スポーツ選手の育成やオンライン交流会、購買部門の見積もり支援など、新領域切り拓くスタートアップ集結──FastGrow Pitchレポート
「イノベーターの成長を支援し、未来社会を共創する」をミッションに掲げるFastGrowが、「この会社、将来大きなイノベーション興しそうだ!」と注目するスタートアップをお呼びして、毎週木曜朝7時にオンライン開催する「FastGrow Pitch」。
登壇するスタートアップが目指すビジョンや事業内容、創業ストーリー、どんな仲間を探しているのかなどをピッチ形式で語るイベントだ。今回はFastGrowが注目するスタートアップ3社を集めて開催した。
本記事では、ピッチの模様をダイジェスト形式でお届けする。登壇したのは、Aruga株式会社、株式会社tsam、A1A株式会社の3社(登壇順)だ。
Aruga株式会社:自ら考えられるスポーツ選手を育成するマネジメントツール
最初に登壇したのは、スポーツ選手を育成する指導者向けマネジメントツール『Aruga』を運営するAruga代表取締役CEOの木村友輔氏。
木村氏は現在筑波大学の4年生。サッカー部に所属していた2016年に起業し、サッカー指導者のための練習メニュー共有サイト『シェアトレ』を運営していた。『Aruga』を起業するきっかけを次のように語る。
木村私が所属していた筑波大学のサッカー部では、PDCAを回すための目標達成シートが配布されるなど、選手が「自分で考える力」を身につけるための教育が行われていました。
しかし、当時サッカー部の組織構成は選手160人に対して監督はたった1人。指導者が選手一人ひとりに対峙しようとすると、指導者に負担がかかりすぎてしまう。こうした状況を改善できないかと考えていました。
2020年10月にローンチした『Aruga』は、指導者が選手一人ひとりと向き合い、育成を手助けするツールだ。LINEのチャットボットを活用して質問やフィードバックを自動化。練習前の選手には「今日の練習の目標は?」、練習後の選手には「今日の良かったところは?」など、目標設定を振り返りを促す質問が届く。
指導者はスマートフォンやPCから選手の返信データをチェックし、個別にフィードバックを送ることも可能だ。
すでに利用しているユーザーからはポジティブな反響が届いているという。
木村紙で選手の目標管理をした場合と比べ、指導者の負担を86%ほど削減できた事例もあります。また、手軽に使えるUIにこだわった結果、継続率は94%と、非常に高い水準をキープしています。
また、導入が試合の成果につながっている事例もあります。昨年度から試験的に運用していた立教大学女子ラクロス部では、創部初のインカレ優勝を果たしました。頼んでいないのに「良かったよ」と広めてくれました(笑)。
今後もユーザーの意見を取り入れながら、機能をブラッシュアップしていきたいと語る木村氏。将来的には個別育成のプラットフォームを目指し、教育やビジネスでも活用してもらえると今後の構想を語った。
木村スポーツ業界は伸びるといわれているものの、紙文化が多く残っており、IT化の余地は大きいんです。それに教育やビジネスにおける育成とも、共通点は多くあるはずです。
また、アジアはスポーツ市場が大きい地域でもあります。進出に向けた計画も練っていきたいですね。
「30日間の無料トライアルも実施中なので、ぜひ興味を持った方は試してみてほしい」と発表を締めくくった。
採用情報
株式会社tsam:コロナ禍以降の「新しいコミュニケーションの形」を発明する
次に登壇したのは、オンラインネットワーキングサービス『エリンギ』を開発・運営するtsam代表の池森裕毅氏。
2020年10月にリリースされた『エリンギ』は、オンラインの交流会や懇親会に特化した動画通話サービスだ。
主催したいユーザーがイベントの規模に合わせて複数の小部屋(ルーム)を作成すると、参加するユーザーはルームを自由に移動しながら交流できる。部屋の外から誰が入室しているか確認する、あるいは別ルームの人を自分のルームに招待するなど、人々の交流を促す豊富な機能を用意している。
池森氏は情報経営イノベーション専門職大学の客員教授やアクセラレーションプログラムのメンターなども務める。起業も今回が3度目。きっかけは新型コロナウイルス感染症の流行だった。
