連載ユナイテッド株式会社

上場の舞台裏、窮地を救ったのは20年重ねた信頼と実績──IT界の両雄ユナイテッド早川×サイバー・バズ髙村で語る、“投資家”と“経営者”の域を超えたパートナーシップ論

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インタビュイー
早川 与規

早稲田大学政治経済学部卒業後、1992年、株式会社博報堂入社(営業職)。1998年、米国シラキュース大学経営大学院に私費留学。1999年、株式会社サイバーエージェント常務取締役。2000年、同社取締役副社長兼COOを務める。2004年にモバイルサービスを展開する株式会社インタースパイアを設立、代表取締役社長CEOに就任。2009年、株式会社エルゴ・ブレインズと合併し、株式会社スパイア代表取締役社長CEOに就任。2012年12月モーションビート株式会社(現ユナイテッド株式会社)と合併、ユナイテッド株式会社代表取締役会長CEOを経て、2020年6月より代表取締役社長 兼 執行役員に就任(現任)。

髙村 彰典

1974年生まれ、岡山県出身。青山学院大学を卒業後1997年に興和株式会社へ入社、その後1999年に株式会社サイバーエージェントへ入社。営業未経験ながらもインターネット広告代理店事業にてトップセールスを誇り、2005年には取締役に就任。5年間取締役を務め、2010年10月に株式会社サイバー・バズ代表取締役社長へ就任し現在に至る。2019年に東証マザーズ(現グロース市場)に上場。

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3,857社。これは日本における*上場企業の総数である。そして、その多くが幾多の苦難を乗り越えてようやく上場を掴み取っていることは想像に難くない。当たり前ではあるが、その企業の数にだけ、“上場までのストーリー”が存在しているのだ。

今回は、そんな上場の背後に隠された“経営者”と“投資家”のある物語に注目していきたい。

登場人物はサイバー・バズとユナイテッドの2社。サイバーエージェントの元子会社であったサイバー・バズが上場に向けて新たな株主を募っていた2018年、サイバー・バズ代表の髙村氏は、その選定に全神経を注いでいた。数ある投資家の中から信頼を勝ち取り、投資実行を認められた企業の一つが、何を隠そう、ユナイテッドだったのだ。

FastGrowは過去3回にわたってそのユナイテッドの投資事業本部の実態に迫ってきた。過去連載では主に、シード・アーリーステージにおけるユナイテッドのハンズオン支援のリアル奔走を描いてきたが、今回は一味違う内容をお送りする。

上場を控えたレイターステージの企業に対する投資実績を持つ、同社の投資戦略のレパートリーの豊富さにスポットライトを当てていく。登場するのは、ユナイテッド代表取締役社長 兼 執行役員の早川 与規氏。そしてサイバー・バズ代表取締役社長の髙村 彰典氏。

2人はサイバーエージェント時代から20年以上も親交がある、“旧友”と呼んでも良い関係性だ。本記事では、これまでメディアでは語られてこなかった、“投資家”と“経営者”の域を超えた真のパートナーシップに迫っていく。

*2022/12/26 時点

  • TEXT BY MISATO HAYASAKA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
  • EDIT BY TAKUYA OHAMA
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サイバーエージェントから個人で35%もの株式を取得。
その背景にあったのは「インフルエンサーマーケティングの可能性」

ユナイテッドさんがいなければ、上場できなかった」。そう語るのは、サイバー・バズの髙村氏だ。「ユナイテッドがいなければ」という言葉に、取材陣は聞き覚えがある。

多くの投資家が実行を見送り、万事休すの状態に瀕していた、手づくりドッグフード『CoCo Gourmet』をD2Cで展開するバイオフィリアに対して、ユナイテッドがリード投資家を申し出たのだ。

「ユナイテッドさんと出会えていなかったら、あの時点でバイオフィリアは潰れていたかもしれません」。V字回復を遂げたバイオフィリア代表の岩崎氏が明かした苦悩とその後の成長の軌跡はぜひシリーズ第2回をご覧いただきたい。

