家賃が安くなる?バーで一杯無料?
既存業界のゲームチェンジャー目指すスタートアップたち──FastGrow Pitchレポート
「イノベーターの成長を支援し、未来社会を共創する」をミッションに掲げるFastGrowが、「この会社、将来大きなイノベーション興しそうだ!」と注目するスタートアップをお呼びして、毎週木曜朝7時にオンライン開催する「FastGrow Pitch」。
登壇するスタートアップが目指すビジョンや事業内容、創業ストーリー、どんな仲間を探しているのかなどをピッチ形式で語るイベントだ。
本記事では、ピッチの模様をダイジェスト形式でお届けする。登壇したのは、株式会社Unito、株式会社JapanFuseの2社(登壇順)だ。
- TEXT BY OHATA TOMOKO
- EDIT BY HARUKA MUKAI
株式会社Unito
外泊した分だけ家賃が安くなる住居プラットフォーム
最初に登壇したのは、株式会社Unito代表取締役の近藤佑太朗氏。同社は住居プラットフォーム『unito』を展開している。
『unito』では、礼金や水道・光熱費、退去費用は一切不要で、最短1ヶ月から住居を契約できる。
最大の特徴は、外泊した泊数分だけ家賃が安くなる「リレント機能」だ。事前にユーザー向けのアプリ上で外泊する泊数を選択すると、その泊数に応じて家賃が割り引かれ、家賃を節約できる。外泊中は部屋をホテルとして貸し出すため「供給側のユーザーにとってもマネタイズが可能なモデルになっている」と語る。
現在、都内を中心に約2500の物件を展開している。近藤氏は、具体的にどのようなユーザーに利用されているのかを共有した。
近藤創業当初は、出張の多い人や多拠点生活のフリーランスの利用が多いだろうと想定していたんです。ただ蓋を開けてみると、出張の有無や職種はあまり関係なくて。
例えば、実家がオフィスから1時間くらいの距離にある人が、出社時や東京に用があるときだけ利用するなど、暮らしに合わせてフレキシブルに2拠点目の住居として使っている方が多いと気づきました。
最近では、コロナ禍で週に数日のみ出社するワークスタイルの方が増えたこともあり、職種や働き方を問わず、2拠点目の住居を求めている人が増えている印象です。
また、供給側のユーザーも「従来は、民泊やホテルとして貸し出していた物件が、コロナ禍で空きが増え、困っている経営者が多い」と近藤氏は指摘。「多拠点居住に関心のある入居者側と、新しい顧客を探している供給者側のユーザーを的確にマッチングしていきたい」と語った。
さらに近藤氏は、今後の展望としてマイルを用いたエコシステムの構築も検討しているという。
近藤外泊した泊数分を、家賃の割引に充てるだけでなく『Unito』内や提携サービスで利用できるマイルに還元する仕組みを考えています。飛行機や電車、ワーケーション先の宿泊費など、様々な場面で使えるようにし、一つの経済圏を築いていきたいです。
構想を熱く語る近藤氏は、現在26歳。クロアチアのビジネススクールで観光学を学んだ後、卒業後は1年間、国内のスタートアップで経験を積んだ。
近藤1年間のなかで、縁あってAirbnb Japanでも仕事をさせていただく機会がありました。その際に一つのプロダクトが世界を変えるとはどういうことか、そのスピードや勢いを肌で感じたんです。自分自身も新たなゲームチェンジャーになりたいと考え、起業に至りました。
ゲームチェンジャーとなるべく、Unitoがビジョンとして掲げるのは「暮らしの最適化の追求」だ。
近藤2020年代はあらゆるものが最適化されていく時代だと捉えています。すでにメディアやエンタメ、食、健康などの領域で、パーソナライズされたコンテンツを提案するサービスが溢れていますよね。
一方、ライフスタイルの土台である住まいは、あまり変わっていないのではないかという疑問がありました。家賃や暮らす街、間取りといったものを、一人ひとりに合わせて最適化していきたいと考えています。
現在、Unitoでは20代後半から30代前半の社員7名が働いている。今後は海外の大都市への展開を視野に入れていると言う。「セールス部門の立ち上げリーダーを特に探しています。他にもカスタマーサポートやエンジニアなど全般的に募集しています」と近藤氏はピッチを締めくくった。
