わず、海外展開している企業やダイバーシティーを重視する多くの企業が、優秀なグローバルな背景を持つ学生を求めて『JPort Match』を活用している。
唐橋特徴は、時期を問わず企業の人事担当者とグローバル学生がつながれること。留学生の価値観に合わせて、このような仕様にしています。日本は新卒一括採用というシステムを取り入れており、企業と学生がつながれるのは一定期間だけ。しかし、世界に目を向けると一年を通していつでも企業とつながれることが一般的です。
そんな状況の中、日本でも、人材獲得競争の流れもあり、採用活動の早期化や通年採用に取り組む企業が増えつつあります。そこで、企業と年間ライセンス契約を結ぶことで、企業の人事担当者とグローバル学生が一年中つながれる仕組みを構築しています。
さらに、今後の展望として「グローバル学生の学生時代から社会人生活、日本での生活を支える『信用』にまつわる根深い課題を解決していきたい」と語る。
唐橋ゴールドマン・サックスの日本法人で働いている中国人の友達がいるのですが、新卒1、2年目の時にクレジットカードを作ろうとしたところ、断られてしまったそうです。また、外国人であることを理由に賃貸契約が結べず、住みたいと思った場所に住めないといった話はあまりにも頻繁に発生しています。
こういった事象の原因は、グローバルなバックグラウンドを持つ人材のキャリアや信用が可視化されていないことだと考えています。今後はファイナンス領域など、信用の可視化につながる事業も展開していきたいです。
最終的には、グローバル市場も狙っていきたいと語る同社。「私たちは日本を、そして世界をアップデートする事業に取り組んでいます。関心がある方は、ぜひ一度カジュアルにお話しましょう」と語り、ピッチを締めくくった。
採用情報
今後も毎週木曜朝7時の「FastGrow Pitch」では、注目スタートアップが登壇し、自ら事業や組織について語る機会をお届けしていく。ぜひチェックしてほしい。
こちらの記事は2022年03月24日に公開しており、
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執筆
大畑 朋子
1999年、神奈川県出身。2020年11月よりinquireに所属し、編集アシスタント業務を担当。株式会社INFINITY AGENTSにて、SNSマーケティングを行う。関心はビジネス、キャリアなど。
編集
鷲尾 諒太郎
1990年生、富山県出身。早稲田大学文化構想学部卒。新卒で株式会社リクルートジョブズに入社し、新卒採用などを担当。株式会社Loco Partnersを経て、フリーランスとして独立。複数の企業の採用支援などを行いながら、ライター・編集者としても活動。興味範囲は音楽や映画などのカルチャーや思想・哲学など。趣味ははしご酒と銭湯巡り。
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