さて、本題に戻るが、「ユナイテッドがいなければ上場できなかった」とは、どういうことだろう。それを語るには、まずサイバー・バズの歴史に触れる必要がある。

サイバー・バズが設立された2006年は、ブログ全盛期。当時はまだ“インフルエンサー”という言葉は存在せず、“アルファブロガー”と呼ばれていた時代。

そしてサイバーエージェントが、丁度『Amebaブログ』事業を開始したのがまさにこの頃だ。「このブログをマネタイズしていくのはどうか?」という議論の末、生まれたのがサイバー・バズであった。

しかし、2007年以降はスマートフォンの普及が急速に拡大・それに伴い個人の情報発信がブログからTwitter、Facebook、YouTubeへと変化していった。その時代の流れを肌感覚で捉え、果敢にもそこにチャンスを見出したのが、今回のゲストである髙村氏だ。

髙村これまでブログをプラットフォームとしていた人が、今後はSNSに移行していく。スマートフォンの普及によって世の中の流れが一気に変わる。そう感じました。

当時、サイバー・バズはサイバーエージェントの100%子会社であり、もちろんグループ会社であることのメリットは大きかったです。一方で、子会社として一定の制約があるのも事実です。やはり注力する事業領域の策定や、成長のための投資実行といったシーンでは親会社の事業とのバランスが重要になってくることがあるためです。

この領域で新たに自分で起業する事も考えましたが、最終的には「サイバー・バズで覚悟を決めよう」と決意したんです。

2010年、サイバー・バズの代表取締役社長に就任した髙村氏は、さらなる拡大が見込まれるインフルエンサーマーケティング領域でどんどん新しい事業や人に対して投資を行いたいと考えるようになった。

そして、更なるコミットメントの表明とともに、サイバーエージェントからサイバー・バズの株式35%を2013年になんと個人で取得したのだ。これには早川氏も「高村さん、勝負したな」とその覚悟をひしひしと感じとったという。

髙村氏は、サイバーエージェントの第一号社員。独立に際しては、サイバーエージェント側と何度も対話を重ねたというが、これまで高村氏が積み上げてきた信頼もあり、サイバー・バズはグループからの独立を認められたのだ。

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上場間際の窮地。
救世主として現れたのは、ユナイテッド早川氏

先に結論からいうと、サイバー・バズは独立後ユナイテッドから投資を受け、上場を果たすことになる。そして、この背景を語るのに、早川氏の存在は切っても切り離せないのだ。

そもそも2人はサイバーエージェント時代から親交があった。まだ無名だったサイバーエージェントに社会人3年目で飛び込んだ髙村氏と、アメリカでMBAを取得中に、インターネットに興味を抱きインターンとして参画し、その後、副社長を務めた早川氏。2人の関係は20年以上にも及ぶ。

やがてサイバーエージェントから別々の道へと進んだ2人だが、再びインターネット・ビジネスの舞台で出会うこととなる。早川氏率いるユナイテッドが、レイター・ステージのサイバー・バズに投資を決定したのだ。

早川髙村さんとのやり取りで、「IPOを目指す」という話が出ました。髙村さんがIPOに向けて動くのであれば、私としては投資はウェルカム。通常は投資の意思決定まで3ヶ月くらいかけますが、サイバー・バズに対しては1ヶ月程度でスパッと決まりました。

元はサイバーエージェントの100%子会社からスタートしているサイバー・バズ。上場に向けて苦労したというのが、“株式の異動”だった。

バリュエーションを高くして調達する訳ではなく、サイバー・バズの株を持ってもらうため、どの株主に株を譲り渡すべきか、慎重に慎重を重ねて進めていったという。

一方で、上場申請を行うまでに残された猶予は少なく、一刻も早く株主を見つけなければならない。しかし、投資は信頼に足りうる人にしか頼ることはできない。そんな状況の中で、助け舟を出したのが早川氏率いるユナイテッドであった。