採用情報
株式会社JapanFuse
最初の一杯を無料で楽しめるバーのサブスクリプション
続いて登壇したのは、バーのサブスクリプションサービス『mellow』を展開する株式会社JapanFuse代表取締役の石田寛成氏。
石田氏は、ブロックチェーン関連事業で起業し、東京大学のブロックチェーン学生起業家支援プログラムにも採択された経験を持つ。
『mellow』の立ち上げにいたった背景には、自身がバーでアルバイトをして目の当たりにした「不合理かつ不健全な集客システム」への課題意識がある。
石田飲食業界、特にバーの多くが新規顧客の集客に苦労しています。集客のためにSNSやWeb運用に取り組んでも、簡単に効果は出ませんし、大手グルメサイトへ掲載するにも費用がかさみます。
一方、利用者側もバーの探し方に迷っています。SNSやブログの情報は、信頼できるか否かの判断が難しいですし、大手グルメサイトでも情報が十分に掲載されていないお店も少なくありません。
石田氏は想定ユーザーへのヒアリングを重ねながら、次のようにユーザーのペインを整理していった。
石田想定ユーザーは多くの場合、エリアやシーン、価格帯を「検索」し、マッチしたバーを「発見」し、再度SNSで「再検索」をします。その過程で「検索してもノイズが多い」あるいは「情報の記載が少なく、比較ができない」「カード利用などの情報が不明」などのペインを抱えている。
これらのペインは大きく「情報収拾の効率化」と「注文・決済のデジタル化への余地」に分類できると考えています。この二つの課題を解決するのが『mellow』です。
『mellow』は、月額2000円で、加盟するバーでの最初の1杯が無料になるサブスクリプションアプリだ。来客者側のユーザーのニーズや好みを機械学習し、「たった6秒で一人ひとりに合ったバーをレコメンドする」という。
バー側のユーザーは加盟料や掲載料、送客手数料すべて0円で利用できる。また『mellow』を利用して来店した顧客情報もアプリで一括管理できる。
石田競合となるグルメサイトに対する優位性として、安さやアプリの使いやすさに加えて「情報の質」にこだわっています。
機械学習にもとづく最適なマッチングにより、来店者側のユーザーの初来店時の満足度を向上させ、常連化を後押ししたい。
アプリでも、メニューや営業時間といった基本的な情報だけでなく、バーでかかっている音楽やマスターの人柄など、より深い情報を提供するようにしています。
現在『mellow』は横浜・みなとみらいエリアでクローズドβ版を展開し、仮説検証を行なっている。「バー側のユーザーでは集客においてグルメサイトの5.9倍のROIを実現できた例もある」と成果を共有した。
前述の通り、バー側のユーザーは無料で『mellow』を利用できるが、ゆくゆくは「ユーザーの好みに合わせ、来店されやすいバーのデータを、各バーのカテゴリに合わせて提供するスーパーCRMの展開も検討している」と語った。
第27回目となったこの日は、サービスの供給側と需要側をより最適な形でマッチングさせ、特定の業界においてゲームチェンジを狙う企業が登壇した。
今後も毎週木曜朝7時の「FastGrow Pitch」では、注目スタートアップが登壇し、自ら事業や組織について語る機会をお届けしていく。ぜひチェックしてほしい。
こちらの記事は2021年01月19日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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執筆
大畑 朋子
1999年、神奈川県出身。2020年11月よりinquireに所属し、編集アシスタント業務を担当。株式会社INFINITY AGENTSにて、SNSマーケティングを行う。関心はビジネス、キャリアなど。
inquire所属の編集者・ライター。関心領域はメディアビジネスとジャーナリズム。ソフトウェアの翻訳アルバイトを経て、テクノロジーやソーシャルビジネスに関するメディアに携わる。教育系ベンチャーでオウンドメディア施策を担当した後、独立。趣味はTBSラジオとハロプロ
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