池森スタートアップ支援を生業にする身として、新型コロナウイルスの影響で交流会ができなくなり、オンラインの交流会が増えていましたが、Zoomなどの他のツールは使いづらいと強く感じていました。そこで、自分で作ろうと考え、開発しました。
『エリンギ』はオンラインに特化し、そのメリットを最大化するツールにしています。新しい交流会の形を提案しようと考えたんです。
プレスリリースを出した初日に買収の相談がかかり、大手企業からの反響も大きい。企業の合同説明会や大規模な学会など、多様な用途で利用したいという声が届いたという。
池森3社の起業をやって、起業家の支援もやってきましたが、交流がうまくいかないというのは大きなペインだと感じていました。だから、私が本腰を入れてやろうと思いました。
2020年の僕たちは、まだ体験したことのない新しいコミュニケーションのかたちを求めていると思います。今後もユーザーの感情に沿った機能を追加していく予定です。試しに使ってみたい方や興味のあるイベント運営会社はぜひ気軽に問い合わせてください。
採用情報
A1A株式会社:購買部門向けB2Bプラットフォームが製造業を変革する
最後に登壇したのは、『RFQクラウド』を開発・提供するA1A代表の松原氏だ。
『RFQクラウド』は、購買担当者の見積もりを支援するクラウド型SaaSシステムだ。煩雑な見積もりのプロセスをクラウド上で完結できる。
通常、見積もりのフォーマットやデータの形式はサプライヤーによって異なることが多いが、RFQクラウドならそれらを統一でき、見積もりの比較が容易になる。また、サプライヤーから受けとった見積もりをデータとして蓄積することで、過去の類似品との比較を行い、最適な価格による購買を実現する。
開発の背景には、松原氏が新卒入社したキーエンスでの経験がある。製造業の購買部門や調達部門の顧客と多く接するなかで、見積もりのプロセスに改善の余地があると感じてきた。
松原企業活動において調達・購買部門の果たす役割は大変重要です。たった1〜2%のコスト削減で数十億円の利益差が生じるケースもあります。
にもかかわらず、見積もりのフォーマットがバラバラであったり、過去のデータが蓄積されておらず、最適な価格での取引ができていないケースが多い。100人以上の購買担当者の方々にヒアリングを実施しても、企業を問わず同じような課題を抱えている現場が多いと気づきました。
「購買担当者視点での見積もり支援」を行うSaaSは、松原氏の知る限り国内の競合はいないという。
松原起業する際「自分にしかわからない真実とはなにか?」と考え続けた結果、キーエンス時代に経験した負から着想した事業を立ち上げました。見積もり支援という事業のわかりづらさは、マーケットへの参入障壁になっていると考えています。
小さい頃から「会社を作りたい」と思っていました。その目標から逆算して、キーエンスやVCというキャリアを考えてきました。結果的に参入障壁という武器を手に入れられましたね。競合サービスは、強いて言えばSIer。SaaSでは実質、いないといえますね。これから採用を強化して、T2D3に向けて加速したいですね。
『RFQクラウド』はサプライヤーも巻き込み業務フローを大きく変えるサービスであり、導入に必要な労力は決して少なくない。それでも一度導入を決めた企業は課題を解決できるという手応えを得て、前向きに導入を進めているという。さらなる展開に向けて、エンジニアから営業まで幅広く採用を強化中だ。
採用情報
第16回目となったこの日は、教育やコミュニケーションサービス、B2B取引プラットフォームまで、さまざまな領域で革新を試みる企業が登壇した。とくにArugaとtsamなど、2020年10月に製品の正式リリースを出したばかりの企業が複数登壇したことも印象深い回となった。今後も毎週木曜朝7時の「FastGrow Pitch」では、注目スタートアップが登壇し、自ら事業や組織について語る機会をお届けしていく。ぜひ、チェックしてほしい。
こちらの記事は2020年10月14日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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