若手マネジャー・バイブル、集めました。
マネジメントの悩みは、LINE二木氏や元ハウテレ長村氏など「経験者」4名から盗め
「事業は人なり」経営の神様とも称される松下幸之助の言葉だ。事業を創るのも、会社を大きくするのも、そこには「人」がいる。そんな「人」に焦点を当て、次代を担う若きイノベーターたちをピックアップ。成長のエッセンスをお届けする。
第1回は、事業成長のカギを握るプロダクトマネジャーに焦点を当て、FastGrowが注目する5名のPdM・若手キーマンをピックアップさせていただいた。そして前回は、「スタートアップ経営」というテーマのもと、会計やオペレーション、組織づくりなど、経営の現場で役立つノウハウ・情報を発信するプロフェッショナルを10名紹介した。
第3弾となる今回は、「若手ベンチャー・マネジャー」を取り上げる。プレイヤーとして着実に成果を残し、マネジャーに抜擢された若手ベンチャーパーソンの悩みのタネ。「マネジメント」に頭を抱えている方も少なくないだろう。そんな方のために、ノウハウやtipsをまとめた。
プレイヤーとしてはトップレベル。でもマネジャーとしては……
「トップの営業成績、年間MVPを獲得し、最年少マネジャーに」
「入社3年目でリーダーに抜擢。異例のスピード昇進で、同期や年上が部下に」
少人数で、実力が物をいう世界。FastGrowが取材してきた中にも、成果を出して世間一般よりも圧倒的に早くマネジャーに昇格するケースを多く見てきた。まさにこの記事を読んでいるあなたも、そんな1人ではないだろうか?
ただ、プレイヤーとして大きな成果を残したベンチャーパーソンに立ちはだかる「壁」がある。いや、むしろ大きな成果を残した方に”こそ”、襲いかかる試練と言えるかもしれない。それが「マネジメント」だ。
「プレイヤー」と「マネジャー」はまったくの別物。今をときめく赤川 隼一氏(株式会社ミラティブ 代表取締役社長)も、その壁に悩まされた人物の1人だ。新卒でDeNAに入社、半年で最年少マネジャーに昇格した。1年目からずば抜けた成績を叩き出していたものの、マネジャーとして率いたチームの雰囲気は最悪で、「メンバーの目標は毎月未達で、僕個人の売上でなんとかチームの目標を達成しているような状況」だったと言う。
最年少でのマネージャー就任は、僕を天狗にしました。『なんで売れないんですか?』と部署のメンバーに詰め寄るようなひどいマネジメントばかりを繰り返していたので、なかなか結果が付いてこなくて
しかしマネジャーとして成果が出ていないからといって、絶望することはない。赤川氏をはじめ、多くのトッププレイヤーたちもその壁を乗り越えてきた。そして今回は、その経験やノウハウをお届けすべく、「マネジメントで悩む方に、参考にしてほしいマネジャー」「重要なエッセンスを発信するビジネスパーソン」を、勝手ながらピックアップさせていただいた。
「メンバーに愛を均等に注ぐことが出来るか?」
野田 克樹(株式会社グッドパッチ Design Div. UX Design Lead)
現在進行形で苦戦している若手マネジャーにまずおすすめしたいのが、グッドパッチでUXデザインチームをマネジャーとして率いる野田 克樹氏。
人は気持ちのいいところだけを見るバイアスがあるので、どうしても自分に似た人に目が行くものだ。そのバイアスをメタ認知し、メンバーに愛を均等に注ぐことが出来るか?がマネージャーとして重要なのだと思う。
簡単に聞こえるが、実際に取り組むのは非常に難しい。この言葉の裏には、当然ながら様々な苦労と努力があることは言うまでもない。そんな彼も「最年少マネジャー」の1人だ。
2017年4月にプロジェクトマネジャー / UXデザイナーとして新卒入社後、新規事業の立ち上げに携わる。入社2年目には半期社内MVPを受賞。順調に成果を挙げ、2019年6月にグッドパッチ史上最年少マネジャーに就任した。