髙村ユナイテッドさん、そして早川さんがいなければ、ウチは間違いなく上場できなかったでしょうね。

上場申請前に大きな方向転換があり、株式の30%をどこかに持ってもらう必要が生じたんです。

具体的には、2018年12月中に株式を買ってもらわないと上場申請ができない状況でした。そこから必死で投資家を募るも、「誰に株式を買ってもらうべきか?」に頭を悩ませ、時間ばかりが過ぎていきました。

もうどうにも立ち行かなくなり、最後にご相談したのが早川さんだったんです。半ば無理なお願いだったかもしれませんが、投資を即断してくれたばかりか、その後の対応もスピーディーに進めていただきました。そのお陰で、なんとか期限内に上場申請を果たすことができたんです。

結果、髙村氏は上場の鐘を鳴らすに至った。早川氏やユナイテッドで投資に関わるメンバーたちのスピード感ある対応に、髙村氏は感謝したであろう。サイバーエージェントグループからのMBOも、IPOも、サイバー・バズが初めてのことだ。

しかしなぜ、早川氏はこんなにも迅速にサイバー・バズへ投資実行したのだろうか。やはり、旧友としての義理なのだろうか。

早川これまで、髙村さんが数々の修羅場をくぐり抜けてきたことを私は知っています。でも、髙村さんを救えたら満足かというと、そうではない。少なくとも私はユナイテッドの経営者という立場で、ビジネスをやっていますからね。

当時のサイバー・バズさんは株主に関わる状況こそ複雑でしたが、ここを乗り越えればIPOもできそうだし、ほぼ間違いなく業績も伸びていくだろうという見込みが持てました。だからこそユナイテッドとしてもリターンが得られる確率が非常に高い。そうした“鉄板案件”だと思ったから、投資を決めたんです。

投資実行はシビアに見極めなければならない。どんな時であっても、冷静さを保つ必要がある。早川氏は贔屓目抜きでサイバー・バズへの投資を決めたのだ。そして髙村氏のコメント通り、2019年9月19日、サイバー・バズはマザーズへ新規上場を果たした。

そこから現在に至るまで、髙村氏から相談がない限り、早川氏からは事業に口を出さない“ハンズオフ支援”が続いている。“ハンズオン”が基本スタンスとも言えるユナイテッドでは珍しい支援方法だ。

髙村ユナイテッドさんは、普段は全くと言って良いほど事業に言及してくることがなく、困った時にだけ頼らせてもらっています。

また、早川さんは人脈がとにかく広いので、人の紹介をどんどんしてくれています。それにより界隈でのパートナーシップの拡大を含め、より事業が拡大した感覚を持ちます。またサイバー・バズと同じくIPOを目指している経営者の方々もご紹介していただき、「もっと自分も頑張らなきゃ」と上場前の苦しい時期で気持ちを奮い立たせることもできました。

ユナイテッドの支援はシード・アーリーステージでのハンズオン支援にこそ魅力があると過去3記事に渡り論じてきた。しかし、同社の投資理念はレイターステージでも十分にその価値を発揮することができる。

それはなぜか?あくまでパーパスである「意志の力を最大化し、社会の善進を加速する」の実現が目的であり、そのための手段(シード・アーリーなのかレイターなのか、ハンズオンなのかハンズオフなのかなど)は起業家の状況に応じて柔軟に変化させているからである。

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2000年代からインターネット業界を牽引する両社は、今なお進化の途上にあり

さて、ここまではサイバー・バズの歴史と早川氏・髙村氏の関係性、上場までのストーリーに迫ってきた。インターネット業界における両社の立ち位置やその関係性を知っているものであれば、ここまでの話は「そうだったのか…!」と驚きもあったかと思う。しかし、今回初めてユナイテッド並びにサイバー・バズについて知る読者もいるかもしれない。

ここで、あらためて早川氏と髙村氏が属するそれぞれの企業について、おさらいしておこう。

まずはユナイテッド。インターネット・ビジネスの黎明期から20年以上に渡り投資事業を行っている、ベンチャー投資のプロフェッショナル企業である。

連載第1回では、VC・CVCとは一線を画すユニークな支援スタイルを紹介した。事業会社だからこそ、自社にも豊富なビジネスノウハウが蓄積されている。グループ会社も総動員で手厚い支援を受けられるのが特長だ。

