「600万人の難病患者」を救う"四方よし"のビジネスモデル構築術──Medii山田・GCP高宮対談にみた、投資家も唸る“秀逸”な着眼点と組織作りとは
すぐれたビジネスモデルで注目を集めるスタートアップが、医療の現場を変えようとしている。創業者は、医師であり難病を患う患者でもある。
2024年2月のFastGrow Conferenceで、そんなスタートアップの創業者 / 経営者と、スタートアップを支える経営・組織づくりのプロフェッショナルによる「ビジネスモデル」をテーマにしたトークセッションが行われた。
なお、もちろん「お金の儲け方」のレクチャーなどではない。数多くのステークホルダーを最良のかたちで巻き込みながら、社会価値と経済価値を持続的に創出していく──そんなモデルを構築していく話である。
「ビジネスモデルありきではなかった」という冒頭から、「創業初期に、組織が崩壊してしまった」という苦い経験まで、事業・組織・人について熱く語り合った70分間。
「医師としても患者としても直面した社会構造的な負」の解消を、スタートアップの経営者として、どのようにビジネスとして持続的に成り立たせるのか。その裏側で、10兆円市場といわれる製薬業界の、静かで大きな変化の波を、どのようにとらえ、巻き込み、今後の成長性につなげているのか。白熱のセッション内容をお届けする。
- TEXT BY TOMOKO HAMADA
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
「難病・希少疾患」にフォーカスしたサービスに、お金を払うのは誰か?
(モデレーター河合)──今回は「ビジネスモデル」がテーマのトークセッションです。まずは現在高く評価されているMediiのビジネスモデルについて教えていただけますか。
山田まずは、Mediiがどんな事業をしているかをご紹介します。医師が専門医に医療の専門的な相談をチャットでできる『E-コンサル』というサービスを提供しています。ビジネスモデルとおっしゃったのは、やはりマネタイズについてかと思います。『E-コンサル』は、利用する医師にとって完全無料のサービスです。製薬企業とパートナリングを組む形で、マネタイズしています。
──私(河合)は4年以上前からお付き合いがありますが、その当時はまだ、ビジネスモデルとしてこの形ができあがってはいませんでしたね。どのようにしてこのスキームができあがったのでしょうか?
山田泥水をすすりながらも絶対諦めずあらゆる検証をしてきた結果としての形だと考えています。正解を出すのは自分たちではなく、まさにカスタマーやお金を払う人、市場の流れだという考え方から、あらゆるトライ&エラーをしてきました。
具体的なスキームの理解を深めるために、まずは背景として私たちがなぜ何の課題に取り組んでいるのかをお話したいと思います。皆さん「医療は大事!」ということは異論ないかと思うのですが、中でも、私たちがイシューとして焦点を当てているのは、専門性の高い医療・難病に関する医学の進歩に対して、医師たちがキャッチアップし切れない問題です。技術・情報革新、データ活用などの進歩により、最新の医療や革新的な新薬が加速度的に出現していて、医師の自己献身と努力のみで知識をアップデートし続けることは限界に近づいているのです。その結果、その最新知見や新薬使用経験の有無で診断や治療内容に差異、格差が生じてしまっています。
実際、私自身がその課題を自ら体験した「患者」なんです。それも、一生治らない「難病の患者」です。当事者として直面したのは、難病のような専門性の高い医療を受けることの難しさ、そして対応できる専門医の少なさでした。だからこそ私自身も難病を専門とする膠原病内科医になったのですが、一方で、医師になってから直面したのは構造的な課題。医師として、ひとりの人間としてそこに立ち向かっても、できることは限られていたことを痛感しました。
この課題解決のために起業をしました。仕組みから変えなければ、歴史も現状、未来も変わらないと思ったのです。いまMediiは「誰も取り残さない医療を」というミッションを掲げて全力で取り組んでいます。
──今でこそ、さまざまな医療系スタートアップが起業していますが、Mediiははじめから「難病」をテーマにしていましたよね。
山田はい、難病というと、自分からは遠いものと感じる方も多いかもしれません。でも、一生治らない難病を患う人は、人口の「5%」いるんです。
「5%」って、どう思われるでしょうか?
