記憶のプラットフォーム、決済代行・信用保証のBaaS。
EdTechとFinTechに新風をもたらすスタートアップ──FastGrow Pitchレポート
「イノベーターの成長を支援し、未来社会を共創する」をミッションに掲げるFastGrowが、「この会社、将来大きなイノベーション興しそうだ!」と注目するスタートアップをお呼びして、毎週木曜朝7時にオンライン開催する「FastGrow Pitch」。
登壇するスタートアップが目指すビジョンや事業内容、創業ストーリー、どんな仲間を探しているのかなどをピッチ形式で語るイベントだ。
本記事では、ピッチの模様をダイジェスト形式でお届けする。登壇したのは、モノグサ株式会社、H.I.F.株式会社の2社(登壇順)だ。
- TEXT BY OHATA TOMOKO
- EDIT BY HARUKA MUKAI
モノグサ株式会社
「記憶の定着」に特化した学習アプリ
最初に登壇したのは、『Monoxer』を開発・運営するモノグサ代表取締役CEOの竹内孝太朗氏。『Monoxer』は、記憶の定着を目的とした、問題作成や生徒への配信、学習状況や記憶度の確認などを行える学習プラットフォームだ。
参考記事:https://www.fastgrow.jp/articles/monoxer-kuroyanagi
ユーザーのうち、先生側は、生徒に合わせた問題集を作成し、オンラインで一括配信できる。点数だけでなく、学習後の定着度合い(=記憶度)をAIが自動計測してグラフを作成する。それらのデータと学習履歴を合わせて確認し、生徒への指導に活かすことができる。
生徒側も、アプリで問題集に取り組めるため、好きな時間に好きなだけ学習できる。『Monoxer』側のシステムが記憶度に合わせた頻度・難易度で問題を出題するため「自然に記憶定着が実現される」と言う。
竹内氏は、リクルートに入社後、学習サービス「スタディサプリ」にて高校向けの営業組織の立ち上げや学習到達度測定テストの開発、オンラインコーチングサービスの開発に携わった。
もともとは教育領域での起業を検討していたと言う竹内氏。なかでも「記憶の定着」に注目してサービスを立ち上げた背景には、高校の同級生であり、後に共同創業者となる畔柳圭佑氏の言葉があった。
竹内当初は英単語帳サービスを検討していました。それを畔柳に共有したところ、「すでに近しいサービスが多数存在していて、それはつまり記憶することに対して本質的な課題解決ができているサービスが存在しないのでは」と言われました。
彼の言う通り、インターネットの発達により「調べる」という作業は誰もが簡単に取り組めるようになりました。一方で「記憶」の領域はまだまだ手つかず、決して気軽なものではないですよね。
でも「記憶する」こと自体はそこまで苦痛ではないはずです。例えば、大抵の人は今日の朝ごはんに何を食べたかを自然に記憶していますよね。
でも英単語1,000個を覚えるとなると苦しくなってしまう。これは記憶すべき情報の量が増え、期間が設定される。つまり記憶を管理しなければいけなくなるからだと捉えています。『Monoxer』によってその管理の部分を担い、記憶の定着をもっと手軽にできるようにしたいと考えています。
現在『Monoxer』は塾や学校を始めとした全国およそ47都道府県2500箇所の教室で利用されている。2020年10月にはWiL Partner、UB VENTURESより4.4億円の資金調達を実施した。今後は「教育現場における学習にとどまらず、記憶の定着全般を担いたい」と展望を語る。
竹内現在は、先生の業務フロー改善や生徒の記憶定着を支援していますが、周辺領域でのサポートも行ってほしいといった声をいただいています。
すでに企業において社員の資格取得の学習をサポートしている事例もあります。「記憶活動に取り組むすべての人」をサポートしていきたいですね。
さらなる事業成長に向けて採用も強化している。「必ずしも教育関連のバックグラウンドがある必要はありません。少しでも記憶というプロダクトに興味を持っていただけたら、ぜひお声がけください」と竹内氏はピッチを締めくくった。
モノグサの記事連載はこちら
採用情報
H.I.F.株式会社
決済代行・与信調査・銀行代行を担う金融プラットフォーム
続いて登壇したのは、H.I.F.代表取締役の東小薗光輝氏。同社は、信用保証業・決済代行業・銀行代理業を行うBaaS(Banking as a Service)プラットフォームを展開する。
具体的なサービスとしては、売掛金前払い、保証率100%で圧倒的に安い手数料 (4.0~10.0%)の請求業務アウトソーシングサービス『Fimple決済 Finance+』や、売掛債権を保証する『Fimple保証』、企業同士の協業を実現するオープンイノベーション・コミュニティ『Fimple Community』を運営している。
また、GMOあおぞらネット銀行を所属銀行とする銀行代理業の許可を取得し、バンキングサービス『Fimple Bank』の開発にも取り組む。