さらに、起業家の判断を無理に軌道修正することをせず、その意志を尊重しながら向き合っていく点が魅力でもある。

早川やはり、シード・アーリーのタイミングではハンズオンで支援したほうが良いと思うんです。そのフェーズの起業家であれば、困っていることはたくさんありますしね。

例えば、社員が一人辞めたという場面で、経験がないのでどう対応すべきか分からなかったりする。ventusの梅澤さんもおっしゃってくれていましたが、会社経営についての1on1もしています。例えば「自分の給料をどう決めたのか」について相談に乗ったりして(笑)。

ユナイテッドが起業家から強い信頼を集めている理由の一つに、こうした早川氏の起業家支援のポリシーがあるのだろう。

また、投資事業の他にもユナイテッドはコア事業として、教育事業、人材マッチング事業を有している。その詳細は今後FastGrowで順を追って紐解いていくが、これらの事業が相互に連携しあうことで大きなシナジーを生み、パーパスの実現へと進んでいくのだ。

一方、サイバー・バズは2006年からソーシャルメディア(SNS)を中核とした事業を展開してきた。その主たる事業とは、インフルエンサーサービス事業だ。

独自のインフルエンサーネットワークを複数保持し、クライアントのニーズに合わせて最適なインフルエンサーを起用したプロモーション施策の企画提案を行っている。

また、企業のSNS公式アカウント運用やSNS広告も手がけており、SNS周辺領域のソリューションを一気通貫で提供。総合ソーシャルメディアマーケティング企業と言えるだろう。

さて、ここで気になった読者もいるのではないだろうか。いつまで、この隆盛が続くのだろうかと。最近まで“当たり前”だったことが、あっという間に“一昔前のもの”になっていくのが昨今の世の中であり、インターネットの領域では特にそれが顕著だ。果たして、インフルエンサーマーケティングの市場は今後も成長するのだろうか?

その解をデータで見ていこう。インフルエンサーマーケティングを含めたソーシャルメディアマーケティング市場は、2023年には1兆899億円、前年比117%となる見通しである。2027年には2023年比約1.7倍、1兆8,868億円になると見込まれている(出典:サイバー・バズ)。一言で言えば、勢いは今後も消えることはない。

サイバー・バズ/デジタルインファクト調べ

髙村ソーシャルネイティブな今の10代は、やがて20代になり、購買層に変わっていく。その中で起こるのが、購買パターンの変化だと言えます。

今の30代以降の人々はテレビやメディアが主な情報収集源でした。しかし、今の若い世代はSNSなどで発信されるインフルエンサーに大きな影響を受けています。

すると今後、その世代が購買層になった際には、そういったインフルエンサーの情報発信を起点に購買行動が発生するパターンが増えていくのは火を見るよりも明らかです。成長市場といえるでしょう。

現在、サイバー・バズには子会社が4つあり、今後は“時間を買う”という意識を持ちつつ、「積極的なM&Aも視野に入れた事業展開を加速させていく」と髙村氏は力強く話した。

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信頼の起点は、マンション一室のオフィスから。
20万円の売上を共に歓喜した若手時代

髙村氏は早川氏を信頼して株主に、一方の早川氏も髙村氏を信頼してハンズオフでの支援を続けている。2人の間に構築された信頼関係は、「ただ付き合いが長い」という言葉だけで片付けられるものではないはず。

そこで明かされたのが、20年以上も前、2人がまだサイバーエージェントの黎明期に、藤田氏の元で苦楽を共にしていた時の秘蔵エピソードだ。

そもそも、早川氏はサイバーエージェント入社当初、2ヶ月間だけのインターン生だった。博報堂を休職し、MBA取得のためにアメリカへ渡航。ちょうど夏休みのタイミングで帰国した際に、サイバーエージェントにジョイン。当時、アメリカではインターネットが一大ブームに。日本にもその流れがくると見込んでの意思決定だったという。