1クラス40人だとすると2人。“特殊な病気”だとか“自分には関係ない”だとか……。私も当事者になるまでそう思っていました。でも、その病気になる時は突然です。その約半数が20~40代の働き盛りの人たち。残りの半数は子どもたち。日本だけでも、これからの未来を作る600万人もの人たちが関わることなんです。そして今日も誰かが一定確率で病気になっている。それが自分かもしれないし、家族かもしれません。私の場合は、自分自身でした。
この「難病は、意外と身近にある」という気づきは、自分自身が当事者になって得られたものであり、裏返せば「そこには深い課題と大きな市場がある」とのちのち理解していくきっかけでもありました。
──なるほど、「市場」がある。そこで認識した構造的な課題とは、なんだったのでしょうか。
山田それは「難病は診断が付きにくい」ということです。医師の誰もが一生の内に何度も診るような病気と違い、難病は症例数が少ない分、診断するには専門的な知見が必要です。しかし、その難病に対して専門性を持ったエキスパートな医師が「いる地域・いない地域」に、どうしても差が出てしまいます。
山田この図は、家族性地中海熱という病気の患者さんの都道府県別の診断数をその人口で割ったデータを地域別にまとめているグラフです。この疾患のエキスパート専門医は、長崎や北海道にいて、その地域と他の地域だと患者さんの診断数の伸びに差が現れていることを示唆しています。大阪・東京だからといって、全ての疾患のエキスパートが十分にいるとは限らないという実態がわかります。
一方、医師はそれに対してどうしているのか。医師も人間ですから、症例の少ない難病に対して「わからない」ことも多い。だからこそ論文やガイドラインなど、医療の情報を調べようとします。ところが現在、医療の情報というのは指数関数的に増えている状況にあり、医師が医療情報を調べる難易度は年々高まっているのです。
では、どうするか。私たち医師はまず「調べる」。しかし難病は調べても疑問が解決しないことが多いので「聞く」んです。誰に「聞く」か。できれば知り合いの専門医に聞きたい。しかし、7,000以上あるといわれる難病や希少疾患に対して、エキスパートは、全国にそれぞれ数名か数十名程度です。従来は、学会などで偶然出会って、話をしてみるということが多かった。しかし、全ての疾患で数千人の専門医に知り合いで相談できる医師がどれほどいるでしょうか?
山田そこで私たちが提供しているのが『E-コンサル』です。このデジタルプラットフォーム上で相談をすると、1時間以内には適切な専門医とマッチングされチャット形式で回答、解説してくれるという医師向けサービスです。2024年現在、特定指定難病の患者数割合99%をカバーする1,200人以上のエキスパート専門医の先生方に賛同、ご協力をいただいて、日本で最も難渋症例が解決されるプラットフォームに成長しています。
サービスのポイントは2つあります。一つは、『E-コンサル』を活用することで、95%の医師に行動変容が起きていること、つまりより早期に診断をつけられるようになったり、新薬の導入など治療方針の変更が起きるようになったということです。
もう一つ大切なことは、この結果として患者さんの運命が変わることです。たとえば、地域によっては診断がつくのに10年以上かかっていた病気が、ただちに診断されるようになる。早期に診断されれば、その分早期に治療薬の投与がはじめられます。これまでは診断がつかない長い時間、たとえ世の中に治療薬がすでに出ているとしても、その患者さんがその治療薬にラストワンマイル辿りつくことはできませんでした。その長い時間がぐっと短縮される──これはすなわち、患者さんの運命が変わるということなんです。
──冒頭で「製薬企業とパートナリングを組む形のマネタイズ」という話でしたが、ここで、治療薬の話が出てくるんですね。
山田はい、難病の薬剤を開発しているのが、製薬企業です。製薬企業にとってみれば、これまでどれほど投資して難病の薬剤を開発しても、医師が診断をつけられないために、その薬剤が患者さんのもとに届かないという課題がありました。しかし、『E-コンサル』によって診断がつくようになると、薬がより適切に患者に届くようになります。だから製薬企業は、「医師が診断できる」という行動変容を促す『E-コンサル』に対して、大きな期待を寄せてくれているんです。
とはいえ、そもそも難病の薬に、それほど市場性があるのかと疑問に思われるかもしれません。
山田昔はたしかに、高血圧や糖尿病など生活習慣病として多くの方が患う病気の薬の売上が、製薬会社の利益構造の中では大多数でした。しかし今は違います。みなさんもご存知のジェネリック医薬品の普及により、すでに世に出ている高血圧や糖尿病などの薬を売ることでは、利益が上がりにくくなりました。そこで現在、製薬企業の利益を生んでいるのが、今まで治療法がなかった希少疾患や難病の薬剤領域です。
つまり製薬業界の戦略は今、変革の過渡期を迎えているんです。これまではマスに向けた医師マーケティングが効果を上げていましたが、これからはよりマッチした医師に向けた、きめ細かなマーケティングが求められます。
『E-コンサル』の仕組みは、より多くの医師が早期診断や新薬処方に関する気づきを得ることに繋がり、その結果として製薬企業が開発した革新的な薬剤の処方に繋がっていく。患者は早期に救われ、悩む主治医を助け、専門医は評価され報酬を得て、製薬企業も結果としてハッピーになる。この4者Winな構造こそMediiが辿り着いてきたビジネスモデルなんです。
ビジネスモデルありきではない。
専門医療の情報格差の解消のため、とにかく現場の声を聴く
(モデレーター河合)──グロービス・キャピタル・パートナーズのシニアパートナーである高宮さんは、このMediiのビジネスモデルを評価されているお一人です。高宮さんは、どのような部分を評価されたのでしょうか?
