「コロナ収束後も採用はフルリモート?」
注目ベンチャーCxOが6人集結したFast Movers Online初開催!Withコロナを勝ち抜く戦略とは
コロナショックでも事業は好調?採用増やす?どういうこと?
そんな疑問を解くため、注目ベンチャー6社からCxOを招いて開催したFast Movers Online。オンライン生配信で、視聴者は100人を超え、若手ビジネスパーソンの強い関心が明らかになった。そしてチャットで届いたのは「事業はいいから採用の現状を教えてほしい」といった声だった。
一方の登壇企業側はどうか。「多くの企業が不調を抱えている今こそ、あえて事業のアクセルを踏み、採用を拡大させる」。そうした戦略でこの経済ショックを乗り切るとの意気込みが垣間見えた。
お届けするイベントレポートでは、後半のCxOパネルトークでの話題を中心に、社ごとの“ぶっちゃけ話”をまとめた。「正直、焦りはある」「オフィスは要らない」「1か月で退社した社員が出た」など……。
FastGrowでは、6月にも第2回の開催を予定している。ぜひこれを読み、改めて興味を抱き、参加を検討してほしい。
「社内はスムーズ、事業は焦りが本音」ABEJA菊池氏
AIやディープラーニングといった最先端技術を活用しさまざまな産業領域にソリューションを提供しているABEJA。取締役CPOを務める菊池佑太氏が登壇した。コロナ禍でどう対応していくのか、冷静かつ大胆な経営の姿勢を披露してくれた。
菊池もともとITエンジニアは、いかにリモートで生産性高い勤務をするか、考える文化がありました。これを全社に広げるため、コロナショックが広がる前から、全社員をフルリモート勤務にすることでどんな影響が出るのか、何度もトライアルをしていました。なので、新型コロナウイルスの流行拡大を受けた出社停止が始まっても、全社でのリモートワークへの切り替えは問題なく進みました。
ちなみに弊社では最近、毎日オンラインで飲み会をして、コミュニケーションやつながりが薄れないように心がけています。
一方で事業をみると、焦りと課題を抱えているのも事実だとぶっちゃけてくれた。
菊池新型コロナウイルスに伴う事業への影響は少なからずあり、対応にあたっているというのが実際のところです。しっかりとした対策をとっていくため、経営陣のディスカッションは頻度を高めています。
私たちのSaaSのポートフォリオでは、クライアントが業種や業界で分散しています。なので、リソースは伸びているところに張ろう、という細かなピボットを繰り返す打ち手を続けています。
小売業のお客様が多くいてくださる点は意識していきたいですね。私たちの事業もafterコロナに向けて変わっていかなければなりません。「店舗」のあり方が変わる大きな機会です。
真の課題は何かを見つめ直すべき時だと捉え、お客様へのヒアリングを進めて新しい領域開拓を検討しています。
「評価法は見直すべき、会話のハブになれ」エキサイト齋藤氏
ニュースサイトや翻訳・占いなど多岐にわたって24ものサービスをコーポレートサイトで紹介する多様さを誇るエキサイト。D2C・HR・Podcast・SaaSでの新規事業創出も進めている。登壇した執行役員人事統括責任者の齋藤匠氏は、準備の早さがコロナ禍でも活きたというエピソードを紹介してくれた。
齋藤オリンピックが過ぎたら景気は悪くなるかもしれないし、開催中は都心が混雑して移動が制限されるかもしれない、という話を昨年から始め、今年はリモート勤務の導入や、景気が悪化したときを前提とした準備を段階的に行っていこう、と決めていました。
リモート勤務を少しずつ始めるはずだったのが、いきなり全社で始めることになってしまったことになります。とはいえ、準備はしてきたので、前倒しになったというだけです。
悪影響はなかったというのが実際のところ。強いて言うなら、中国からPCが届かなかったので、新入社員への支給が遅れるかもとバタバタしました、結局は間に合ったんですけどね(笑)。
勤務がオンライン中心になると、評価が難しいのではないか、どう変わるのか。そんな課題に対しても、ヒントを与えてくれた。
齋藤評価の仕方は見直しが必要です。業務の成果に加えて、貢献度合いを見ていきたい。チャットアプリがどう活用されているかがおもしろいと思っています。
会話を多くしている人が目立って見えるようになっていますよね。まずはその人を評価しようと考えるのですが、さらに深掘りして「ハブになってそういう会話を生み出しているのは誰なのか」も気になっています。
チャットでの関係性を可視化できるサービスもあるので検証中です。すでにいろいろ試行錯誤しながらやっています。
「事業上はむしろアクセル踏む。採用はオンライン完結を続ける」クックパッド則俊氏