一方の髙村氏は、既に正社員としてサイバーエージェントに入社していた。つまり、早川氏は当初、髙村氏の営業について回りながら、インターネットベンチャーの世界へと足を踏み入れていったのだ。

営業のためとある社長の元を尋ねると、マンションの一室に通され、足元にペットの犬が歩き回る中、ネット広告の提案を行い、受注単価20万円。それでも、ホワイトボードに受注額を書きながらメンバー全員で盛り上がっていたというのだから、いかにも、創業期のベンチャー企業らしい。

早川髙村さんとは、何度も一緒に客先に謝罪に行きましたよね。想定していた広告配信がうまく回らず、顧客から呼び出され、平謝りするばかりでしたね。今となっては良い思い出です(笑)。

苦い思い出を振り返りつつ、当時から、髙村氏はビジネスマンとしての才能を光らせていたと早川氏は語る。

早川昔も今も、髙村さんは人の懐に入る天才です。お客さんも多いし、友人も多い。さらに、数字にコミットする人が多いサイバーエージェントの中でも一番と言っても良いくらい、結果にこだわる人間でした。コミュニケーション力と結果へのコミット力が素晴らしいんです。

早川氏に「人の懐に入る天才」と言わしめる髙村氏。ビジネスパーソンに必ず必要な要素とまではいかないものの、可愛がられ力が窮地を救うシーンも少なからず存在するだろう。髙村氏はどのようなスタンスで人と向き合っているのだろうか?

髙村先輩など、目上の人に対して上手に甘えるのが僕のスタンスです(笑)。思ったことはなるべく伝えるようにしているし、できるだけ頼るようにしていて。

時には怒られるかもしれないけれど、怒られたら怒られたで、“伝え方が悪かった”という学びになる。あと、何かに誘われたらなるべく行くようにしていますね。

必要以上に謙虚にならず、素直に発言し、甘える。もし怒られても、それを学びに変える。ビジネスパーソンとして参考にしたい姿勢ではないだろうか。

一方、髙村氏に早川氏の印象を聞いてみると、即座に「フラット」という言葉が飛び出した。

髙村早川さんは、怒ったり、落ち込んだりしているところを一切見せないんです。常に冷静に対処している印象があります。そして、何よりも優しい方ですね。

お互いについて、あまり多くは語らない2人。しかし、その間には確かな信頼が感じられる。

当たり前だが、かつてはこの2人にも若手時代というものがあった。まだ実績もなかった2人が、のちに大きな成果を残すことができた理由こそ、「人に愛される器」と「冷静に物事を進めるコミット力」を持ち併せていたことだろう。

そして、現在両者ともに日本を代表するIT企業の代表という役割に就いてもなお、その勢いは止まることはない。

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人として誠実か?
投資判断において重視すべきは起業家としての“格”

他のメディアでは語られてこなかった2人の若手時代の秘蔵エピソードから、サイバー・バズとユナイテッドの“投資家”と“経営者”の域を超えたパートナーシップの全貌が徐々に明らかとなってきた。

もうお腹いっぱいという読者を差し置いて、さらに話は、投資先を見極めるポイントへと移る。ユナイテッドの投資事業を管掌する早川氏から明かされたのは、「投資実行前には、どのような点を見極めているのか」という投資眼であった。

早川“嘘をつかない人”ですかね。練習すれば、プレゼンは上手になるけれど、プレゼンだけでは人柄まで見えないことが多いですよね。なので私は、投資先の方に限らず、ゴルフや食事を共にさせていただいています。

例え話としてゴルフの例を挙げると、林の中に入ってしまったボールが見つかっていないのに、「ありました!」といって新しいボールをこっそり打つような人は、事業においても軽い嘘を付いてしまいがちな人なのかもなと捉えることもできますよね。そんな人ほとんど居ませんけどね(笑)

