『転職口コミサイト』のネガティブコメント?それは過去の話です!
“日本一テックドリブンなECカンパニー”を目指すCROOZ SHOPLIST、エンジニア組織改革の裏側
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転職を検討するとき、転職口コミサイトを参考にする読者は多いだろう。成長環境や将来性、そして給与まで、経験者の赤裸々な体験談が記載されているため、面接だけでは見えてこない会社の実像が浮かび上がってくる。
本記事で取り上げるのは、転職口コミサイトにネガティブなコメントが書かれていたことを、CTO自ら「これだけを見てしまうと、入りたいと思いづらい会社ですよね」と認める会社だ──『SHOPLIST.com by CROOZ』を展開する、CROOZ SHOPLIST(以下、SHOPLIST)である。
FastGrowは特別連載「上場企業の社長から“課題解決”を学べる事業家集団」で、同社ならではの、「課題解決」を重視するカルチャーを多角的に取り上げてきた。今回は主にエンジニア読者に向けて、同社の開発組織の全容を紹介する。
登場するのは、親会社クルーズの最高技術責任者CTOで、SHOPLISTの技術統括部長を務める鈴木優一氏。彼はSHOPLISTのエンジニア組織改革における、最重要人物。クルーズ代表の小渕氏をして「SHOPLISTの改革・立て直しは彼なしではできない」と言わしめる鈴木氏の話からは、「この口コミはもはや過去のものだ」ということがひしひしと伝わってきた。「日本一テックドリブンなECカンパニー」を目指すSHOPLISTの、開発組織の強みと成長環境に迫る。
- TEXT BY MASAKI KOIKE
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
「テックドリブンな会社に戻すぞ!」
社長交代を機に、技術投資を強める
鈴木正直、この口コミを見てしまうと、「これは自分でも入社をためらってしまう」と認めざるを得ません。普通に考えて、エンジニアであれば正直働きづらいと思ってしまう会社です。
鈴木氏は、苦々しい表情で切り出した。転職口コミサイトに寄せられた、SHOPLISTへのエンジニアのコメントを見て漏らした言葉だ。代表的なコメントは、以下の通りである。
- 使っている技術が古い
- 給与水準が低い
- トップダウンな環境
「たしかに1〜2年前まではこうした側面もあった」と認める鈴木氏。しかし、これはあくまでも過去の話だという。「現在はあらゆる面で、開発環境や労働環境が大きく改善されている」と力強く語った。
その背景には、SHOPLISTが2020年7月から進めている構造改革がある。FastGrowでも詳細を取り上げたが、2019年前半にSHOPLISTが営業赤字を計上したのを機に、同社は親会社クルーズのトップである小渕宏二氏が陣頭指揮を執って改善に取り組みはじめた。2020年7月に代表をはじめ、もともと親会社クルーズでこれまで複数の事業を急成長させてきた役員を中心に経営陣も入れ替えを行い、わずか半年ほどで黒字にV字回復。現場メンバーから徹底的に課題を吸い上げ、その解決を小渕氏と二人三脚で推進していく「重要プロジェクト」という仕組みに則り、開発部門でも改革が進められている。
開発部門の改革の旗振り役を務めるのが、鈴木氏である。2020年7月、親会社クルーズのCTOである彼が、CROOZ SHOPLISTの技術統括部部長として変革にコミットするようになったのを皮切りに、開発環境や労働環境が大きく変わりはじめたのだ。まさに鈴木氏は、エンジニア組織改革の最重要人物と言っても過言ではないだろう。
鈴木新代表の小渕が「テックドリブンな企業に戻すぞ!」というスローガンを掲げて以来、皆がそういう意識を強く持つようになりました。
クルーズは創業以来、20年近くIT関連の事業を手がけてきましたが、とくに技術革新のスピードが速いソーシャルゲーム事業がメインだった時期は、技術志向がとても強く、それが競合優位性につながっていました。でも、SHOPLISTをローンチしてEC事業が主軸になると、「ものを売る会社」としての側面が強くなったんです。
その結果、技術面への投資がおろそかになり、技術志向が強く、自主的に新技術を試してくれるようなエンジニアが、少しずつ減ってしまっていました。2020年7月にCROOZ SHOPLISTの開発現場にコミットしはじめるようになったときは、当時の現場の開発環境を見る限り、正直にいえば「ああ、これは転職口コミサイトでネガティブなコメントが来てしまっても仕方ないな」と思わざるを得ませんでした。