料理レシピサービスとして今や知らない人はいない『クックパッド』。運営会社のクックパッド買物事業部でHRグロースマネージャーを務める則俊慶太氏が登壇した。急成長に向けた高い目標を掲げ、採用を加速させているという新規事業『クックパッドマート』の実情が語られた。
則俊2月中旬から全社でフルリモートとなりました。それでも「事業スピードは落とさない」「目標は下方修正しない」という方針でいます。むしろ「アクセルを踏もう」と言っています。だからこそ、目標を達成するためには何ができるのかを常に考え続けています。
『クックパッドマート』は、こだわりの食材を生産者から直接、しかも一品から送料無料で購入できるアプリ。「生鮮食品ネットスーパー」などとよばれるサービスだ。
駅や小売店に冷蔵庫型の受け取り場所「マートステーション」を設置しており、利用者は自宅近くの「マートステーション」を受け取り場所に指定して注文ができる。
則俊これまでは会社帰りの方にも便利にご利用いただくため、駅近くで設置を増やす施策に注力していました。
しかし外出自粛の影響を鑑みて、今すべきことは何かを考え直し、総戸数100戸以上の全てのマンションへ「マートステーション」を無償で導入することを決めました。
マーケ施策としても、YouTubeでマンション関係者向けのオンライン説明会をライブ配信するといった工夫をスピーディーにしてきました。
また、オンラインでの採用活動について現状と今後についても触れた。
則俊在宅勤務に伴い、採用フローを全てオンラインへ移行しましたが、採用を前に進めていく観点では大きな課題はない気がしています。
むしろ候補者の方にとっては、移動が不要になることで選考にかかるリードタイムが短縮され、よりスピード感のある採用活動ができています。今後もオンラインでの採用活動は続けていきます。
一方でオンボーディングのように「理解度や進捗を細かく確認する必要性の高い業務」は、より工夫が必要だと感じています。
最近も頼もしい即戦力が入社して活躍してくれていますが、事業をさらに加速するためには、4月から全てオンラインで行っているオンボーディングの質を上げ続けていくことが重要です。課題は少なくないですが、メンバー全員で考え、乗り越えていこうと思っています。
「1フロアは即解約。ロックダウンなら即新規事業」DROBE山敷氏
プロが個別に選んだ衣服のセットが自宅に届くというパーソナルスタイリングサービス『DROBE』を展開するDROBEの代表取締役社長・CEO、山敷守氏。事業現場で手綱を握るスタイリストのメンバーがもともとフルリモート勤務だったことが、奏功した面もあり、新たな課題を浮き彫りにした面もあると語ってくれた。
山敷スタイリストはみなリモート勤務で、北海道や福岡など遠隔地に住んでいます。もともとオンラインで業務を進めるノウハウはあったため、導入に苦労はしませんでした。2月半ばにはすでにフルリモートにしていました。
ただ、これまでリモート勤務のメンバーと出社するメンバーがいたことで、メンバー間で情報格差が存在していたことに気づかされました。これを機に、業務全体を完全にデジタル化していこうと思っています。
また、対応のスピード感が非常に印象的なエピソードも披露した。
山敷4月下旬には、2フロアあるうちの1フロアを解約しました。もう完全に要らなくなったとスピーディーに判断しました。
一方で焦りもあったのは事実です。というのも、欧米でのロックダウンについて聞いていると、どうも必需品以外の物流が止まる例があると。そうなってしまうと、ファッション事業者である私たちには大きな打撃です。
ではどう備えるかを考え、すぐに新しいサービス形態の議論を始めていました。短期的には儲からなくてもいいので、お客様にサービスを提供し続けるのが大事だと判断していました。杞憂に終わったのが何よりでしたが。
「採用はチャンス。さもなくばスタートアップは死ぬ」Progate宮林氏
プログラミングのオンライン学習サービス『Progate』を展開するProgateからは、COO宮林卓也氏が登壇。インドとインドネシアに子会社があることから、アジア地域への出張は多いという。彼らは日本とアジアの温度差を痛烈に感じ、早い段階から対策を講じる準備を始めていたという。
宮林中国の様子は昨年からずっと注視していたため、1月の経営会議ではすでに早め早めの対策を話し合い、「都内で1人でも感染者が出たらリモート勤務に切り替えよう」と決めていました。
そんな中で2月頭にインドに行くと、入国時に2時間も審査されたんです。それだけ警戒度合いが高かった。「日本はまだ温度感が低いけど、世界的に問題になっていくぞ」と危機感を覚えました。
