世界初MR(複合現実)プラットフォーム、“社会人向けOB訪問”サービス、新概念を掲げるスタートアップが登場──FastGrow Pitchレポート
「イノベーターの成長を支援し、未来社会を共創する」をミッションに掲げるFastGrowが、「この会社、将来大きなイノベーション興しそうだ!」と注目するスタートアップをお呼びして、毎週木曜朝7時にオンライン開催する「FastGrow Pitch」。
登壇するスタートアップが目指すビジョンや事業内容、創業ストーリー、どんな仲間を探しているのかなどをピッチ形式で語るイベントだ。
本記事では、ピッチの模様をダイジェスト形式でお届けする。登壇したのは、株式会社GATARI、株式会社ブルーブレイズの2社(登壇順)だ。
- TEXT BY OHATA TOMOKO
- EDIT BY HARUKA MUKAI
株式会社GATARI
“人とインターネットの溶け合う社会”を創るMRプラットフォーム
最初に登壇したのは、Mixed Reality技術を活用したMixed Realityプラットフォーム『Auris』を開発・運営するGATARI代表取締役CEOの竹下俊一氏。
MR(Mixed Reality)とは、現実空間とデジタル空間が融合させる技術を指す。仮想のデジタル空間を構築するVRや、デジタルな情報を現実空間に重ねるARと違い、現実とデジタルの情報が、相互に影響し合う新たな空間を構築する。
『Auris』では、現実空間をスマートフォンのカメラでスキャンし、認識した空間に音を配置するなどの編集を加え、クラウドに保存できる。保存したデータは、アプリにアクセスした人なら、誰もが音声デバイスを通して利用できる仕組みだ。
例えば、博物館や美術館などで「特定のエリアに入った瞬間に音声が鳴る」といった体験を実現する。ピッチでは実際の博物館での展示を、動画とともに紹介してくれた。
竹下これまでの美術館や博物館で音声ガイドを聞くためには、特定のエリアに行って、画面に数字を入力するなど、何かしらの操作が必要だったと思います。
一方、Aurisでは普段通りに展示を見るだけ。空間を歩いているなかで、知らない情報と自然に出会える体験を届けます。視覚障害を持つ方には、音声で施設のナビゲーションを行うこともできます。
また、デジタル空間に情報を配置するため、訪れた人の言語や訪問回数に応じて、流す音声を変えるなどのパーソナライズも可能です。こうした多様な体験を「空間に干渉せず提供する」のもAurisの特徴だという。特別な工事や電気設備は必要なく、スマートフォンアプリと音声デバイスさえあれば、MRによる新しい音声体験を提供できる。
竹下氏がAurisを出発点に目指すのは「人とインターネットが融け合う社会」だ。「物理的なモノと、デジタルの情報を選択できる社会を創りたい」と語る。
竹下例えば、街に看板を配置しましょうというとき。物理空間だと、多くても5言語くらいしか表示できないですよね。
でも、デジタルの情報を空間に配置し、保存する技術があれば、世界中どの言語にも対応できる。それはつまり、より多くの人が「受け入れられている」と感じられる都市を創ることでもあると考えています。
デジタルの情報を現実の空間に配置して保存する技術はすでに存在し、発展を遂げています。けれど、今はまだ物理的なモノしか選択肢がない。その状態を、ARやMRを駆使して変えていきたいんです。
GATARIは複数の事業者とも実証実験や企画を行ってきた。2020年9月には、鹿島建設をはじめとする9社の手がける複合施設「HANEDA INNOVATION CITY」にて音声ARの体験会を実施した。現在はエンターテイメント領域での活用が中心だが、すでに他の領域への展開可能性も感じられているという。
竹下鹿島建設の皆さんとの取り組みでは「現場で現実空間ごとにコメントを残しておけるよね」や「メンテナンスでも活用できそう」など、現場の方が様々な声を共有してくれました。新たなユースケースがボトムアップで生まれる予感がしています。その実践からより本質的な価値を生み出し、事業化につなげていきたいと考えています。
GATARIは2021年2月に累計1億円の資金調達を実施。2021年3月には、Aurisを体験できる施設『GATARI秋葉原スタジオ』を開設している。「かなり人手が足りない状況です。事業開発、デザイナー、サーバーエンジニアの3つのポジションで募集を行っていますので、ぜひお問い合わせください」と参加者に呼びかけた。
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株式会社ブルーブレイズ
志を持って働く人を増やす「社会人向けOB訪問」サービス