これはしばらく現場の責任者に任せっきりだった、親会社クルーズCTOの僕の責任によるところも大きいなと反省し、もう一度現場のトップとして指揮を執る決意をしたんです。
さっそく構造改革に着手し、まずは再び技術志向を強める方針に切り替えました。総合職であってもプログラミング研修を必須にしているのに加え、技術課題の解決へのコミット度を大きく高めました。各所にヒアリングした問題に対して「重要プロジェクト」を立ち上げ、解決に向かって一気に動きはじめたんです。
お恥ずかしい話ではありますが、細かいリンク切れから販促プロモーションを支える仕組みまで、これまで誰も気づかず、改善行動が取れていなかった課題がたくさんありましたから。
技術インフラを刷新、給与水準も適正化
では、具体的にどのような改革を進めているのか。言い換えれば、転職口コミサイトに寄せられたネガティブなコメントを、いかにして覆すのか。
まず、「使っている技術が古いので、成長できない」問題。過去にはサポート切れのミドルウェアやOSを使っていることも多く、開発者としてスキルアップしづらい状況だったそうだ。
鈴木構造改革が始まってから、まずはこれらの問題を注力的に解決しはじめました。開発スピードを維持しながらアーキテクチャを変更するのはチャレンジングですが、すでに概ね改善できています。
すごくレベルの低い会話でいうと、デプロイ方法としていまだにrsyncを使っていて、本番OSにSSH接続してコマンドを流し、デプロイ失敗時にrsyncで切り戻すなど、ものすごい古典的な方法のまま運用されていて。面接で「化石ですね」と言われていたことがあります(笑)。今回のシステム刷新の中で、パイプラインのデプロイに早急に変更しました。
またお恥ずかしい話ですが、SHOPLISTのインフラはAWS上で動いているのですが、実質はオンプレミスのシステムをそのままAWS上に持ってきていただけで、クラウド最適化がなされているとは十分に言えない状況でした。ですから、インスタンスタイプの見直し、OS入れ替え、Auto Scalling Groupによる柔軟に拡張縮退できるインフラアーキテクチャ、そして長年の課題だったPHP5系から7系へのバージョンアップなどインフラレベルの技術刷新を行いました。
実質2ヶ月という短期間で達成しました。これまでのエンジニア人生の中でも、ここまでのスピード感で大幅な技術刷新を行ったのは初めてですし、技術が分かる人であれば、このスピード感には驚くんじゃないかなと思います。
並行して、ソースコード上の問題として、実質的には不要であるにもかかわらず、プログラムとして基底クラス上に組み込まれて動作してしまっている旧分析システム用のログ出力処理や、未使用のDefine、クラスの削除、リファクタリングなども進めています。インフラ部分の刷新とアプリケーション部分の改修の結果として、サーバのスループットの1.3倍向上、ユーザー体感としても、ページ速度の2割改善が実現できました。
もちろん、これらは序章にすぎず、他にもまだまだ新技術への取り組みを考えています。ちなみに、新代表は技術にまったく詳しくないので、この改革は完全にエンジニア主導で進められました。「トップダウン」とは程遠い形だと思います。
さらに、避けては通れない「給料が低い」問題。この点に関しても、もともとは事業貢献だけを軸に査定していたが、市場での給与相場に配慮した評価ロジックに変更することで改善。結果として約1〜2割向上し、現在は市場での相場、もしくはそれ以上の給与になっているという。
トップダウンとは真逆。
エンジニア自ら「開発が事業に与える価値」を考えながら企画推進
技術インフラや給与水準といった目に見える部分の改善はもちろん、組織カルチャーの面でも大きく変わっているという。
転職口コミサイトでのネガティブなコメントの一つに「トップダウンのカルチャー」がある。しかし、構造改革後は、ボトムアップに課題解決を行っていくカルチャーが芽生えているという。
まず、あらゆる技術課題に関して、解決した場合の定量的インパクトを算出するカルチャーが根付いたという。たとえば、「技術的負債」のように正確な数値換算が難しい課題であっても、売上インパクトを算出し、メンテナンスによって数時間、本番システムを止めた場合の損失と照らし合わせる。