早めに決めた方針に確信を持つようになり、実際にその後の感染発覚で、すぐ全社員リモート推奨に切り替えました。そこから制度を整え、緊急事態宣言が出る前には原則リモートにしました。
「焦りはなく対応できた」と振り返るものの、事業上の危機感は残っているという。
宮林いつ収束に向かうのかわからないので、事業を進める上で海外を攻められないのは痛い。この事実を強く感じています。ここからが勝負です。
採用は完全に強化しています。他社が様子を見ているときだからこそ攻める。リスクを取らないと、スタートアップは死んでしまいます。こういうチャンスにリソースを張れない会社は伸びないと考え、強気にやっています。
「利用は5倍に!今期200人超を採用へ!」ベルフェイス西山氏
「ヒラメ筋」のCMで有名なオンライン営業ツール『bellFace』を提供するベルフェイス。まさにコロナ禍を追い風にサービスを伸ばしている代表的な企業といえる。なんとこの2月から4月にかけて、Googleでの「ベルフェイス」検索数は4倍、サービスを利用しての商談数は5倍と急増しているという。
採用についても今期中の目標を「フルコミット200名以上」と設定した。現在約100人の社員数を考えれば、誰が見ても強気だと思うだろう。そんな勢いのあるベルフェイスから、取締役の西山直樹氏が登壇した。
話題になったのが、このサービスの無償提供だ。その背景について語ってくれた。
西山3月初めに社長と2人で話をして決めました。スピードが大事だと考え、その4日後には世の中に発信しました。その間は、大げさにいえば不眠不休くらいに追い込んで準備しましたね。
無料と紹介するページを作る、申し込みからID付与までのオペレーションを組む、導入後のオリエンのカリキュラムを作る、などゼロからの作業がたくさんあり、大変でした。
また、withコロナ対応として注目される業務のオンライン化についても、自社の強みを存分に活かしたこれまでの施策が活きていると紹介した。
西山以前からオンラインでの業務は強く意識していました。採用面で言えば、自分たちのサービス『bellFace』でオンライン面接をしていましたし、内定まですべてオンラインで完結させていました。この点、変わったことはあまり無く、採用への悪影響は特にありません。
オフラインの営業がしにくくなっていることが、僕らにとって追い風であるのは明らかです。なのでこれを機に採用を一気に進め、事業成長を加速させようとの趣旨で「200人超をフルコミット採用!」との目標を掲げています。
応募の数自体も増えているので、いい人に出会える確率は上がっている実感があります。面接官もそう言っています。そういえば、苦しい状況にある企業から「一定期間、出向で社員を預かってくれないか」との相談ももらいましたね。
「ぶっちゃけ」で読者と企業をつなぐFastGrow
FastGrowがこのイベントを開催したのは、「コロナショックにあっても本気で挑戦を続ける企業を応援したい」という気持ちからだ。そして、企業を応援する上で私たちが最も貢献できることは、FastGrow読者の優秀なビジネスパーソンと企業をつなぐことだろうと考えた。
このイベントでの出会いは、実際に採用の動きにつながっている。今後もこうした機会を定期的に作る。そうすることでスローガングループが目指す「新産業を創出し続ける」というミッションの達成に向け、行動し続ける。
今回は注目すべき厳選ベンチャー企業でCxOを務める6名が、お忙しい中で集まってくれた。このように豪華なメンバーが集結しやすいのは、イベントをオンラインで行うことの大きなメリットだと感じている。
6名それぞれが「ぶっちゃけ」という期待に応えてくれた。記事ではカットしたが、コロナ禍による事業戦略の変更から、3月1日に入社した社員が同月末に退社するという事態を招いてしまったとの紹介もあった。ここに改めて感謝を述べる。
ファシリテーターを務めたFastGrow事業責任者・西川ジョニー雄介は、次のような感想を残した。
西川6名のみなさまからは非常に熱気のこもった言葉を多くいただけました。オンライン生配信にはさまざまな難しさがありますが、関係なくぶっちゃけを披露したみなさま。さすが注目ベンチャーのCxOだなと感じました。
引き続き同様のイベントを企画していき、厳選ベンチャーの魅力発信と、優秀なビジネスパーソンとの出会い創出をお手伝いしていく所存です。また近い内に開催できるのを楽しみにしています!
次回は6月下旬の開催を予定。乞うご期待!
こちらの記事は2020年06月11日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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