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「0→1よりも10→100が難しい」
大ヒットゲームプロデューサーは、
なぜ「Pairs」の事業責任者に転身したのか?

インタビュイー
金田 悠希

Pairsのプロダクトマネージャーとしてプロダクト部分のプロデュース、組織作りにコミット。2017年からはプロダクト責任者を務めている。
日本にオンラインデーティングという文化を根付かせ、より多くの人が出会いたい、出会うべき人に出会える社会の実現を目指して奮闘中。

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日本と台湾で合計600万人以上が利用する恋愛・婚活マッチングサービス「Pairs」。

その国内版の事業責任者を務める金田 悠希は前職で主力サービスとなるソーシャルゲームを責任者として立ち上げ、上場に貢献したと言っても過言ではない、若くして経験豊富なリーダーだ。

一見順調なキャリアを歩んできたように見える彼、だがそこには数多くの困難があった。

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失敗から学んだ成功方法

新卒ではソーシャルゲーム業界に飛び込まれたんですね

金田そうですね。元々ソーシャルゲーム業界には興味を持っていました。大学で専攻していたのは公共経済学なのですが、就職活動で軸としていたのは何かモノを作れる事と、自分の市場価値を上げる事の2つでした。モノを作りたいと思ったのは、自分が作ったモノを使った人に喜んで貰いたいという想いがあり、そういったことに取り組める業界はどこだろうかと考えていました。

そんな時、就活メディアであるGoodfindを見つけて、いくつかのセミナーに参加する中でサマーインターン先として何社かご紹介いただきました。前職はその内の1社でした。

私が就職活動していた2011~12年はちょうどソーシャルゲーム市場が急成長していて、モバゲーやGREEのプラットフォームにゲームを提供するデベロッパーがどんどん出てきていました。優秀な人材や潤沢なキャッシュが業界に集まってきている時期で、そんな環境に身を置けば自分の成長スピードを上げられる。そう思っていました。

そして、インターネットは世界中に繋がっているインフラなので、いろんな人に自分が作ったサービスを届けられるという点も魅力的でしたね。

他にも内定をいただけたベンチャー企業もあったのですが、軸の1つであった「自分の市場価値を上げる」という点においても前職は良い環境だと思い、入社することを決めました。

ソシャゲ(ソーシャルゲーム)のデベロッパーは、当時はもう雨後の筍のように乱立していました。前職の強さは開発組織の強さ。自社で企画したものを、エンジニアもデザイナーも内製で開発している企業は意外と少なかった。

当時、組織規模が(社員数)60名くらいで、経営陣との距離も近く、「やりたいサービスが決まったら社長に直接プレゼンして、予算を承認してもらえたら社内メンバーを集めてやれてしまうのではないか?」と考えられたことが、入社の決め手です。

前職ではどんな業務に携わったんですか?

金田実は3つの新規タイトルの立ち上げに関わったんですが、どれもうまくいきませんでした。当時はとても辛くて、サービス作りは大変だと思い知る経験となりました。

社内にゲームやアプリ開発のノウハウが本格的に蓄積される前の段階だったので、正解がわからぬままがむしゃらにやっていたんです。とりあえずやってみて、次失敗してもまたやってみるしかないという状況でしたね。

正直会社を辞めたいな、と思った辛い時期もありましたが、「この会社で逃げたらこのまま何も成功せずに終わるな」、「新卒で何もできない私みたいな人間を雇ってくれたのでなんとか恩返しがしたい」と思い、踏みとどまっていました。

そして、2年目になってようやく、自分で考えた新規タイトルの企画書が初めて社内で通った。それが現在も前職の主力タイトルとなっているプロダクトです。

最初は立ち上げメンバーを社内で募り、私を含めて4人くらいでスタート。振り返れば、競合がカバーできていないけどユーザーニーズのありそうなイラストデザインを考えたり、ユーザー拡大のための戦略をローンチ前に考えて将来必要になる機能を事前に開発したりと、過去の立ち上げ失敗から学んだ事を活かしてスタートできた気がします。