こうしたビジネス以外のシーンでも時間を共にしていると、ふとした瞬間にその人となりが垣間見えるものなんです。先にも話した通り、話を大きく見せたり、失敗を隠そうとしたり、他責思考になってしまったり。

これらの要素は、プライベートだけではなく、もちろん仕事においても現れてくるものだと思っています。

髙村いやぁなるほど、それはとても共感しますね(笑)。

起業家の誠実さ、清廉性は事業の成功において欠かせないもののようだ。さらに、早川氏は言葉を続ける。

早川個人として優秀なのは当たり前。大事なのはチームをつくれるのか、ということです。自分だけ優秀だったとしても、チームをつくれなかったら組織崩壊してしまいます。「俺の会社だ」と一人で頑張っても長続きしないということですね。

例えば、メルカリの山田さんは「いいチームがつくれそうな人だ」と思ったし、もしフリマアプリがうまくいかなくてもピボットできる柔軟さがあると感じました。

人格を大事にするという話は、何も投資先だけに当てはまるものではない。ユナイテッドの社内育成においてもその姿勢は存分に生かされている。シリーズ第3回では、ユナイテッド投資事業本部の若手キャピタリストとして活躍する片木氏がこんな発言を残している。

この仕事を成し遂げるには、人との向き合い方や誠実さが求められるんだなと感じます。キャピタリストはロジカルでドライという印象があるかもしれないですが、“人格含めてしっかりとした人でいよう”というのを大事にしている企業です。

早川私は、キャピタリストというよりも、ビジネスパーソンとしてどうあるべきかをよくメンバーに伝えています。

不義理なことをしない、困っている人がいたら助ける。実際にメンバーには心の綺麗な人が多く、誰かを蹴落として偉くなりたいという人はいない。私自身、社内政治が大嫌いですしね(笑)。

“人としてどうあるべきか”。時折、我々も足を止めて、自問自答する時間が必要なのかもしれない。

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良き失敗なくして一流の事業家は育たない。
ならば、キャピタリストも同義では?

「キャピタリストというよりも、ビジネスパーソンとしてどうあるべきか」。早川氏の人材育成のポリシーは、「投資先を見極めるポイント」とも共通していることが理解できた。

シリーズ第3回でもご紹介した通り、ユナイテッドは新卒・中途問わず未経験のキャピタリストを積極的に採用し、一から育成に取り組んでいる。

なぜ、あえて育成コストのかかる取り組みを行っているのだろうか?今回は代表の早川氏にその背景も訊いてみよう。

早川そもそも、新卒や未経験者を育成することは当たり前のことだと思っています。

力のある経験者は自分でファンド組成できてしまうので、ユナイテッドに転職してもらうインセンティブも見出しにくい。時間はかかるけれど、前向きで吸収力のある人材を育てるというのは、私にとってごく当然の流れです。

流石の髙村氏もこれには「未経験者を採用?」と驚いた様子だったが、早川氏にとっては至極当然の、なんの驚きもない意思決定のようだ。

さらに、ユナイテッドは経験に関わらず、誰からの承認も不要で投資が可能な1,000万円分のチケットがある。ここにはどういった背景があるのだろう?

早川もちろん、ユナイテッドの投資はキャピタルゲインを主目的としていますので、経済的リターンは大事です。

しかし、キャピタリストの育成に関しては自らの意思決定によって失敗を経験しないと、分からないことがあると思っています。なので、この制度の半分は育成目的だと言えます。

「将来は事業責任者になりたいです」と言うならば、自分で決めて自分で失敗しないと、何が正解で何が不正解なのかわからない。

このように、事業家も日々失敗を重ねて成長するはずです。これはキャピタリストであっても同じだと思います。もちろん起業家に迷惑をかけてしまうことは絶対にあってはなりませんが、“キャピタリストとしての失敗”をたくさんしなければ、良いキャピタリストになんてなれません。