その軌跡と、マネジャーとしての経験や学びをナレッジとして集約したのが、「デザイン会社での最年少マネージャーとしての一年を振り返る」である。上述した愛のあるマネジメントに、意思決定のスピードについて、そして若手マネジャーなら気になるところである「スキル不足を補う方法」など、身に染みる体験談が記されている。さらには、「マネジメントに、緩急をつける」「二人目に踊る仲間をいかに作るか」といったtipsも。Twitterでも日常的なマネジメント課題やノウハウをシェアしているので、要チェックだ。
マネジメントやってて思うのは、些細な違和感も無視すると後々大きな火となって降りかかることが多い。だからメンバーの違和感を早急に察知して解像度を上げる引き出すコミュニケーションと、火が大きくなる前の速攻解決がキモだなと。大きくなった火は気づいやすいが消すには手遅れなんですよね。
— かつきち (@ktknd) April 27, 2020
おすすめの1記事、野田氏のマスターピース
- マネジャー昇進のきっかけは「上司を救いたかった」から?2レイヤー上の上司の視座や目的から自分の行動を逆算する
- 目標は大事。でもメンバーはその目標を「自分ごと化」できているか?
- 若手マネジャーのスキル不足、補うには「傾聴力」と「質問力」
「あなたに興味があります、というメッセージ」
白井 恵里(株式会社メンバーズ メンバーズデータアドベンチャーカンパニー カンパニー社長)
続いては若くして子会社社長を務める、白井 恵里氏だ。先日公開したFastGrowでのインタビュー記事は、SNSでの反響も大きかった。
東京大学文学部を7年かけて卒業後、株式会社メンバーズに入社。大手企業のオウンドメディア運用、Web広告プランニング、ディレクション業務など幅広い業務に従事した後、新卒3年目で子会社立ち上げ、株式会社メンバーズデータアドベンチャーの代表取締役に就任した気鋭の女性経営者。現在は親会社のカンパニー制移行に伴い、カンパニー長として一社をマネジメントしている。
彼女が書いたnote「半期表彰をとるメンティーが育つメンターの心得」は、「私がリーダーを務めていたチーム3人全員が半期個人表彰を取った」と実績が示しているように、効果的なマネジメント手法が記されている。部下の心理を丁寧に把握し、潜在的な能力を発揮させるよう、あらゆる角度からメンタリングしていることが特徴的だ。プレイヤーとしてコトに向き合うのは得意だが、人を束ねチームで成果を出すことが苦手だ、という若手マネジャーには、ぜひ実践してみてほしい内容となっている。
おすすめの1記事、白井氏のマスターピース
- 頼られる側(メンター)にもメリットがあると伝えると、頼りやすい
- 「発言は、何度でも撤回してね。」その言葉が、部下の本音を引き出す
「ベンチャー・マネジャーのための実務マニュアル」
長村 禎庸(EVeM MANAGEMENT ACADEMIAファウンダー)
3人目はすでにご存知の方も多いだろう。複数のベンチャー企業の成長をリードした実践知をまとめあげた「【スライド約300枚】ベンチャーマネージャーのマニュアル」著者、長村 禎庸氏だ。
新卒リクルートに入社後、株式会社ディー・エヌ・エーに転職。子会社取締役や、採用、経営企画マネージャーなどを担当。株式会社ぺロリ出向後、社長室長兼人事部長として、ぺロリの事業・組織の拡大に貢献。その後転職したハウテレビジョンでは、取締役COOとして同社のマザーズ上場の大きな力となった。
そんな長村氏によるnote、「これ読んでみて!全部書いてるから!」と言って渡せる”マニュアル”がコンセプトだという。組織も若く、事業や環境変化の激しいスタートアップ・ベンチャーがまさに求めていたものではないだろうか。
良いベンチャーマネージャーがいるどうかでベンチャー企業の成否は変わると言っても過言ではありません。
マネジャーの役割から、上司とのコミュニケーション、目標・KPI設定の方法など非常に細かく記されており、まさに「総論だけではなく各論に突っ込んだ、ベンチャー企業のマネージャーのための”実務マニュアル”」だ。まだ読んでいない方は、これを機にぜひ読んでみてはいかがだろうか。
おすすめの1記事、長村氏のマスターピース
- マネジメントとは、総合格闘技である。あらゆるスキルを適切な場面で運用せよ
- ”4つ”のWillタイプに応じて適切なアドバイスを。あなたの部下は何タイプ?
