前田 ヒロ
ALL STAR SAAS FUND
Managing PartnerシードからグロースまでSaaSベンチャーに特化して投資と支援をする「ALL STAR SAAS FUND」マネージングパートナー。2010年、世界進出を目的としたスタートアップの育成プログラム「Open Network Lab」をデジタルガレージ、カカクコムと共同設立。その後、BEENOSのインキュベーション本部長として、国内外のスタートアップ支援・投資事業を統括。2015年には日本をはじめ、アメリカやインド、東南アジアを拠点とするスタートアップへの投資活動を行うグローバルファンド「BEENEXT」を設立。2016年には『Forbes Asia』が選ぶ「30 Under 30」のベンチャーキャピタル部門に選出される。
創業メンバーの理想的な構成・役割分担があれば教えてください。
投資家への相談はどのタイミングがベストなのでしょうか?
いくつかの業界に興味・仮説があるのですが、具体的なビジネスモデルまでは、まだあまりきちんとした納得できる仮説が立っていません。このような状況でも、投資家へ相談しても構わないのでしょうか。もちろん、事前のデスクトップリサーチ・最低限の想定ユーザー向けのインタビューは実施予定です。
今年の投資テーマを教えてください。また特に注目している領域やビジネスモデル、手法などがあれば知りたいです。
日本のスタートアップは世界で通用すると思いますか?特にSaaSスタートアップの可能性について、具体的なハードルと合わせてお答えいただけると幸いです。
もちろん日本発スタートアップにも海外で成功するチャンスはあると思います。ただ、闇雲に挑戦するのは危険で、前提として海外展開しやすいSaaSと、しにくいSaaSの2種類があることを理解すると良いでしょう。
海外展開しやすいSaaSは、コミュニケーションツール・デザインツール・コラボレーションツールなど。ユニバーサルなユースケースのものは日本でも海外でも利用シーンがあまり変わらないため、比較的海外展開しやすいのではないかと思います。
一方で、その国の文化・ニュアンス・業界の構造によって提供するサービスが変化していくものに関しては、海外展開は難しいと感じています。例えば建設・建築業界などですね。日本とアメリカ、またブラジルとでは業界内の構造やパワーバランス、求められるニーズが大きく異なりますよね。他にもSmartHRは人事・労務に関するプロダクトですが、年末調整や社会保険の機能が海外でも使えるかというとそうではありません。商習慣の違いを考慮しなければなりません。ですので、このような業界特化型のプロダクトに関しては海外展開しづらいのではないかと思います。
前田 ヒロ氏の回答
2021年の国内SaaSはどのような変化、トレンドが生まれそうでしょうか?(SaaS×マーケットプレイスなど)
特に注目しているのは、ノンデスクワーカー向けのSaaSです。
これまではIT業界をはじめ、PCの前で仕事を行える方向けのものでしたが、現場で働く方やサービス業の方、店舗で営業をしている方などに向けたSaaSが今年はいよいよ台頭してくるのではないかと思います。具体的には現場のDX推進支援を行う「カミナシ」さんや、月額制店舗に適した会員管理・予約・キャッシュレス決済システムサービスを展開する「hacomono」さんなどです。
これらのノンデスクワーカー向けのSaaSの場合、設計する際に2つ重要な点があると思います。「UIのデファクトスタンダードを意識した設計」「ユーザーの使用シーンを考慮すること」の2つです。
LINEやメルカリなど、普段多くの人が触れているtoCサービスを意識した設計にしないと、それらと比較して不便を感じる方がいると思うので、馴染みのあるUIにすることは重要かなと思います。また、ノンデスクワーカー向けのSaaSの場合、ユーザーは手袋をしていたり、衛生面の観点からスマホを触れないなどといったことが想定されます。ですので実際に使用しているユーザーはどのような環境に置かれているかをより深く洞察し、それを踏まえたデザインにすることが求められますね。
前田 ヒロ氏の回答
なぜVCになろうと思ったのでしょうか?
