連載スタートアップを知りたいならここを見よ!FastGrow注目スタートアップ特集──FastGrow Pitchレポート

「シェア買い」アプリ、「環境移送」ベンチャー。
新領域を率いるプレイヤーが集結──FastGrow Pitchレポート

登壇者
門奈 剣平

1991年生まれ。日中ハーフ。2007年まで上海で生まれ育つ。2015年慶應義塾大学環境情報学部卒。2012年より「Relux」を運営するLoco Partnersに、2人目のメンバーとして入社。シード前からM&A後のPMIまで経験。海外事業立ち上げから責任者を務め、年間取扱高50億円の大幅な事業グロースに貢献、海外担当執行役員&中国支社長兼任。2020年4月よりカウシェを起業。強みはチームビルド、大型提携、アジア進出など。

竹内 四季

1994年生まれ。ラ・サール中高、東京大学経済学部卒業。新卒でメガベンチャーに入社、年間200名超の経営者に対するコンサルティング営業、事業開発に従事。2020年2月、COOとしてイノカにジョインし、ビジネスサイド全般を管轄。AI受託開発事業、ESG経営コンサルティング事業の立ち上げを指揮。同年11月、取締役就任。イノカの持つサイエンス / テクノロジーの知見と自身のビジネス開発力を活かし、「環境保全」と「経済合理性」を両立する事業開発を推進中。

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「イノベーターの成長を支援し、未来社会を共創する」をミッションに掲げるFastGrowが、「この会社、将来大きなイノベーション興しそうだ!」と注目するスタートアップをお呼びして、毎週木曜朝7時にオンライン開催する「FastGrow Pitch」。

登壇するスタートアップが目指すビジョンや事業内容、創業ストーリー、どんな仲間を探しているのかなどをピッチ形式で語るイベントだ。

本記事では、ピッチの模様をダイジェスト形式でお届けする。登壇したのは、株式会社X Asia、株式会社イノカの2社(登壇順)だ。

  • TEXT BY OHATA TOMOKO
  • EDIT BY HARUKA MUKAI
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株式会社X Asia
新たなソーシャルコマース領域を拓く「シェア買い」アプリ

株式会社X Asia

最初に登壇したのは、X Asia代表取締役の門奈剣平氏。同社の展開する『KAUCHE(カウシェ)』は、友人や家族などと一緒に商品を購入(=シェア買い)することで、お得に商品を手に入れられるソーシャルコマースアプリだ。

ユーザーは、アプリで好きな商品を購入すると、「シェア買いグループ」を作成できる。グループのURLを友人や家族に共有し、一定時間内に決まった人数が集まれば、定価より安く商品を購入できる。通常のECサイトで購入する時に比べて平均5〜30%、最大なんと70%もお得に買い物ができるという。

購入者だけでなく事業者側のユーザーのメリットも大きいと門奈氏は語る。

門奈従来のECサイトやECアプリでは、訪れたユーザー10人のうち、商品のURLなどをSNSで拡散する人がたったの1~2人程度でした。一方『KAUCHE』では、10人中10人はすでに購入意欲が高く、割引のために積極的にSNSを介し、友人や家族と情報をシェアします。より自然な形でオーガニック流入を増やすことができるのです。

『KAUCHE』のシェア買いの仕組みは、中国の新興ソーシャルコマースプラットフォーム『Pinduoduo』を参考にしたものだという。『Pinduoduo』では、友人や家族などと共同で商品を安く購入できるだけでなく、毎日のログインでクレジットが付与される機能や、仮想空間でフルーツを育て、実際にフルーツを受けとれるアプリ内ゲームなど、多様な機能を備えている。

門奈氏は中学生まで中国で過ごし、前職のLoco Partnersでは中国子会社の支社長としても活躍した。2020年4月にコロナ禍で事業を立ち上げた背景には日本の物流やECが抱える課題がある。

門奈日本の小売は今でも90%以上がオフラインで動いています。そのためコロナ禍では、オフラインの販路が失われ、多くの事業者が販路に苦しんでいました。特に飲食業界におけるダメージを目の当たりにして、何かできることがないかと思ったんです。

その時に頭に浮かんだのが、『Pinduoduo』など中国のECを率いるプレイヤーでした。オフラインに変わる販路を提供することで、コロナで困っている日本の事業者の方を応援したいと考えています。

『KAUCHE』について、より詳しく知りたい方はこちら

門奈氏は、コロナ禍で日本においてもEC化やキャッシュレス化は更に進み、オンラインでの買い物へのハードルは下がっていくと予想する。

門奈中国でもWeChat PayやAlipayが浸透してキャッシュレス化が進んだ後、新たなサービスが次々と立ち上がりました。日本においても同じ流れが生まれるはず。特に『Pinduoduo』のようなソーシャルコマースサービスは、これから日本市場でも成長する可能性が高いと考えています。

今後は『Pinduoduo』のようなゲーム機能なども追加し、「友人や家族など楽しくコミュニケーションをしながらお得に買い物ができる『世界一楽しいショッピング体験』を目指す」同社。2020年11月には、ANRIやグローバル・ブレイン、千葉道場ファンドから総額約1.8億円の資金調達を発表した