育成前提だから、失敗も歓迎なのだ。この育成スタイルのもと、内側から湧き出るエネルギーを大事にしたキャピタリストは、どんどん輝きを見せている。

これを象徴するような、ユナイテッド投資事業本部の若手キャピタリスト清水石氏のコメントを載せておこう。

ユナイテッドでは投資先候補のスタートアップが属するステージも、事業領域も、自分で選んで投資実行の提案をすることができます。私の場合、アイドルオタクだったこともあり、“推し活”に興味がありまして(笑)。私のような属性の人が集まるプラットフォームとして注目を集める、クリエイターエコノミー領域のスタートアップに注目しています。

シリーズ第3回より

続いて、髙村氏にも親交が深いユナイテッドの社員に対する印象を伺ってみた。

髙村ユナイテッドさんとサイバー・バズでは社員同士の交流会を頻繁に開催させてもらっています。やはり、ユナイテッドの社員さんたちとの交流は弊社のメンバーにとっても大変刺激的なようで、自社のレベルアップにも繋がっていると感じます。

ユナイテッドはみなさん、誠実で、責任感の強い、キャラの立った人ばかりですね。株主からは短期的に利益を見られることがどうしても多いのですが、ユナイテッドさんは会社の目指していることを長期的に応援してくれるので、心強いです。

早川起業家がチャレンジするように、我々キャピタリストもチャレンジできる環境をつくっていきたいと考えています。「3年間は黙って先輩の元についておけ」というようなことは一切ないので、早く打席に立ちたい人には適した環境かもしれません。

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シード・アーリーでもレイターでも。
若手でもベテランでも。
パーパスに基づき、「意志ある人の自己実現を支援する」のがユナイテッドらしさ

ユナイテッドは未経験者にも、もちろん経験者にも、キャピタリストに繋がる門を開いている。

キャピタリストという職業は、イノベーションの最前線でしのぎを削る優秀な起業家や、今回登場した2人のようなベテラン経営者をはじめ、多くのビジネスパーソンと手をとりあい仕事を進めていくものだ。時には、自分の背丈に見合わないほどの難題にぶつかる機会があるだろう。

しかし、この連載でも再三述べてきた通り、ユナイテッドには歴史ある事業ノウハウと、若手の育成に拘り抜いた育成制度、そして自由度の高い挑戦の機会が用意されている。

ここで上述したような様々なステークホルダーに揉まれ、挑戦を繰り返していけば、ビジネスパーソンとして大きく飛躍する糧となることは間違いない。

また、シリーズ第1回第2回第3回でも触れた通り、ユナイテッドはシード・アーリーステージでのハンズオン支援を強みにしている。しかし、今回のように、代表早川氏の人脈や経験をフルに活用して、レイターステージでも積極的に投資を行う国内でも類を見ないユニークな存在と言えよう。

最後に一つ。第4回にわたる投資事業本部への取材を通して取材陣が感じたのは、同社は実に“パーパスドリブン”な企業であるということ。

代表の早川氏は言わずもがな、若手メンバーからも、“パーパス”に基づいたキャピタリストとしての生き方をまざまざと見せられた。

意志ある人の自己実現を支援し、社会をより善い方向に進めていく──。妥協せず、誠実に。善い社会を作るために、善い人間でいる。使う言葉は違えど、このような共通した価値観があることを、取材陣一同は感じ取ったのだ。

さて、ユナイテッドの3つのコア事業の全貌を解き明かす全10回に渡る本連載。今回で投資事業本部への密着取材は終了となる。次回からは、複数代表体制を敷くユナイテッドのもう1人の代表取締役金子陽三氏が登場。3つのコア事業の残り2つのピース、教育事業と人材マッチング事業について、その全貌を明らかにしていこう。

こちらの記事は2022年12月26日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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スタートアップ人事/広報を経て、フリーランスライターへ。ビジネス系のインタビュー記事や複数企業の採用広報業務に携わる。原稿に対する感想として多いのは、「文章があったかい」。インタビュイーの心の奥底にある情熱、やさしさを丁寧に表現することを心がけている。旅人の一面もあり、沖縄・タイ・スペインなど国内外を転々とする生活を送る。

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藤田 慎一郎

編集

大浜 拓也

株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。

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