すると、ローンチ直後からユーザー数が順調に伸びていって、結果的に社内でトップレベルの売上が出せるタイトルへと成長。その後、会社としても良い流れで上場を果たしました。

やっと少しは恩返しできたかな、とそれまでの失敗で会社に迷惑をかけていたので少しホッとしましたね。そして就職活動をしていた頃から私が目指してきたものは全く変わっていません。

ずっと自分で企画したタイトルを作って成功させるために取り組んでいました。そこまでやりきることができたのは、自分のキャリアの中で本当に良い経験だったと今でも思います。

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日本の文化を変えたい

なぜ転職を考えるようになったんですか?

金田自分にとっての最終ゴールが何かと考えた時に、「日常的に誰もが使うインフラといえるようなサービスを作りたい」と思ったことがきっかけです。立ち上がりの「0→1」フェーズからしっかり成長し続けて、「1→10」、「10→100」と、世の中全体にまで浸透していけるサービスって本当に少ないと思うのですが、だからこそチャレンジしたいと。

また、どんなに細かく具体的な将来のプランを練ったところで10年先は何があるかわからない。今とは全く違うトレンドが訪れて、うまくいきかけているサービスも、そううまくはいかなくなるかもしれない。

だから今10や20のフェーズにあるサービスに携わって、それが100になれるかどうか、インフラと呼べるサービスになるかどうかが決まるこの5年くらいで、自分のキャリアとしても勝負をかけねばと考えていました。

そのタイミングで、エウレカの共同創業者であり、当時CEOだった赤坂と出会い、話す機会がありました。

「この会社で成し遂げたいことは何ですか?」と彼に尋ねると開口一番、「文化を変えたい」と言ったんですよ。

「インターネットをきっかけに出会って恋人を作る、ということが日本の文化となるには、まだまだ世の中の抵抗が多くある。だけどそれを本気で変えたい。僕らはプロダクトを作ろうとしているのではなく文化を作ろうとしている」と。

クールで冷静そうに見える赤坂のその熱い言葉が、胸に突き刺さったのを今でも覚えています。

自分の夢の達成のために、自分と同じ思考を持ったメンバーが必要だと思っていたので、「ここならやりきれそうだ」と確信を得て入社を決めました。

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難易度が格段に上がるフェーズ、10→100

今エウレカではどんな業務を行っているのですか?

金田私は“Head of Product”という肩書で、恋愛・婚活マッチングサービス「Pairs」の国内向けプロダクト開発統括を担当しています。具体的な業務は、「開発前の要件定義」、「開発中の要件調整・品質保証」、「開発後の効果測定」の3つ。

簡単に言うと、経営陣が作った戦略を理解して、プロダクトの開発ストーリーに落とし込み、Pairs事業部内で最適な人員配置をしたり、開発を指揮したりしています。

Pairs(ペアーズ) - Facebookを利用した恋愛・婚活マッチングサービス

この立場だからこそ実感している部分もあるんですが、いまの「Pairs」のような「10→100」のフェーズにおいて、プロダクトと経営はリンクしています。

メンバー個人のKPIを追って部分最適もしなきゃいけないし、経営陣が考えているビジョンをどうやって達成していくのかも合わせて考えなければいけない。どう考えても自分1人でできることではないんです。

私個人の意見としては「10→100」は「0→1」と比較しても難しさが格段に上がると思っています。

サービスの立ち上げ期も拡大期も両方経験した金田さんに、その違いを聞きたいです。

金田大きな違いはマネジメントの有無ではないでしょうか。「0→1」は、資金とコアとなる優秀なメンバーを集めることで、ある程度のところまで個々の勢いで何とかなる、というのを周りの起業家から聞いたり、近くで見ていたりして感じます。

