小売や介護、ウェルネス領域に変革をもたらすX-Techスタートアップが集結──FastGrow Pitchレポート
「イノベーターの成長を支援し、未来社会を共創する」をミッションに掲げるFastGrowが、「この会社、将来大きなイノベーション興しそうだ!」と注目するスタートアップをお呼びして、毎週木曜朝7時にオンライン開催する「FastGrow Pitch」。
登壇するスタートアップが目指すビジョンや事業内容、創業ストーリー、どんな仲間を探しているのかなどをピッチ形式で語るイベントだ。
本記事では、ピッチの模様をダイジェスト形式でお届けする。登壇したのは、株式会社フェズ、株式会社LINK、株式会社COCO&COMPANYの3社(登壇順)だ。
株式会社フェズ
小売業界のDXを推進するリテイルプラットフォーム
最初に登壇したのは、小売業界のDXを推進するフェズ代表取締役の伊丹順平氏だ。
株式会社フェズは「消費そして地域を元気にする。」を掲げ、主要プロダクトとして小売及びメーカーの「セールスリフト」を実現させる逆算型OMOプラットフォーム『Urumo OMO』を開発・運営している。
伊丹『Urumo OMO』は、実店舗での購買データや位置データをもとに、広告や販促、店頭での消費者へのアクションを最適化、集客の強化や売り上げ改善を実現します。
また、ドラッグストアを始めとする複数企業ともパートナーシップを組んでいます。特に、複数のドラッグストアとパートナーシップを組むことで、約4,400万の小売IDと連携が可能になりました(2020年9月末時点)。各小売様より許諾を得た際に利用が可能となり、データをインプットして分析に活用し、より精度の高い戦略立案や施策実行などのアクションにつなげられるようになりました。
伊丹氏は、この事業に取り組む背景として、小売業界におけるデータ活用の可能性について語った。
伊丹小売業界の市場規模は140兆円。EC化は進んでいるとはいえ、現状のEC化率は6.76%と低いままです。
とくに、私たちは店頭での“非計画購買”に可能性があると考えています。非計画購買とは、想定していた商品ではない商品と店頭で出会って、つい買ってしまう行動パターンを指します。非計画購買は、店頭での購買の5〜9割を占めます。売り上げを高めるうえで、非計画購買を促すことは非常に大切です。
そのためには、過去の消費者の購買データを分析、活用が欠かせません。しかし、過去の購買データ分析や活用に積極的な企業は、現状6.9%にとどまっています。
データ活用を推進することで、消費を促し、企業がより的確に売り上げを改善できるよう支援したいと考えています。
今後は『Urumo OMO』を軸に小売事業のDXを推進するためのコンサル事業やSaaS事業なども進めていく予定だ。
伊丹直接の競合はいませんが、競合と考える必要がある企業はあります。たとえばサイバーエージェントさんは、広告というビジネス側面で見れば手ごわい競合になり得ます。
海外進出もはやく進めたいですね。日本市場は、世界でも特に消費者が厳しいという面があるので、サービスをしっかり磨き込めればそののちに世界でいい戦いができるようになるのではないかと思っています。
将来に向けた手応えも語ったうえで、「すべてのポジションを募集しているくらい急成長を遂げています。ぜひ興味を持っていただけたら幸いです」と伊丹氏はピッチを締めくくった。
採用情報
株式会社LINK
“健全な介護”を実現するシェアリングサービス
続いて登壇したのは『イチロウ』を運営する、LINK代表取締役CEOの水野友喜氏。
『イチロウ』は、通院の付き添いや自宅の家事、自宅の介護など、介護保険内外の介護サービスを利用できるCtoCの介護士シェアリングサービスだ。
介護を受ける側、家族側のユーザーは、スマートフォンアプリから簡単に介護サービスを依頼できる。介護士側のユーザーは『イチロウ』に登録しておけば、副業で介護士として働ける。
ヘルパーの技術や性格はすべて定量化されており、それらの数値にもとづいて、介護を受ける人と介護士がマッチングされる仕組みだ。
介護サービス実施後の家族へのレポート共有や、介護士同士の情報共有などもオンラインで行うことができる。
『イチロウ』をローンチした背景には、水野氏自身が20歳から特別養護老人ホームで働いた経験がある。