高宮ビジネスモデルについて、私が信じていることがあります。それは「世の中に価値を出していけば、その出した価値分の分け前はもらえるものだ」ということです。
その点、Mediiの場合は「価値」が明らかでした。「難病患者」と「難病の診断に悩む医師」という、明確に困っている人がいて、まだ解決されていない課題がある。それも社会性の高い課題、命に関わるクリティカルな課題です。
ビジネスモデルはその上の、Howの部分にすぎません。Howはコントロール可能、工夫次第なんですよね。でも、その領域にどれほどの価値があり、ポテンシャルがあるかということは、誰かがいくらがんばったところで変えられる話ではありません。課題が大きくて市場成長性が大きい──つまり「困り度合いの大きさ」が、ビジネスモデルを語る以前に重要なことだと思っています。
──なるほど、そもそもMediiが選択した課題や市場を評価されていたと。
高宮その上で、社会性とビジネス性を両立させることができれば、投資対象としての高い評価ができます。Mediiの場合は、難病を患う患者さん、臨床の現場で困っている医師、研鑽を積んで専門性を深めているが自己実現の機会がない専門医、希少疾患や難病の薬剤を開発してもなかなか売り伸ばせていなかった製薬会社など、多くのステークホルダーが全員が得をする、「三方よし」どころか「四方よし」という状態にできているところが、まずすばらしいです。
さらに、マネタイズのハードルが高い医療領域で、医師でも患者でも保険制度でもなく、“スペシャリティ製薬”という現在進行形の成長市場に目をつけたということが、大きなポイントだと思います。
──この市場に目をつけたのがポイントである理由を、もう少し詳しくお話いただけますか。
高宮ビジネスモデルを評価するポイントとして、「変化があるところにチャンスがある」という視点があります。
製薬会社の開発自体が大きくシフトしているという事実──先ほどお話がありましたが、以前は高血圧や糖尿病といった多くの方に必要とされる「マス向け」の薬剤の販売が主流であったところ、難病や希少疾患という「ニッチ向け」の薬剤開発・販売が製薬会社にとっての利益の軸になり始めているという事実です。これは対象の医薬品の領域が変化すると同時に、製薬業界のマーケティングが大きく変化するということでもあります。
こうした大きな変化が、非常にお金の流れの大きな製薬業界の市場で起きているということが、大きなチャンスということなんです。
──Mediiの成長性を評価するにあたっても、その「変化」の中でどういう役割を果たせるかまでが重要なポイントになるということですね。高宮さんのお話は、私(河合)も、創業期のビズリーチやラクスルで経営者と一緒に働いてきた経験から実感があります。顧客が何に困っているかという「ペインの深さ」と、法律やIT・テクノロジー、社会的なルールや価値観などの「変化」がかけあわさったところでこそ、事業が伸びる。2社の社長に教わったことでもあります。
高宮今回の製薬業界の変化について非常に注目しているのは、その市場規模の大きさです。製薬業界は10兆円の市場。その巨大な市場の内訳を見たときに、対象商品のカテゴリーが、たった数十年でがらりと変わろうとしている。
山田そうですね。同時に、従来の「マス向け」のマーケティングに加え、「ニッチ向け」のマーケティングが必要となってきています。高血圧や糖尿病の薬であれば、マス向けの広告で、医師の認知を薄くとも広く獲得することが、自社製品のシェア拡大に直結します。
しかし難病の薬剤は違います。患者数が少なく専門性が極めて高いため、担当する医師にとって初めての経験になるケースも多く、革新的とは言えど、副作用もあり高額でもあるスペシャリティ領域の新薬を広告で見たからといって使う医師はほとんどいません。臨床にあたっている医師も、『E-コンサル』を使ってエキスパート専門医とディスカッションし、「こういうふうに治療で使うんですね」「このように診断できるのですね」と納得、腹落ちすることで、ようやくその薬を使えるんです。
──過渡期にある巨大な製薬市場を巻き込んでいるからこそ、Mediiのビジネスモデルの将来性も高く評価されていることがわかりました。では、山田さんは、今のビジネスモデルにどういうふうに辿り着いたんでしょうか?