一方の「10→100」って、ものすごく人が絡むんですよ。サービス開発はメンバーが10人を越えたあたりから格段に難しくなる。

前職のプロダクトマネジャーだった頃は、この点がとてもしんどいと感じて。何がしんどいかというと、自分が全てを見きれないんですよね。

少人数の場合、自分が考えていることと実際のチームの動きが一致しやすく、スピードも出やすい。それが大きな組織、10人を越えたチームになってくると、自分が考えたことをメンバーに共有して、目的を理解した上でアクションに移してもらうまでのプロセスが複雑で時間もかかる。

メンバーの動きが想定と異なるときは思考をすり合わせないといけないし、どうすれば目標まで最短で到達できるのか一緒に考えなければいけない。

私はそういったことを考える、いわゆる“マネジメント脳”に切り替えるのに相当時間がかかりました。自分の成長フェーズの中で最も苦しかった時期ですね。

どうやってその難しさを乗り越えたのですか?

金田自分のエゴを捨てました。これはスポーツと結構似ているなと思っていて。スタンドプレーで活躍できる人は、ほんの一握り。例えば、サッカーの試合で、監督の意向を無視して結果が出せないと絶対ベンチに下げられるじゃないですか。誰しもそうなりたくはないですよね。

でも仕事となると、それと同じようなことをしている人が案外多いことに気づきました。1人で考えたことを誰にも相談せずに進めてしまう。なぜなら、「みんなを驚かせたい。すごいと思われたい」、そういった気持ちが少なからず誰にでもあるものだから。

しかし現実的には、作業に取り掛かる前にメンバーと考えを共有して役割分担しながら進めた方が絶対に早くいいものができる。だから、本当に良いサービスを作ることにフォーカスするのであれば、自分からメンバーとしっかりコミュニケーションをとって、彼らの得意分野を知っておくこと。

私自身、その大切さに気づけたおかげで、本来の自分の役割が見えてきました。「大きなことを成すためには、チームで勝たなければいけない」という思考を持てるようになりましたね。

プロダクトマネジャーの役割に関しても極めたつもりなんてもちろんないですし、経営陣と話していると事業戦略やファイナンスなどの基本的かつ体系的な経営知識が足りていないと感じることも多くあるので、週末はカフェにこもって本を読みながら日々勉強しています。

最後に、20代にアドバイスをお願いします。

金田「0→1」よりも「1→10」「10→100」のサービス拡大期を率いる経験を、できるだけキャリアの早い段階で積んだほうがいい、ということです。私はたまたま20代で両方経験しましたが、難しさは格段に上がるのですが、チームで立ち向かわないといけないからこそ見えてくる面白さが「1→10」「10→100」にはあるんです。

それに、10から100になるサービスはそこまで多くあるわけではないため、「10になったサービスを100にできます」という風に自信を持って言える人も多くはないんですよね。だからこそ、その経験をもっていれば希少性が高まり、どこでも必要とされるユニーバーサルに優秀な人材に近づけると思います。

そして、やっぱり何と言ってもまずは、自信を持って人に語れる成果をビジネスで上げることが大切ですね。私もエウレカ入社前の転職期間にさまざまな経営者の方々とお会いする機会をいただきましたが、新卒のときに同じようにその方々にお会いしたいとどんなに強く希望しても、相手にはほとんど全く興味を持っていただけなかったと思うんですよ。

前職で一定の成果を出せたからこそ、当時の私に興味を持ってくれる人と出会うことができた。

営業でトップになるでも、100万人が使うサービスを作るでも何でもいいから、自分が誇れる実績をまずは作ること。「そんな環境、今の会社じゃ与えられないよ」と思うなら、社長に直談判したっていい。

「絶対にヒットするサービスを0から作る」と新卒の時から決めてやり遂げられたことが、今思うと自分の自信につながっていますから。

こちらの記事は2017年10月12日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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