水野老人ホームに入居している方と外出したとき、『どこに行きたいですか?』『何を食べにいきたいですか?』とたずねると、やはり『住み慣れた家に帰りたい』と言われる方がいらっしゃって...。
もちろん、ご家族の事情など様々あるとは思うのですが、老人ホームだけがソリューションで良いのかと疑問を感じたんです。
水野氏は、老人ホームを選ぶ人が増える要因として「介護保険外の訪問介護サービスでは、在宅介護のニーズに応えられない」ことを挙げる。
水野介護保険制度のルールは年々厳しくなっています。例えば、電球の交換など、生活において不可欠な支援をヘルパーが行うことができません。
加えて、訪問介護を行うヘルパーの人材不足も挙げられます。 有効求人倍率は15倍とも言われています。介護サービスをお願いしようとしても事業所に断られ、在宅介護を諦めてしまうご家族もいらっしゃる。
そこで、利用者が介護保険外で自由に、必要な在宅介護サービスを利用できるプラットフォームを提供しようと考えました
2020年10月時点で、『イチロウ』での累計マッチング回数は1,700回、マッチング率は98%と、安定してサービスを提供している。同月には6,500万円の資金調達を実施した。
水野氏は「介護士の努力が報われ、高い報酬が得られる健全な社会」を目指したいと語り、具体的な目標として「2022年までに年収1000万円の介護士を輩出する」を掲げた。同じ想いを抱く仲間も積極的に募集している。
採用情報
株式会社COCO&COMPANY
ヨガ・瞑想レッスンが受け放題のメンタルヘルスケアサービス
最後に登壇したのは、『Uni』を展開するCOCO&COMPANY代表取締役の吉田なる氏。
『Uni』は、オンラインでの瞑想・ヨガレッスンが受け放題のメンタルヘルスケアサービスだ。ヨガや瞑想、書道など多様なレッスンプログラムを提供している。ヨガ講師のみならず、心理士、お坊さんが講師として所属しているのも特徴だ。
吉田氏はヨガ講師として活動した後、2019年に独立してヨガスタジオを設立した。
事業は軌道に乗っていたが、新型コロナウィルス感染症の流行に大きく影響を受けた。その大変な経験が『Uni』のローンチにつながったと振り返る。
吉田94%の売り上げを失い、周囲のヨガスタジオからも休業や倒産の知らせが聞こえてくるような状況でした。
一旦ヨガスタジオの売り上げ維持は諦めて、好感度や信頼度を失わないことを最優先に。SNSでのコミュニケーションやその他のメディア向けのPR活動、オンラインヨガ動画の配信に注力しました。
そうした取り組みのなかで、いかに自分が『オフラインでの接点がすべて』と思い込んでいたかを知りました。スタジオで、対面でのレッスンが一番だからと、オンライン化に意欲的ではなかった。
ただ、利用者の皆さんとやりとりしていると、心の痛みを解放できて健やかな気持ちになれるなら、どちらでも良いなと感じました。むしろ、オンラインのほうが多くの方と接点を持てるなど、利点もあると実感できました。
国内ウェルネス業界の市場規模は、2023年までに5.7倍になると見込まれている。吉田氏は、法人向け福利厚生サービスの提供にフォーカスする戦略を描いている。
吉田コロナの影響で、オンラインのヨガやフィットネスサービス市場は競合が増え、飽和しつつあります。なので、そこで勝負するよりも、まずは福利厚生としてのメンタルヘルスケアサービス市場に絞って、シェアを獲得していきたいです。
すでに誰もが知る大手IT企業にも導入をいただいています。今後は中小企業にも導入を広げていきたいと考えています
COCO&COMPANYでは『Uni』を支えるエンジニアを積極的に募集している。吉田氏は「副業などでも大歓迎なのでぜひお声がけください」と呼びかけた。
採用情報
第23回目となったこの日は、小売や介護、ウェルネスといった多様な領域でデジタル化を 進め、新たな価値を届けるプレイヤーが揃った。
今後も毎週木曜朝7時の「FastGrow Pitch」では、注目スタートアップが登壇し、自ら事業や組織について語る機会をお届けしていく。ぜひチェックしてほしい。
こちらの記事は2020年12月09日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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