こうして定量的な議論がなされることで、一つひとつの課題に対する意思決定が圧倒的にスムーズになり、結果として解決される課題も増えたそうだ。そうして次々と課題解決がなされるようになったこと、また多くのメンバーが「重要プロジェクト」のオーナーとして課題解決を主導するようになったことにより、ボトムアップで課題解決に取り組むカルチャーが生まれていった。
鈴木以前は、現場のメンバーの全員に「自分で変えていくぞ」という意識があったわけではありませんでした。でも、いまは技術課題からコミュニケーション上の課題、組織課題まで、デイリーの朝会で課題のタネがどんどん上がってきて、その日のうちに対策がスタートすることも珍しくない。
ベンチャーなのである程度のトップダウンな側面はもちろんありますが、機能追加や操作性改善、新技術の検証といったプロジェクトなど、開発主導で進められている重要プロジェクトもたくさんあります。
最先端事例を共有するミーティングで問題解決の方法を探るようにもなりましたし、現場主導で、日々気づいた違和感を議論することが増えましたね。
エンジニアの成長は、技術力を高めていくことはもちろん、企画へのコミットメントを強めていく中で得られる側面も大きいと思っています。
いまのSHOPLISTは、目の前に提示されたビジネス上の課題に対して、要求や仕様といったレベルから自分で調べたり考えたりして提案していかなければなりません。ですから、考える癖やリサーチ力、プレゼン力や自らを客観視する力が身につきます。
下請け的に上から降ってきた指示をこなしていくスタイルとは真逆です。開発が事業に与える投資対効果を定量的に考えながら、PdMやUXデザインといった隣接領域まで踏み込んだ、かなり自主的な動きを取ることが求められるんです。
「環境整備」に軸足を置く元・技術少年だからなし得る、
エンジニア組織の徹底改革
「転職サイトの口コミを見ると、入りたいと思いづらい会社」であったSHOPLISTを、テックドリブン企業へと生まれ変わらせる──容易ならざるミッションを達成すべく、技術トップとして奔走する鈴木氏。彼はキャリアの大部分で、技術そのものの追求だけでなく、それを後押しする「環境整備」まで踏み込んだ仕事を重ねてきた。
幼少期より「技術が大好き」で、Windows95すら登場していなかった小学生時代からすでに、独学でプログラミングを学び、Visual Studioでコードを書いていた。きっかけは3歳でピアノを習いはじめたときから親しんでいた、音楽だったという。
鈴木長い期間かけて練習しても、発表会当日のコンディション次第で演奏のクオリティがぶれるのはもったいない。パフォーマンスに差が出ないよう、演奏を自動化できないだろうかと考えるようになったんです。そんな折にコンピュータに出会い、シーケンサーやMIDIを自作するようになりました。
そうして独自に探究を続けた結果、高校時代にはプロのミュージシャンが使えるレベルの自動演奏を自作できるようになったそうだ。現在でも音楽やプログラミングは大好きで、業務外ではマイクロコンピュータの自作や作曲・配信活動に熱中しているという。ただ、常に技術に親しみ続けてきたからこそ、「仕事では別のことをしたい」と考え、2008年に新卒入社したモバイルコンテンツプロバイダでは、マーケティング職に就いた。
しかし、マーケティングに必要なデータのログを取得する仕組みの構築などを手がけていくうちに、自然とPMやシステム企画へと職域を移すように。2012年には、そうしたインフラ整備などを担当するメンバーとして、当時ソーシャルゲーム事業が隆盛を極めていたクルーズに転職した。
鈴木とにかく、当時のクルーズは事業の成長速度が凄まじくて。当時はソーシャルゲーム事業が急成長していた時期で、ありとあらゆることをしないと、リクエスト負荷に耐えきれなかったんです。
ですから本当にいろいろ技術的なチャレンジをしました。ハードウェア的には当時出始めたばかりのFusion IOを使ってみたり、永続キャッシュとしてRedisを使ってみたり、一部コアロジックをPHPではなくPHP ExtensionとしてC言語で書き直したり、ソケット通信用のTCPサーバをJavaで作ったり。
ただ、ありとあらゆることをして対策しても、実際にはリクエスト負荷のかかり方や原因も様々で、結果としてサービスがつながりにくいことが発生してしまいます。
だからこそ、急激な事業成長にも耐えうるシステムアーキテクチャと開発体制の構築は、チャレンジしてみたかった。ですから、クルーズ入社後は、プロダクト開発ではなく、インフラ整備や現場との橋渡しをメインに手がけてきましたね。