実はもともと僕自身は起業家になりたいと思っていました。何かを作り、仲間を集め、世の中に新しい価値を生むことに憧れがあったからです。そんな憧れを抱いて大学生のときに一度起業をしたのですが、失敗してしまいました。そのときになぜ自分はうまくいかなかったのかを知りたくて、VCになったのがスタートです。
それからVCとしてキャリアを歩む中で、自分が起業家だったらこんなVCとタッグを組みたい、というVC像を満たすポジションがなかったということに気が付きました。また多くの起業家と関わる中で、この人は敵に回したくないという素晴らしい起業家との出会いもたくさんあり、「いい起業家」になるよりは「いいVC」になるほうが自分には向いていて、市場にも貢献できると思いVCとして生きていくことを決めました。
前田 ヒロ氏の回答
将来、VCのTalent Partnerとして働きたいと考えているのですが、20代にしておくべきことは何だと思いますか?
「数をこなすこと」が重要だと思います。ALL STAR SAAS FUNDでTalent Partnerを務める楠田のすごいところは、経験に裏打ちされたロジックやアルゴリズムが頭の中にあること。これまでJAC Recruitmentなどで人材紹介や採用決定をたくさん行ってきた実績と経験を持っているため、どの人がどの会社に合うか、どのくらいの内定承諾率かなどが瞬時に判断できます。なので楠田と話すと「この方は7割の入社可能性です」「このポジションなら3ヶ月以内にクロージングできます」など、必ず具体的な数字がでてくるんですよね。これは数をこなしてきた人のみが為せる技です。ですから将来Talent Partnerをやりたいという人であれば、まずは紹介の数をこなしていくことが良いのではないでしょうか。
前田 ヒロ氏の回答
投資先にすることが多いアドバイスや指摘で、普遍的に意味がある(投げかけるだけでも価値が出やすい)と思われる発言や投げかけがあれば教えてください。いわゆるキークエスチョン的なものです。
マーケット選定において、「勝てる領域」と「好きな領域」のどちらを選択するべきでしょうか?市場自体の成長性や自身のキャリアバックグラウンドなどを考慮して、勝つことができそうな領域を狙うのがセオリーでしょうか。
VCの皆さんは未来に投資していると思うのですが、どのように「これから伸びるマーケット」を見つけているのでしょうか?非現実的な未来予測の話ではなく、よく言われている「半歩先」のイメージです。事業をつくるにあたっては、この半歩先を見据えることが大事だと思っているので、参考にさせていただきたいです。
起業家はどの程度「リサーチ」をするべきでしょうか?
スタートアップは、よく行動力や行動量、またスピードが重要だと言われていると思います。しかし、世の中で検証済みの仮説や市場の有無などはリサーチである程度調べられると思うので、事業を正しいレールに乗せるには重要だと思っています。ここまではスタート前に調べるべき、という要素はありますでしょうか。
結論としては、まずはリサーチより先にユーザーと対話することが大事です。これはLayerX福島さんも仰っていたことですが、「市場から物事を見ず、インサイトから考える」ことが重要だと考えています。
例えば、ZoomはWebExやSkypeなど既に多くの先行プレイヤーがいる中、かなり後発のプレイヤーとして参入しました。しかし彼らは当時の既存サービスでは満たされていないユーザーがたくさんいたというインサイトをわかっていたので、後発ながらもここまで成長してきました。
似たような例で、Dropboxも同様に後発ながらグロースしたスタートアップですね。Google Driveなど多くのオンラインストレージがあった中、当時デバイスからデバイスへシームレスに遷移するときに、いちいちアップロードしたくないというユーザーのインサイトをわかっていたからグロースできたのだと思います。
そして、インサイトを見つける一番手っ取り早い方法は、ユーザーに会い、対話を重ねることです。市場規模や競合優位性を見つけるためのリサーチは、その後です。あくまでまずはインサイトを見つけることを最優先すべきだと思います。
前田 ヒロ氏の回答
シード投資の場合、何をみますか?