マーケティング特化の動画クラウドサービス、日本円連動ステーブルコイン。
次代を拓く注目スタートアップが登場──FastGrow Pitchレポート
「イノベーターの成長を支援し、未来社会を共創する」をミッションに掲げるFastGrowが、「この会社、将来大きなイノベーションを興しそうだ!」と注目するスタートアップをお呼びして、毎週木曜朝7時にオンライン開催する「FastGrow Pitch」。
登壇するスタートアップが目指すビジョンや事業内容、創業ストーリー、どんな仲間を探しているのかなどをピッチ形式で語るイベントだ。
本記事では、ピッチの模様をダイジェスト形式でお届けする。登壇したのは、株式会社リチカ、JPYC株式会社の2社(登壇順)だ。
- TEXT BY OHATA TOMOKO
- EDIT BY HARUKA MUKAI
株式会社リチカ
マーケティングに特化した動画クラウドサービス
最初に登壇したのは、マーケティング動画クラウドサービス『リチカ クラウドスタジオ』を開発・運営しているリチカCMOの田岡凌氏。
冒頭で、田岡氏は企業の動画作成における課題について共有した。
田岡動画広告やデジタルサイネージの市場は、ここ数年で急成長。また、5Gによる外部環境の変化や新しいメディアの台頭と並行し、配信枠の種類も増加しています。
一方で、配信する動画作成には、まだまだ時間や工数がかかる。制作会社に発注すると、クオリティは高いが、コストや時間がかさみます。かといって動画作成ツールでは、求めるクオリティを保てないこともある。
また、そもそもSNSやメディアに精通したマーケティング人材やナレッジが不足しているなど、難しい状況です。
こうしたコスト、クオリティ、専門性における課題解決を目指すのが、『リチカ クラウドスタジオ』だ。田岡氏は「マーケティングの成果から逆算し、誰でもプロクオリティの動画を作成できるクラウドサービスです」と紹介する。
リチカ クラウドスタジオでは、1500種類以上のフォーマットから用途にあったものを選び、ドラッグアンドドロップで動画や画像を簡単に編集できる。フォントや色、BGMなど基本的な編集機能のほか、オプションで自動字幕やAIナレーションなど、30種類以上の機能を利用できる。Snapmart、Unsplash、Pixabay、PIXTAとも連携しており、追加料金なしでリッチなコンテンツ制作が行える。
また、バナーやカルーセル、GIFなどの動画形式にも対応。PCやデジタルサイネージ、スマホなど、配信形態も自由に選べる。
2021年7月時点で400社以上が導入が進み、大手企業のみならず、広告代理店などにも利用されているという。
さらなる成長に向け、田岡氏は「クリエイティブによるターゲティング」と「クリエイティブのPDCA」をキーワードに挙げた。
田岡今、マーケティングは大きな転換期を迎えていると思います。
コロナ禍で顧客との接点はより多様化しています。それに対応していく必要がある一方、サードパーティークッキーの利用制限や、スマホにおけるアプリトラッキングの透明性を向上させる取り組みなどにより、従来のターゲティング手法を用いるのは難しくなっている。
そこで私たちが打ち出しているのが「クリエイティブターゲティング」です。今までよりも細かく、ペルソナごとに最適化したクリエイティブを量産し、それぞれに届けることで、顧客に関心を持ってもらいやすく、より顧客に刺さるものを作れると考えています。
また、多様化した顧客のニーズに応えるには「クリエイティブのPDCA」が欠かせません。サイトに載せる画像と同じように、動画も複数パターンを作成し、ABテストを行うことで、大幅な改善が期待できます。一定金額で動画を好きなだけ作成できるSaaS型を採用しているのも、こうした理由からです。
今後も「次世代のマーケティングを実現していきたい」と語った田岡氏。採用も積極的に行っており「マーケティング領域のカスタマーサクセスに関心のある方は、ぜひお声がけください」と参加者に呼びかけた。
採用情報
JPYC株式会社
仮想通貨と実際の決済を融合する、日本円ステーブルコイン
続いて登壇したのは、JPYC代表取締役の岡部典孝氏。「社会のジレンマを突破する。」を掲げ、ステーブルコイン『JPYC』を発行する。
JPYCとは、ブロックチェーン技術を活用した、日本初の日本円に連動するステーブルコインだ。ステーブルコインとは、安定した取引価格が実現できるように設計された仮想通貨で、海外においては米国のCircle社が発行する米ドル連動の『USD Coin』などが急成長し注目を浴びている。
JPYCは、1JPYC=1円のレートで購入し、通貨同様モノや体験の購入に利用できる。分かりやすい例で言えばSuicaや図書カードのように前払式支払手段として扱われるものだ。岡部氏は、暗号資産を円に交換する手間を省き、よりシームレスな決済を実現したいと強調する。
岡部暗号資産を使って日本で商品を購入したり、サービスを受けたりする場合、現状のやり方では、交換業者に手数料を支払いって円に替える必要があります。また、取引所で交換する場合も、本人確認に1週間かかったり、情報流出の恐れもある。