山田Mediiの事業は、専門医かつ現場の医師として、そして難病患者としての課題を解決するところから始まりました。最初はとにかく、医療機関向けにも患者向けにも、マネタイズポイントの検証を重ねました。それこそ全国の病院を飛び回り、サービスの説明をし、ヒアリングを重ねました。
とはいえ、このサービスが解消する「構造的な負」を理解はできても、医師や患者という立場の人たちがお金を出すというイメージが当事者である私にはあまり湧きませんでした。
それでもいろいろな方のお話を聞き、市場の大きさの基準は大切という理解があったので、製薬企業には最初からずっとヒアリングをしてきたのですが、彼らの課題の大きいところと私たちのサービスの相性が良く、反応がよかったんです。そして難病の薬剤という大きな市場があり、その市場は今まさに製薬業界の中で伸びている領域だという事実もわかりました。
──ビジネスを構想する上で、多くのスタートアップは他の企業のビジネスモデルをベンチマークするはずです。例えばプラットフォームビジネスだとか、マッチングビジネス、サブスクリプション。でも山田さんは違ったわけですね。まずミッションがあり、解決したい明確な課題に対して自分から動いてみて、ビジネスとして成立するところを探していった。高宮さんが「工夫次第」とおっしゃった通りに実現していったんですね。
山田現場の専門医や難病患者という当事者の現場からスタートしているからこそ、課題の深掘りと解決策を仲間たちと模索し、実現できてきたのだと思います。
一度は組織崩壊を経験。
だからこそ「仲間たちこそ大切」と言いきれる
(モデレーター河合)──ビジネスモデルの次に事業成長のポイントとなるのが、優れた組織づくりです。山田さんが組織づくりのためにこだわっていることを聞いてみたいです。
山田上手くいくもいかぬも全て人次第と思います。また、仲間というのは、いわば“投資家”だと考えています。人生の貴重な時間、力を、Mediiに投資してくれる投資家だという意味です。会社に仲間を招き入れることは、その人の時間、想い、家族まで背負うことなんです。同時に、単にお金を投資して終わり、ではなく、上手くいくも行かぬも自分たちの頑張りでレバレッジが効き、チームでミッションを達成していけて、近づきたい未来を自ら手繰り寄せられる。だからこそ一緒に全力で取り組めますし、信頼して背中を預けていける。
その仲間に対してどういうふうに応えていくべきか。実はそういう視点は「今だから」わかることで、数年前、私にはそういうことは見えていませんでした。そして実は、Mediiは初期に一度、組織崩壊に近い状態に陥ったことがあります。
そんなことがあったからこそ、今、一緒に働いている仲間たちがどれほど尊くて大切で、人が「すべて」なのかということを思います。
高宮私が山田さんと知り合ったのは4年以上前なんですが、当時、投資をお断りしたんです。そのときの理由が、まさに「チーム」でした。4年前だとMediiはシード期なので、弊社の投資対象とするフェーズでなかったということもあるのですが、それ以上に、チームができていない状態だったことも大きかったんです。そこからの4年で、今は見事にチームをつくり始めています。
山田当時は事業でやりたいこと、実現したいことばかりが先行していて、それを実現するにはどういう人が必要なのかということが、正直ほとんどわかっていませんでした。
──そこからCOOやCFOの採用に成功しています。どうやって「組織崩壊」の状態から、「経営チームづくり」を成功させたんですか?
