お金のオンライントレーニング、リテール金融特化型のCRMツール。注目のフィンテックスタートアップが登壇──FastGrow Pitchレポート
「イノベーターの成長を支援し、未来社会を共創する」をミッションに掲げるFastGrowが、「この会社、将来大きなイノベーション興しそうだ!」と注目するスタートアップをお呼びして、毎週木曜朝7時にオンライン開催する「FastGrow Pitch」。
登壇するスタートアップが目指すビジョンや事業内容、創業ストーリー、どんな仲間を探しているのかなどをピッチ形式で語るイベントだ。
本記事では、ピッチの模様をダイジェスト形式でお届けする。登壇したのは、株式会社ABCash Technologies、株式会社MONO Investmentの2社(登壇順)だ。
- TEXT BY OHATA TOMOKO
- EDIT BY YUI TSUJINO
株式会社ABCash Technologies
お金のトレーニングを通して、リテラシーを向上する
最初に登壇したのは、ABCash Technologies代表取締役社長の児玉隆洋氏。同社は、お金のトレーニングスタジオ『ABCash』を開発・運営している。
児玉氏は、新卒でサイバーエージェントに入社し、Amebaブログ事業部長、AmebaTV広告開発局長を担当。2018年にABCash Technologiesの創業に至った。
金融教育に着目した背景について、自身が経験した「お金や将来に対する不安」を挙げた。
児玉大学生のとき、父が心臓の病気で突然倒れ、大規模な手術を経験しました。その際に「大学に通い続けられるのか」など、お金や生活への不安から、将来をポジティブに考えられない時期があって。それが原体験となり、金融やお金にまつわる課題解決に貢献できないかと、ずっと思っていたんです。
その後、社会人になってから、投資や保険、住宅ローンなど、金融にまつわる情報の非対称性にいちユーザーとしてぶつかり、金融教育の分野での起業を決意しました。
『ABCash』は3ヶ月のプログラムでお金の貯め方や増やし方などをトレーニングできるサービス。プロのコンサルタントからマンツーマンで金融知識やノウハウを学べる。受講はすべてオンラインで完結する。
もう一つのサービスである『ABCare』は、ABCashに蓄積されている1万人以上の行動変容データをもとに、従業員の資産形成をオンラインでサポートする。
従業員はクイズ形式の「お金のタイプ診断」で金融リテラシーを判定。結果に合わせた学習動画コンテンツを利用できる。お金について24時間365日オンラインで相談できるサービスも用意されている。
両サービスの特徴は特定の金融商品の販売や斡旋は一切行っておらず、中立性を保っていること。その中立性や、金融教育という市場の新しさゆえ、当初は顧客獲得において苦労もあったという。
児玉お客様から「短期で儲かる商品を教えて欲しい」などと聞かれることも多く、提供したいサービスとユーザーの間に乖離を感じることもありました。
「金融商品を売るしか無いんじゃない?」とアドバイスもいただいたのですが、それだと教育が成り立たないと考えていて。耐えしのぎながらマーケティングの改善を続けました。
そこから2019年の前半、金融庁から老後に2,000万資産形成する必要がありますよといった話があり、国民の資産形成に対する意識が高まったのは、弊社のサービスにとって追い風になりました。もちろん社員が諦めずに金融商品を売らずにいてくれたのも大きかったと捉えています。
現在は主にミレニアル世代の女性向けにサービスを展開。ブランドアンバサダーを務めるのはモデルのローラ氏。児玉氏が直接手紙を送り、チームへの参加が叶った。ローラ氏を選定した理由について「生き方に共感する人も多く、自立する女性のロールモデルだ」と語る。
受講生は累計1万人を突破。今後はデータを活用した新規事業開発、子どもやアスリート向けのサービス拡充なども検討していると語る同社。「現在シリーズCラウンドの資金調達を検討しています。投資や採用にご興味ある方はぜひご連絡ください」と参加者に呼びかけた。
採用情報
株式会社MONO Investment
ヒト×AIでリテール金融業界をアップデートする
続いて登壇したのは、MONO Investment代表取締役の中西諒氏。同社は、リテール金融特化型CRM『MONO Investment』を開発・運営している。
中西氏は、新卒で野村アセットマネジメントに入社し、システム開発や投資ファンドマネージャーとして投資業務に従事。その後、BlackRock Japanを経て、2020年1月にMONO Investmentを創業した。
冒頭、中西氏は「プロ投資家の運用手法を広め、日本のリテール金融をアップデートする」を目標に掲げた理由を共有した。
中西日本のリテール金融では、分散投資の考えが根付いていなかったり、複雑な金融理論を理解されていなかったりと、個人投資家の方々のリテラシーの課題があると感じていました。適切な金融商品を選べない、あるいは日々の値動きを追うのに注力しすぎてしまうといった悩みも少なくありません。
表裏一体になっているのが金融事業者側の課題です。お客様に寄り添った提案をしたくとも、ノルマ達成へのプレッシャーがかかっている。近年では、金融庁が金融事業者に「顧客利益を最優先し、長期視点での運用」を重視するよう求めています。
こうした個人投資家、金融事業者双方の課題を解決し、業界を変革する仕組みを作っていきたいと考えています。
現状の解決策としては「ファンドラップ」と「ロボアド」などが挙げられるという。前者は資産運用をプロに任せられる仕組み、後者はAIなどが自動で資産運用を行う仕組みだ。
中西氏は「メリットもあるが、ファンドラップは人に任せられる一方で手数料が高い、ロボアドは資産運用がブラックボックス化しやすいなど、それぞれ課題がある」と語る。
そこで提案するのが、人間による対面の説明やヒアリングと、AIアルゴリズムによる効率的な運用を掛け合わせたハイブリット型ロボアドバイザーだ。
現在、具体的なツールとして提供しているのが、リテール金融業界特化型のCRMツール『MONO Investment』。顧客情報の管理や保有資産を横断的に可視化・分析する機能を備えている。
2021年4月にベータ版をリリースし、現在は主にIFA(証券会社や銀行に属さず、独立系のファイナンシャルアドバイザー)を中心に、金融事業者で導入されている。
今後はポートフォリオ提案機能の拡充や、個人投資家の運用サポートに特化したサービスを検討。リテール金融における必須ツールになることを目指す。
中西資産運用業界や投資銀行業界には、BloombergやFACTSETなどのツールがある一方、リテール金融業界はそうしたツールが存在せず、各事業者がマーケットを見ながら提案している状態です。MONO InvestmentがIT化を推進し、必須ツールとなっていきたいです。
「エンジニア・ビジネスサイドで採用を募集していますので、ご興味ある方はお声がけください」と中西氏は語り、ピッチを締めくくった。
採用情報
今後も毎週木曜朝7時の「FastGrow Pitch」では、注目スタートアップが登壇し、自ら事業や組織について語る機会をお届けしていく。ぜひチェックしてほしい。
こちらの記事は2021年09月21日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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執筆
大畑 朋子
1999年、神奈川県出身。2020年11月よりinquireに所属し、編集アシスタント業務を担当。株式会社INFINITY AGENTSにて、SNSマーケティングを行う。関心はビジネス、キャリアなど。
編集
辻野 結衣
1997年生まれ、東京都在住。関西大学政策創造学部卒業し、2020年4月からinquireに所属。関心はビジネス全般、生きづらさ、サステナビレイティ、政治哲学など。
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