メンバーの8割が副業で参画しているものの、順調にサービスをグロースさせている。「経営の視点を持ったBiz職のCXO候補を募集しています。また最先端の技術スタックに興味あるエンジニアも複数名募集しています。他にも副業やインターンなど積極的に募集しているので、お気軽にお問い合わせください」と門奈氏はピッチを締めくくった。

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株式会社イノカ
アクアリストとテクノロジーの知見を生かし、
自然と人類の共生を目指す

株式会社イノカ

続いて登壇したのは、イノカCOOの竹内四季氏。同社は、魚やサンゴなどを飼育するアクアリストの知見とIoTやAI技術をかけ合わせ、海の生態系の理解と再現に取り組む。

ピッチの冒頭、竹内氏は「かなりニッチなディープテック領域のビジネスを行っています」と前置きし、事業の前提となる「サンゴ礁をめぐる課題」について共有した。

竹内サンゴ礁は、世界でもっとも重要な生態系の一つです。海の生き物の4分の1がサンゴ礁に依存しているだけでなく、人間にとっても重要な役割を担っています。サンゴ礁によって、漁業や観光業などを通し、およそ3兆円規模の経済効果があるという調査もあります。

しかし、近年は地球温暖化やごみ問題の影響でサンゴは絶滅の危機に瀕しています。20年後には約9割のサンゴ礁がなくなってしまうのではないかとも言われています。

そうした課題を解決するため、イノカは「環境移送技術」の研究開発や社会実装に取り組んでいる。「環境移送技術」は特定地域における海の生態系を、水槽などの人工的な空間において持続可能な形で再現する技術だ。

現在は「ひろめる」「のこす」「いかす」の3つの領域で事業を展開している。「ひろめる」事業では、環境移送技術やIoT・AI技術を活用し、サンゴ礁を再現した水槽を用いた教育プログラムやワークショップを開催している。

「のこす事業」では、絶滅危惧種の保護を目的とした共同研究を大手ゼネコンや大学とともに実施。「いかす事業」では、商業施設やオフィスに人口の生態系を設置し、コミュニケーションを促すなど、「生態系の価値を社会に活かす」取り組みを進めている。

イノカの特徴は、アクアリウムへ深い知見と技術を持つメンバーが所属している点だ。

竹内CEOの高倉は、幼い頃からアクアリウム(=水槽を置いて魚を飼うこと)を趣味としていました。また、日本で初めてチーフアクアリウムオフィサー(以下、CAO)に就任した増田直記は、自宅の半分を改造し、35年のローンをかけて巨大な水槽を設置しています。長年の試行錯誤を経て、日本で一番サンゴが繁栄している水槽を作り上げたと聞いています。

アクアリウムを極めたメンバーの職人技術と、高倉氏の専門とするエンジニアリングの技術がイノカの強みとなっている。

それを示す事例には事欠かない。2020年5月には、虎ノ門にあるオフィスビル内の水槽でサンゴの人工抱卵(産卵前の卵を抱えている状態)を実現した。実験では、水槽内の水質や水流を制御する独自エンジンと、沖縄のリアルタイムの海水温データを紐づけ、IoTデバイスを用いて水槽内に送信し続けた。竹内氏は「弊社オフィスの水槽では、首都圏で唯一、健康的なサンゴ礁が見られます」と語る。

 

また、2020年8月には、商船三井の「自然環境保護・回復プロジェクト」にも参画した。商船三井の貨物船が座礁したモーリシャス沖合において、現地のNGOと共同で海やサンゴ礁の状態にまつわるデータを収集するプラットフォームを構築するなど、環境回復に取り組んでいる。

研究の成果を共有した上で、竹内氏はイノカの事業が目指す方向性についても言及した。

竹内環境保全といったキーワードを聞くと「儲からない」といったイメージがあるかもしれません。しかしイノカが追求するのは「環境保全と経済合理性を両立させた事業開発」です。

SDGsといったトレンドも見据えながらしっかりと事業を伸ばし、生態系の価値そのものが社会に還元され、一つの経済が築かれる状態を目指したいです。

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第28回目となったこの日は、「シェア買い」や「環境移送技術」など国内に浸透していない新しい概念を提案するスタートアップが登壇した。

今後も毎週木曜朝7時の「FastGrow Pitch」では、注目スタートアップが登壇し、自ら事業や組織について語る機会をお届けしていく。ぜひチェックしてほしい。

こちらの記事は2021年01月20日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

大畑 朋子

1999年、神奈川県出身。2020年11月よりinquireに所属し、編集アシスタント業務を担当。株式会社INFINITY AGENTSにて、SNSマーケティングを行う。関心はビジネス、キャリアなど。

編集

向 晴香

inquire所属の編集者・ライター。関心領域はメディアビジネスとジャーナリズム。ソフトウェアの翻訳アルバイトを経て、テクノロジーやソーシャルビジネスに関するメディアに携わる。教育系ベンチャーでオウンドメディア施策を担当した後、独立。趣味はTBSラジオとハロプロ

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