山田事業ややりたいことの実現にどういう人たちが必要なのか。それを明確化したら、そういう人に出会うまで、ひたすらたくさんの方に会い続けました。「⚪️⚪️で優秀と思う方を3人挙げていただけませんか」と恐らく100人以上に数百名ご紹介いただき、そのうちに挙げていただいたお名前が重なって、──それが今のCOOの筒井さんなんですが、当時のMediiにジョインいただけませんか、というにはあまりに実績も期待も持っていただくに足らなかったので(笑)、あきらめずに追いかけ続けました。実際に筒井さんとは、2020年の冬に出会って22年5月に参画を決めてもらうまで、コミュニケーションをとり続けました。
どうやって追いかけるのかというと、ここから先は候補者のお人柄や志向によると思います。私たちの場合は、ミッションには共感してもらえても、事業モデルにどれだけ見込みや可能性があるのかどうかは伝わりづらくて。COOの筒井さんには、実際に製薬企業との契約が締結されるまでのプロセスに実際に入ってもらったり共に議論をすることで、事業のリアリティや可能性を知ってもらいました。
──そこまで粘れるのはすごいですね。スタートアップにとってチームをつくれることは、成功するために非常に重要ですよね。
高宮そう思います。チームづくりは社長にとって、最も重要な仕事です。と同時に、チームに対して社長が「仕事を任せる」ことができるかどうか。良いスタートアップを見極めるポイントの一つだと考えています。
金銭的な報酬ももちろんではありますが、スタートアップで働く上では、自身の成長機会こそが最大の報酬だと思います。そのチャンスを得るには、社長自身がスーパーマンであることよりも、「仕事を任せる」力があるのかどうかが大事です。
──その意味でもMediiは魅力があることを示しはじめていますね。Mediiはこれからまた、スタートアップとしてフェーズが変わっていくと思いますが、組織や人材に関してどのように考えていますか?
山田これからのMediiの社会貢献規模の大きさをどこまで大きくできるかはこの1、2年の採用、組織作りに掛かっていると意気込んでいます。そしてその基準としては今までもこれからも、本質は大きく変わらないと思っています。同じ世界線を目指したいというベクトルが揃っているか、それを極力大きくしようと思う価値観(Value)が近いかどうか。シンプルにそれだけです。
私たちのミッション「誰も取り残さない医療を」という仕組みを共に広げて、今苦しんでいる人たちが救われる未来に向けて一緒に頑張れて、実現できたことをお互いに心から喜び合い、ハイタッチできる、そんな仲間達と一緒に働いていきたいと思います。
──最後に、会場からひとつ質問が来ています。「医師・患者としての原体験もあると思うのですが、原動力となっていることはありますか?」山田さん、答えていただけるでしょうか。
山田私は過去の衝撃的な辛い出来事やコンプレックスが ”原動力=薪(まき)” になると考えています。”折れて”いない青々と繁る木は、すぐには燃えにくく良い薪になりません。折れて時間が経って昇華した木は、良い薪としてより大きな火をおこせます。
私には、一生治らない難病になり、医師として普通に働くこともできないと感じる時期がありました。まさに自分の心の大切な大きな木が根本から折れてしまった感覚です。でも人生の中でそんな時間があったからこそ、「自分が難病だからこそ、できることもあるんじゃないか」と思い至り、薪を燃やして難病の専門医になり、そして今はもっと大きな社会への課題解決をしたくて起業しています。
過去、肉親にまつわることなど人生を左右され得るようなショックで絶望的な体験も他に2つ程ありましたが、その根こそぎ折れた大樹はそれぞれが大きな薪となって原動力となっています。
生きている間に、社会になにを残せるか──自分の中に一生の間では燃えきらない程の薪が燃えているから、単純に諦められないんです。それは、Mediiの採用や組織作り、ビジネスモデルの構築にも真っ直ぐに通じているのだと思います。
──ビジネスモデルや組織を形作るのは、ミッション実現のための不屈の姿勢とその熱源になる薪。組織作りにおいても本質に近い話が頂けたと思っており、お二人に感謝です。本日は素晴らしいお話をありがとうございました。
こちらの記事は2024年03月28日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
濵田 智子
写真
藤田 慎一郎
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