オンラインコーチング、音声版Netflix、スキマバイト 日常を変える注目スタートアップ3社──FastGrow Pitchレポート
「イノベーターの成長を支援し、未来社会を共創する」をミッションに掲げるFastGrowが、「この会社、将来大きなイノベーション興しそうだ!」と注目するスタートアップをお呼びして、毎週木曜朝7時にオンライン開催する「FastGrow Pitch」。
登壇するスタートアップが目指すビジョンや事業内容、創業ストーリー、どんな仲間を探しているのかなどをピッチ形式で語るイベントだ。
本記事では、ピッチの模様をダイジェスト形式でお届けする。登壇したのは、株式会社Boot home、株式会社EARS、株式会社タイミーの3社(登壇順)だ。
株式会社Boot home:健康的な生活習慣づくりに伴走するオンラインコーチング
最初に登壇したのは、ダイエット・筋トレのオンラインコーチングサービス『Boot home』を運営するBoot home代表取締役 宮地俊充氏。
『Boot home』は、コーチがLINEで食事のアドバイスやトレーニングの指導など、健康的な生活習慣づくりに伴走しつつ、ライブレッスンやフィットネス動画を提供するサービスだ。
宮地氏は、自身が創業したオンライン英会話の運営会社を大手予備校に売却した経験を持つ。その後、エンジェル投資家や音楽活動などをする中で、自分の興味が「体を鍛えること」に集中し、事業構想を練り始める。『Boot home』のアイデアはトレーニングや食事管理に取り組む中で「継続に壁を感じる人が多い」と気づいたことから生まれた。
宮地医療費増大による国の財政圧迫が社会問題になっていますが、そもそも運動習慣をつけたり、食事管理をしたりすれば、病気になるリスクを下げることができます。
医療のDXがトレンドになりスタートアップも生まれていますが、その前に運動や食事の決定的なサービスを出す方が社会的意義が大きいのではないでしょうか。
一方で、運動や食事は「重要ではあるが緊急ではない事項」なので、ユーザーがついたとしても個々のモチベーションが高くなく、健康的な身体を手に入れるためにやるべきことは明確でもなかなか継続できません。これは過去の教育業界での経験やノウハウが活かせそうだと考え、コーチング&フィットネス領域での事業を立ち上げました。
紹介してくれた具体例がわかりやすいのでほぼそのまま掲載する。某有名ジムに入会したものの3か月目には一切通わなくなっていたあるユーザー。しかしこのサービスでLINEコーチングを受け、「なぜできなかったのか」などシンプルな問いとの対話を繰り返すうちに、自ら解決策を見つけ、ジムに通うだけでなく、ランニングも行うまでに意識改革が進んだという。
現在、日本国内のフィットネス市場の規模は5,000億円と言われている。とくに米国では家庭で行うダイエットやトレーニングなどの「ホームフィットネス」が注目を浴びており、今後日本でも市場が拡大するはずだと宮地氏は予想する。
また、競合の伴走型フィットネスサービスは月額30万円を超えるものもみられるが、『Boot home』は月額2,980円と手頃な価格で始められるのも特徴だが、その裏にある狙いも語った。
宮地現在、とにかくデータやノウハウが欲しいので、あえて一次的に安価にしています。我々が提供している価値は「やり切らせること」です。オンラインで完結するけれども、付加価値は高い。競合の30万円のパーソナルジムとは比較しようがないくらい圧倒的なサービスになるように日々商品開発しています。
現在Boot homeはフィットネス分野に詳しい女性COOやエンジニアを募集している。「興味がある人はFacebookでも良いので気軽に連絡をください」とピッチを締めくくった。
採用情報
株式会社EARS:プロ制作のコンテンツで音声アプリ業界の「Netflix」を目指す
次に登壇したのはプロ制作の音声コンテンツ配信アプリ『ear.style』を提供するEARS代表取締役の萩原湧人氏。2020年1月にANRIからシードラウンドでの資金調達を受けている。
『ear.style』は、プロの脚本家や声優を中心に制作された音声コンテンツを配信している。その理由を萩原氏は次のように語る。