- 業務「だけ」を渡さない。権限設計をし、「権限とセット」で渡すべし
「画一的な方法で管理しない」
二木 祥平 (LINE株式会社 執行役員)
最後にご紹介するのが、当時29歳でLINE最年少役員となった二木 祥平氏だ。
新卒でリクルートに入社。1年目から80人ほどのプロジェクトリーダーを経験した後、2015年7月、LINE株式会社へ入社。2019年に最年少執行役員に就任した。順風満帆に見える彼も、当時マネジメントで失敗を重ねたという。
そんな彼は、なぜ日本を代表するITベンチャー企業でスピード出世し、数多くの社員をまとめ上げる立場を築くことができたのか?そこにはマネジメント、そして仕事の本質が垣間見える。
一緒に仕事をしているのは人なんだから、画一的な方法で管理しようとするんじゃなく、一人一人の顔を見て、その人のクセに合わせるという点では何ら変わりません。
「ミーティングのアジェンダに「プライベートシェア」っていう雑談コーナーを入れる」や、「解決できないジレンマはない」といった意思決定術など、踏み込んだナレッジも若手マネジャー必見だ。
そして何より、周囲が「優秀で何よりも人格者」「偉い人だけどそれを感じさせないほどにいい人」と語るほど人間性に優れているという。マネジメントだけでなく、キャリアの参考としてもロールモデルとなり得るだろう。
二木さんのインタビューだ!優秀で何より人格者です(^^)
— Koichi Sugimoto / 豊かな社会を創るザ法人営業 (@koichi2905) May 23, 2019
国籍も年齢もバラバラな開発チームをどうまとめる? 29歳、LINE最年少役員が貫く多国籍チームマネジメントのポリシー - エンジニアtype | 転職type https://t.co/mipbX2DSMJ
僕のチームの偉い人だけどそれを感じさせないほどにいい人で、大学の学部も先輩なので早く追いつきたい
— Taity (@taity_k) May 23, 2019
国籍も年齢もバラバラな開発チームをどうまとめる? 29歳、LINE最年少役員が貫く多国籍チームマネジメントのポリシー https://t.co/oVOusJQ4fl
おすすめの1記事、二木氏のマスターピース
- 「風邪を引いた」「恋人とケンカ」気持ち次第でパフォーマンスは変わるからこそ、どういう人間かを把握せよ
- やる気スイッチを見誤ると、お互い不幸。フラットな目で相手と接する
- ”フリーゾーン”を把握し、やる気を引き出す
#若手マネジャーの悩み、皆で解消しませんか?
いかがだっただろうか?イノベーション・エコシステム発展のため、そしてベンチャーパーソンである皆さまに少しでも多く新しい学びをお届けするため、今後も「ベンチャーのプロフェッショナルから学ぶ」ことにフォーカスした情報を発信していく予定だ。
さらに、読者の皆さまの学びをさらに深めるべく、今回ピックアップした4名をはじめ、「若手マネジャーの悩み」に関して、プロフェッショナルに聞きたいご質問を大募集!
「#若手マネジャーの悩み」というハッシュタグをつけて、ぜひTwitterで投稿してほしい。FastGrow編集部が、読者のみなさんに代わって、ベンチャーパーソンの業務の悩みを解消しよう。
こちらの記事は2020年08月31日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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