なかでも、2019年より注力してきたのが『Fimple決済』だ。このサービスでは、企業の売り上げデータをもとに、H.I.F.が請求書の発行、送付から代金回収に至るまでを代行する。
東小薗最大の特徴はクライアントからH.I.F.に代金が振り込まれる前に、H.I.F.から企業へ、代金を先に支払う仕組みです。企業はキャッシュフローの改善を図りながら、売掛金未回収リスクがゼロになります。
創業から約2年半で行われた1万5,333件の取引のうち、回収すべき売掛金が回収できなかったのは19件のみ(デフォルト率0.12%)です。もちろん回収できなかった際に備えてH.I.F.が保険を契約しているため、実質的な損失は少なく、ファクタリング業界では最も良い成果を挙げているのではないかと感じています。
同社が展開するサービスの根幹を支えているのが、取引情報や独自の調査による企業情報をもとにした与信管理システムだ。
東小薗与信調査と聞くと、決算書や財務諸表を見られるイメージがありますが、粉飾の恐れがあります。そのため、私たちは会社の代表のSNSや女性従業員比率など定性的な項目も確認しています。
これまでは全て人の手で項目の確認を行っていましたが、昨年12月から自動化のためのAI開発を進めています。今年の3月頃にはβ版をリリースする予定です。
東小薗氏はエイチ・アイ・エス出身者で、同社の創業者である澤田秀雄氏が設立した起業家育成プログラムの2期生だ。
東小薗「育った家庭環境による金銭的なコンプレックスを世の中からなくしたい」という思いから金融サービスでの起業を決意しました。銀行代理業や決済代行業の事業で得た利益を使って、ビジョンである「世界平和への貢献と父子・母子家庭世帯の支援」の実現に取り組みたいと考えています。
実際に2020年3月にはひとり親家庭30世帯に対し、月額1万円を支給する「H.I.F.ベーシックインカム」の募集を行うなど、着実にビジョンを形にし始めている。将来的には展開しているサービスをプラットフォーム化し、FinTechサービスを立ち上げたい企業に提供する事業なども検討していると言う。
採用情報
第29回目となった今回は、競合ひしめくEdTechやFinTech領域にて新風を吹かせるスタートアップが集った。
今後も毎週木曜朝7時の「FastGrow Pitch」では、注目スタートアップが登壇し、自ら事業や組織について語る機会をお届けしていく。ぜひチェックしてほしい。
こちらの記事は2021年01月28日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
次の記事
執筆
大畑 朋子
1999年、神奈川県出身。2020年11月よりinquireに所属し、編集アシスタント業務を担当。株式会社INFINITY AGENTSにて、SNSマーケティングを行う。関心はビジネス、キャリアなど。
inquire所属の編集者・ライター。関心領域はメディアビジネスとジャーナリズム。ソフトウェアの翻訳アルバイトを経て、テクノロジーやソーシャルビジネスに関するメディアに携わる。教育系ベンチャーでオウンドメディア施策を担当した後、独立。趣味はTBSラジオとハロプロ
連載スタートアップを知りたいならここを見よ!FastGrow注目スタートアップ特集──FastGrow Pitchレポート
79記事 | 最終更新 2022.05.13おすすめの関連記事
『スタディサプリ』設立に携わった男が放つ、国内トップクラスのEdTechサービス──“記憶のプラットフォーム”構築に挑むモノグサの軌跡と展望
- モノグサ株式会社 代表取締役 CEO
初見では意味不明なプロダクトこそ、世界を席巻する──麻生要一とモノグサ竹内孝太朗に聞く、“次のGAFA”への勝算
- 株式会社UB Ventures ベンチャー・パートナー
「BizDev=何でも屋」と考えるようではド三流。スキル定義を諦めず、理想を追い求めるモノグサ竹内と10X矢本の熱い議論から、BizDevの本質を探る
- モノグサ株式会社 代表取締役 CEO
半径1kmの地図を塗り替える──「広告ゼロ・1.5万UU」エンジニア集団イオリアが仕掛ける、大手プラットフォームの死角を突くスモールジャイアント戦略
- イオリア株式会社 CEO・エンジニア
【Vol.1:SecureNavi】T2D3を見据えられる急成長を遂げながら「未来のスタートアップ組織のデファクトスタンダード」を体現するようなカルチャー
- SecureNavi株式会社 代表取締役CEO
【FastGrow厳選5社】急成長するBtoC領域のスタートアップ5選:2024年ベスト盤
【独自解剖】いまスタートアップで最も“謎”な存在、キャディ──SaaS×データプラットフォーム構想によるグローバルテックカンパニーへの道筋
AIはあくまで手段、"顧客密着"こそが競争優位・高利益を生む──後発SaaSのTOKIUMが「BPaaS時代」を先取りできた理由と、「社会インフラ級」のプラットフォーム戦略とは
- 株式会社TOKIUM 代表取締役