萩原日本で音声コンテンツがもっと普及するには、プロ制作のコンテンツが必要だと考えています。
もちろん「誰でも簡単にスマホから音声コンテンツを配信できる」のも素晴らしいことです。ただ、聴取するユーザー目線で言えば、本当に聴きたい音声コンテンツはまだまだ少ない現状もあると捉えています。
『ear.style』が目指すのは、「音声版Netflix」です。プロが制作した1話3分程度のボイスノベル(1作品で10話構成)を中心に取り扱います。Webではなくアプリで提供している点も、ユーザーニーズに合わせつつ、実は市場において競合が少ない部分を攻めた特徴です。
EARSの特徴は、インハウスの制作チームを中心に、質の高い音声コンテンツを効率的に制作する体制を構築していることだ。プロットは社内のスタッフが脚本家と相談しながら作成、音声は宅録環境のある声優に依頼し、社内のサウンドクリエイターが編集・演出を行う。
萩原現在は、アニメや声優に関心のある層を狙ったボイスノベルが多いですが、今後はVtuberやアイドルによるものやビジネス系など、コンテンツの幅を広げていく予定です。
EARSは2020年8月に声優プロダクションのアル・シェア、2020年9月に博報堂DYメディアパートナーズと協業を開始した。来年中のユーザー数10万人到達を目標に掲げ、新しい仲間を積極的に募集中。「興味のある方は、ぜひ気軽にTwitterでDMをください」と呼びかけた。
採用情報
株式会社タイミー:スキマ時間にすぐ働ける人材系マッチングアプリ
最後に登壇したのは、スキマ時間でバイトができる人材系マッチングアプリ『Timee』を運営する、タイミーのマーケティングマネージャー中川祥一氏。広告代理店・事業会社でマーケを経験し、現在はユーザー側・クライアント側双方に対するマーケを担う。
『Timee』は、「この時間なら働ける」人と、「この時間だけ働いてほしい」企業をマッチングするサービスだ。働き手は面接や履歴書なしで、好きな時間にバイトをし、終了後すぐにお金を受け取れる。
アプリのリリースから約2年で、登録店舗数は2万5,000店舗を超えた。働き手の登録者数は150万人を突破している。
「創業者に変わり、ストーリーを伝えたい」と登壇。『Timee』のアイデアは、創業者の小川嶺氏が起業を断念し、単発のアルバイトをしていた経験から生まれたと紹介した。
中川日雇いで働こうとしても、事前面接やメールでの日程確認、前日の電話確認など、当日以外にもやるべき業務が沢山あった。その煩雑さがTimeeを構想するきっかけでした。
企業にとっても活用するメリットは大きい。急に人手が足りないときに素早く人を集められる。案件の掲載にお金もかからない。一度働いてマッチする人がいれば、採用につなげることもできる。
また、いわゆる「スキマアプリ市場」における競合優位性として、アクティブユーザー数(量)と起動率(質)から、データ上でNo.1という点も示す。
中川新型コロナウイルス感染症の影響で、4月頃は飲食店の求人が激減し、売上に大きく影響しました。しかし、その後ECの利用者が増加したことで物流関係の求人が増え、7月以降は売上が回復、働き手側、企業側ともに順調に伸びています。
タイミーは2020年9月に13.4億円の資金調達を実施。従業員は150人(アルバイト・業務委託含む)を超え、引き続き拡大予定だ。「エンジニア・セールス・マーケターと幅広く募集しているので、Wantedlyから連絡をお待ちしています」と中川氏はピッチを終えた。
採用情報
第18回目となったこの日は、フィットネスや音声配信アプリ、人材紹介など、人々の日常と密接に関わる領域でサービスを展開する企業が登壇した。
今後も毎週木曜朝7時の「FastGrow Pitch」では、注目スタートアップが登壇し、自ら事業や組織について語る機会をお届けしていく。ぜひチェックしてほしい。
こちらの記事は2020年10月28日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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