続いて登壇したのは、『CREEDO(現『キャリーナ』)』を運営するブルーブレイズ代表取締役の都築辰弥氏。
『CREEDO』は、転職やキャリア形成について経験談を聞くことができる、社会人向けOB訪問サービスだ。
経験談を聞きたいユーザーは、CREEDO内で興味のあるキャリア経験談を検索し、OB訪問を申し込む。日程調整後は、CREEDO内にあるビデオ通話機能を通して、経験談を聞く仕組みだ。
OB訪問する側のユーザーは、一般的な転職エージェントでは語ることができない、リアルな転職・キャリアの経験談を聞くことができる。またOB訪問がリファラル採用につながるケースもあるそうだ。
経験談を話す側のユーザーは報酬を得られるだけでなく、自分自身のキャリアを整理したり、人のキャリアに貢献したりする機会も得られる。
創業者の都築氏は、新卒でソニーに入社し、スマートフォンの商品企画を担当。2019年8月にブルーブレイズを創業した。HR領域に未経験で挑んだ背景には「なぜ転職活動ではOB訪問が行われないのか?」という疑問があった。
都築学生は就職活動で当たり前のようにOB訪問をするのに、転職活動では興味のある職種や企業、キャリアについて、実体験を聞く機会は少ない。キャリア選択にまつわる知見はブラックボックスになっているんですよね。それらの知見をもっと広く共有することで、ミスマッチを解消し、納得できるキャリアを歩める人を増やしたいと考えています。
ミッションである「世界に100億の志を」には「志を持って、生き生きと働ける人を増やしたい」という意味が込められているという。
そんな想いを持って開発されたCREEDOだが、リリースして3日間はマッチングが起きなかったと都築氏は振り返る。地道にUXを改善することで「なんとか乗り切った」という。
CREEDOは、2021年5月時点でユーザー数は4000人を超え、約1500件の経験談が集まっている。都築氏は「社会人向けOB訪問サービスは、おそらく今まで1000人以上が思いついてきたようなサービスだと思う。だが、成功する企業は少なく参入してはクローズすることが多かった。」と語る。そのような成功確度が低い領域で、同社はいかにしてユーザーを獲得できたのか、都築氏はこう語る。
都築なぜ多くのサービスがグロースでつまずくのかを調べたところ、「見知らぬ他人のキャリアの知見にコストを割く不安」「ニーズが超ロングテール」「学生のように物理的に集まる場や機会がなく、マーケティングコストがかかる」の3つの要因が浮かび上がってきました。
そこで私たちは、キャリア経験談を登録して、誰に、どのような話が聞けるのかを可視化。価格も0円または500円に下げ、利用ハードルを低くしました。
多様なニーズに応えられるよう、初期は友人などから300件の経験談を気合いで集めました。マーケティングコストについては、SNSでシェアしたくなる導線を設計をし、集客につなげています。
2021年3月にDEEPCORE、そして個人投資家でありラブグラフCOOの本間達也氏から3000万円の資金調達を行った。今後は「8割以上が転職の意向を示している」というCREEDOのユーザーに対し、採用支援サービスも展開していきたいという。
「私自身、CREEDOユーザーの一人です。自分の経験談をお話していますので、1on1でお話したい方は、ぜひCREEDOにご登録して申し込ください」と語り、ピッチを締めくくった。
記念すべき第44回目となったこの日は、ARcloudオーサリングツールや、社会人向けOB訪問などが登壇した。
今後も毎週木曜朝7時の「FastGrow Pitch」では、注目スタートアップが登壇し、自ら事業や組織について語る機会をお届けしていく。ぜひチェックしてほしい。
こちらの記事は2021年06月04日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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執筆
大畑 朋子
1999年、神奈川県出身。2020年11月よりinquireに所属し、編集アシスタント業務を担当。株式会社INFINITY AGENTSにて、SNSマーケティングを行う。関心はビジネス、キャリアなど。
inquire所属の編集者・ライター。関心領域はメディアビジネスとジャーナリズム。ソフトウェアの翻訳アルバイトを経て、テクノロジーやソーシャルビジネスに関するメディアに携わる。教育系ベンチャーでオウンドメディア施策を担当した後、独立。趣味はTBSラジオとハロプロ
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