暗号資産のマーケットは拡大している一方、利用の入口と出口は細く詰まっている。こうした障壁や煩雑さを取り払うことを目指すのがJPYCです。
JPYCは、すでに様々な決済に対応している。楽天やヤフーショッピングなどのECサイトでの利用はもちろん、Vプリカギフトに交換し、PayPayや楽天Pay、d払いなどにも紐付けられる。また、ふるさと納税の支払いも近々JPYCで行えるようになるという。
岡部氏は「2021年の1月末に発行されて以来、流通量を順調に伸ばしている」と共有する。NFTマーケットプレイスや会計事務所、分散型ブログサービスなどとも連携を進めている。今後は第三者型ライセンスを導入し、加盟店がJPYC決済を受け付けられるようにする予定だ。決済の手数料は0.5%と、一般的なクレジットカード決済に比べ、低価格で導入できる。
上場も見据えているというJPYCは、社員の平均年齢24歳と、若いメンバーで構成されている。10代のメンバーも多くCTOの小野氏は18歳だ。
さらに質疑応答では「ICS(インシデント・コマンド・システム)」を取り入れた独自の組織づくりについて語られた。
岡部ICSは、米国において、組織が緊急事態に対応するための仕組み。消防や軍隊で導入されてきたもので、現場の指揮官に全権限が与えられている点が特徴です。
スタートアップはいわば毎日が緊急事態ですから、意思決定のスピードを上げるために、弊社では常にICSで組織を運営しています。現場のメンバーが、上司などにお伺いを立てることなく、素早く意思決定を行います。
これにより、クレームが発生したときなども、会議による意思決定を待たず、現場のメンバーが迅速に対応できる。一般的な組織では、議論や検討をしている間に、事態が悪化してしまうこともあります。いわば火が燃え広がるような状態を防ぐ仕組みを築いています。
「全職種で採用を募集中です。ご興味ある方はお問い合わせ下さい」と語り、ピッチを締めくくった。
採用情報
記念すべき第49回目となったこの日は、マーケティング特化型の動画クラウドサービス、日本円ステーブルコインが登壇した。
今後も毎週木曜朝7時の「FastGrow Pitch」では、注目スタートアップが登壇し、自ら事業や組織について語る機会をお届けしていく。ぜひチェックしてほしい。
こちらの記事は2021年07月20日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
次の記事
執筆
大畑 朋子
1999年、神奈川県出身。2020年11月よりinquireに所属し、編集アシスタント業務を担当。株式会社INFINITY AGENTSにて、SNSマーケティングを行う。関心はビジネス、キャリアなど。
inquire所属の編集者・ライター。関心領域はメディアビジネスとジャーナリズム。ソフトウェアの翻訳アルバイトを経て、テクノロジーやソーシャルビジネスに関するメディアに携わる。教育系ベンチャーでオウンドメディア施策を担当した後、独立。趣味はTBSラジオとハロプロ
連載スタートアップを知りたいならここを見よ!FastGrow注目スタートアップ特集──FastGrow Pitchレポート
79記事 | 最終更新 2022.05.13おすすめの関連記事
資金調達のホントの話──起業家と投資家がシード期のやりくりを生々しく語る
- 株式会社kikitori 代表取締役社長
【トレンド研究】デリバリー市場の裏に潜む革命──クイックコマースと最新技術が変える「生活の新常識」
- 株式会社出前館 代表取締役社長
「エンプラ事業のセールス、相当アツいです」──人材育成とポートフォリオ戦略に強いRAKSULが放つ、セールスキャリアの拡張
- ラクスル株式会社 執行役員 / ラクスル事業本部 Marketing&Business Supply統括部 統括部長
令和のスタートアップは、“Day1意識”と“半歩先”を同時追求せよ──組織・事業の成長を両立させるX Mile COO渡邉とファインディ CEO山田による経営論対談
- X Mile株式会社 Co-Founder COO
【トレンド研究】スタートアップならではのDEI──30社超のポリシー・取り組みの事例から考察
「オープンイノベーションに絶望したあなたへ」──協業に泣いた起業家が、起業家を救う?UNIDGEに学ぶ、大企業との共創の秘訣
- 株式会社ユニッジ Co-CEO 協業事業開発 / 社内新規事業専門家 連続社内起業家
採用戦略の真髄は“狭報”にあり──インキュベイトファンド×DNX Ventures×FastGrow スタートアップ支援者が見る採用強者の共通項
- インキュベイトファンド株式会社 コミュニティマネージャー
「もはやシニア“も”含めた戦略が必須の時代に」──シニアDXで大手との協業多数。オースタンス主催の国内最大級カンファレンス“AEC2024”とは
- 株式会社オースタンス 代表取締役社長