入社後は技術統括部門の責任者として、主に全社の開発平準化や採用技術選定、アーキテクト業務に従事してきた鈴木氏。2015年には執行役員に就任し、現在は最高技術責任者CTOとして、グループのIT技術・セキュリティ分野全般を担っている。10年近くクルーズを見てきた鈴木氏から見ても、やはりここ最近の構造改革は、大きな変化として映っているようだ。
鈴木デプロイ方法の変更をはじめ、開発部門の体制を大きく見直したことで、抜本的な変化が置きている手応えを感じています。個々の開発案件の進行プロセスの改善、事前にエラーを潰す文化の醸成、ソースコードのレビュープロセスの改善など、組織として変わってきたなという感覚があります。
組織の文化が変わるには長い時間がかかります。正直な話、劇的に変わったなと感じるレベルには至っていないですが、良い方向に変わってきているという手ごたえは感じています。
「日本一テックドリブンなECカンパニー」になるため、
スピード感重視の開発を
手応えを感じながら、鈴木氏がSHOPLISTの将来像として見据えるのは「日本一テックドリブンなECカンパニー」だ。
鈴木EC企業は、一般的にはあまり技術的な先進性があるイメージを持たれていません。昔からある業態ですし、データベースのテーブル構造もシンプルなので、エンジニアとしてはあまりテンションが上がらない。でも、そのイメージを覆したいんです。
そのために今後、まず新規の技術要素については積極的に調査・検証していく。体制変更後に画像ファイルのWebP化を進め、トラフィックを3割減らす効果を生んだ。今後は、言われなくても誰もが新技術や新しい開発の概念・思想の調査・検証を積極的に行い、得られる技術的な価値をサービスにフィードバックしていくことで、システムのサービス品質や生産性が向上する組織を目指す。
また、来期にはフロントエンドフレームワーク導入とServer Side Rendering の実現によるページ表示速度の向上や、クロスプラットフォーム言語によるアプリ開発の生産性の向上、そしてソフトウェアテストチーム立ち上げと網羅性テストやブラウザ検証といったUIテストの自動化、さらにはソースコードの品質メトリクスの可視化によるプログラム品質の向上にも注力していくという。
しかし、SHOPLISTにフィットするのは、ただ技術が好きなだけのエンジニアではない。
鈴木SHOPLISTは、何よりも「スピード」を重視している会社です。もちろん、技術力は大切です。SHOPLISTでは様々な決済に対応し、さまざまな在庫管理システムと連携しており、それゆえに裏側の在庫連携や決済のシステムが複雑になっている。そういった複雑性を伴うシステムであるかららこそ、開発には高い技術力が求められます。
また、過去の転職サイトの口コミ評価とは裏腹に、所属しているエンジニアはみんな技術が好きな人が多いです。社内のオープンエリアで、お酒を片手に、GitHubからCloneしてきたソースコードDocker上で動かしながら、ああだこうだといろいろ話して、気づいたら終電時間になっているなんてことも珍しくないです(笑)。
ただ、それだけでは足りない。参入障壁が低いインターネットビジネスだからこそ、「圧倒的なスピード」が絶対的に重要になります。とくに重要プロジェクトにおいては、社長の小渕と二人三脚でプロジェクトを進めていくことになります。
各自の持つ技術的なバックグラウンドをもとに、現行のビジネス的、システム的な課題の原因を探し出す。そして自分が正しいと考える解決策を提案し、スピード感を持って最後までやり抜く。そんなマインドセットを持っている方と、是非一緒に働きたいです。
こちらの記事は2021年03月12日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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執筆
小池 真幸
編集者・ライター(モメンタム・ホース所属)。『CAIXA』副編集長、『FastGrow』編集パートナー、グロービス・キャピタル・パートナーズ編集パートナーなど。 関心領域:イノベーション論、メディア論、情報社会論、アカデミズム論、政治思想、社会思想などを行き来。
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